「袖振り合うも他生の縁。その言葉の通り、人との何気ない出会いがまた別の人生に関わっていく姿を重ねて紡ぎ出したお話。愛しさと優しさと切なさに溢れた人間ドラマの秀作です。」アイミタガイ もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
袖振り合うも他生の縁。その言葉の通り、人との何気ない出会いがまた別の人生に関わっていく姿を重ねて紡ぎ出したお話。愛しさと優しさと切なさに溢れた人間ドラマの秀作です。
最初はノーマークの作品でした。最近多いパターン ・_・;
ポスターの絵から、サスペンス風ドラマかと勘違い。?_?
主演は黒木華さん。NHK大河「光る君へ」に出演中。
平安貴族(道長)の正室役がかなり嵌まってます。ふむ
と、そんなこんなで鑑賞することに。
サスペンス風ドラマなどでは無く、主人公の女性を中心に、繊細な
人間関係を丁寧に描いたハートフル人間ドラマでした。 ・-・ハイ
◇
親友・郷田叶海を事故で亡くした主人公・秋村梓(黒木華)。
彼女の突然の死に、正面から向き合えないでいる。
親友が生きている態で、変わらずメッセージを送り続けている。
返事が帰ってくることは無い。分かっていても送信してしまう。
その日あったこと。
彼とのこと。
仕事のこと。
親友の叶海は、ただ一人心を許すことのできる相手。
そんな彼女がもう居ない。どうしたら受け止められるのか…。
スマホに向かって、変わらずメッセージを送る主人公。
既読になることは無い。
分かっていてもまた、送信してしまう…。
そんな主人公の周りに登場する、色々な人びと。
そして、色々な形での出会い。
その出会った人がきっかけでの、また別の人との出会い。
#梓の彼氏。会社員。若干優柔不断?結婚願望ない ワケない。
#梓の祖母。離婚した父方(…多分)の祖母。梓の故郷。
#叶海の父。会社員。毎日決まった時間に行動していた。
#叶海の母。専業主婦。亡くした叶海のスマホを処分出来ずにいる。
#梓の叔母。介護ヘルパー。余計なお世話焼き。
#老婦人。叔母のケア相手。ピアノ歴80年。…あれ?90年?
#宝石店の主人。孫から預かった宝物を店内に飾っている。
#児童養護施設の所長。叶海が生前より親交のあった施設。
#タクシーの運転手。車屋という珍しい名字のひと。
梓を中心とした出会いもあれば、梓の知らない所での
梓以外の人と人との出会いもあります。
その関わり合いが、とても繊細な人間模様を描いていきます。
とにかく、伏線の貼り方が上手いです。というか
伏線に見えない、さり気ない伏線の映像があちこちにあって
観ていく内に「あ、あれはそうだったのか」と
自然に気が付くように出来ているのがとても素晴らしかった。
映像綺麗です 目の保養になります
音楽良いです 心に染み通ります
お話も良いです 癒されました
梓はもちろん、梓の彼氏も叶海の両親も。
その他の沢山の人たち。全ての人が幸せになって欲しい。
そんな風に思えるとても素晴らしいストーリーでした。
とても見応えのある良い作品。
満足です。・_・☆
◇あれこれ
■「アイミタガイ」「相見互い」
そんなに馴染みのない言葉なのだろうか と、少々の戸惑い。
困ったときにはお互いさま。
困ってなくてもお互いさま。
持ちつ持たれつやっていきましょうよ と言う関係性。
” 皆、自分の知らないところで誰かの世話になっているのよ ”
梓の祖母のセリフに、何度も頷きました。
■一番印象に残った展開
(割と前半)
電車で居眠りし、降り損ないそうな叶海の父
悩んだ挙げ句、頭上に本を落として起こす彼氏
降り過ごさずに済んだ父。外から彼氏に手で感謝
ホームに叶海の姿。「ほら。私の勝ち」と満足げ。
父とツーショットの写真を撮影し梓にメール。
(割と後半)
叶海の家の最寄り駅に来た梓。
ホームに写真で見覚えの有る男性の姿。
「叶海のお父様ですか?」
なぜ分かったかと問われ写真を魅せる
「あの時の写真か」と懐かしむ父
「誰かがワザと本を落として起こしてくれた」
それで、いつもの時間に降りられた と
" あの時の青年には感謝しています。彼が起こして
くれたおかげで、最後に叶海に会えたんですから"
この一言は響いてきました。あぁ そうだったのか。
この場面の後、梓を自宅に招待していた叶海のご両親。
彼氏も一緒に連れてきて と招待しましたが、そこでも
そのときにもまたドラマがありそうですね・_・
「あっ」「君は本で起こしてくれた…」
■遠き山に日は落ちて
小学校の「下校時間を知らせる」音楽でした。・-・
とこかもの悲しさというか寂寥感を感じさせる気がします。
この作中では草笛光子さん演じる老婦人が
梓に依頼されてブライダル会場でピアノ演奏をします。
” 戦時中は、遠き山に日は落ちてという曲では無かったのよ ”
” 当時は「Goin' Home」「家路」という曲だったの ”
特攻隊に出撃する兵隊をピアノ演奏で送り出した過去。
家に帰ろう さあ 家に帰ろう
切ない想いで弾いていた曲。
20年前、家の近くで梓と叶海が聴いていたという事実。
「私は、この曲に救われたんです」
梓の一言に、今度は老婦人の心が救われる。
これも心に響いた巡り合わせ。・_・
◇最後に
何ということのない日常のひとコマが
知らぬ内に他の誰かにとって何かのきっかけに
なっていたりする。
袖振り合うも他生の縁 と言います。
ご縁を感じた事は、大事にしていきたいです。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
共感ありがとうございます。
同じ様な作品が直ぐ作れるかと聞かれるとどうか?と思いますが、あり得ねー!とも言い切れない加減が難しそうですね。
個人的には一斉に既読が付いて驚く下り、これは心動きますよねー。