「優しさの連鎖」アイミタガイ かなさんの映画レビュー(感想・評価)
優しさの連鎖
梓の親友、叶海が外国で自動車事故に遭い命を落とす。叶海は、孤独だった中学生時代の梓にとって大きな存在であり、梓にとって心の支えだった。叶海の死を受け入れられない梓は、彼女のスマートフォンにメッセージを送り続ける。
物語は叶海を中心とした優しさの連鎖を描く。「アイミタガイ」とは「相身互い」と書き、「お互いに思いやりを持って助け合う」という意味を持つ。優しさの連鎖は奇跡的であるが、言葉だけでなく、悲しみや痛み、絶望が役者の肉体、特に表情を通して描かれ、観る者の心を揺さぶる。
叶海は死しても魂が生き続ける存在で、生前の行いが多くの人を救っていく。施設から届いた叶海宛のカードに対する母親の反応は、最初はいたずらだと怒っていたが、実際には叶海が生前に行っていた善行が判明する。両親の想いは、優しい娘への愛情と、亡くした悲しみに襲われる様子が、田口トモロヲと西田尚美の表情の演技によって観る者に深い感動を与える。
結婚に対する願望がない梓と彼氏の小山との関係も、黒木華と中村蒼の表情の演技でていねいに描かれる。特に小山のタイミングの悪さや頼りなさが、彼を受け入れられない梓の表情にじみ出ている。二人が梓の祖母の家を訪れた時、梓の表情に変化が起こる。黒木華が小山の頼もしさに触れたとき、中村蒼の少し自慢気な表情と黒木華の笑顔が印象的なシーンとなっている。
梓と叶海の両親が駅で会話を交わす場面は、まさに優しさの連鎖に満ちており、この三人がつながっていく様子が、叶海の存在によって結ばれていく姿として描かれている。黒木華、西田尚美、田口トモロヲの繊細な表情によって、言葉を超えた深いつながりが描かれる。まさに「アイミタガイ」の象徴的なシーンである。
梓と小山の関係が決定的に動く要因は、叶海の母による後押しだった。無駄が一切なく、余計な説明もない見事な脚本。加えて自然で感情豊かな役者達の表情の演技は、死しても魂は残ることを信じ、生きる意味を感じさせてくれる。この作品は、観る者に温かい感動を与えてくれる。