アイミタガイ

劇場公開日:2024年11月1日

アイミタガイ

解説・あらすじ

作家・中條ていの連作短編集「アイミタガイ」を黒木華主演で映画化し、親友を失った女性を中心に思いがけない出会いが連鎖していく様子を描いた群像劇。

ウェディングプランナーとして働く梓は、親友・叶海が亡くなったことを知る。恋人・澄人との結婚に踏み出せずにいる梓は、生前の叶海と交わしていたトーク画面に変わらずメッセージを送り続ける。同じ頃、叶海の両親である朋子と優作のもとに、とある児童養護施設から娘宛のカードが届く。そして遺品のスマホには、溜まっていたメッセージの存在を知らせる新たな通知が入る。一方、金婚式を担当することになった梓は、叔母の紹介でピアノ演奏を依頼しに行ったこみちの家で、中学時代の叶海との記憶をよみがえらせる。

梓の恋人・澄人を中村蒼、亡き親友・叶海を藤間爽子が演じ、草笛光子、田口トモロヲ、西田尚美が共演。「台風家族」の市井昌秀が脚本の骨組みをつくり、2020年に他界した佐々部清監督が温めていた企画をもとに、「彼女が好きなものは」の草野翔吾監督がメガホンをとった。

2024年製作/105分/G/日本
配給:ショウゲート
劇場公開日:2024年11月1日

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(C)2024「アイミタガイ」製作委員会

映画レビュー

4.0 死者と背中

2024年11月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 予告やチラシから「これは、絶対いい話に違いない!」と思うと同時に、強引に感動させられるのはイヤだな…という警戒心も。けれども、いざ蓋を開けてみたら、なんとも塩梅よい。ちょうど良い加減で、観る人の背中を押してくれる良作だった。
 まず、おお!と思ったのは、大好きな俳優さんたち(名バイプレイヤーと呼ばれる人たち)が次々に登場すること。「あの俳優さん出てくると、(悪人が善人か)どっちかなーってハラハラするけれど、今回は大丈夫だったね」と、同伴者とほくほく振り返ることができた。もし、「いつもヤな役ばっかりやってるよな」と思う俳優さんがいるならば、ぜひ本作で新たな面を見つけてほしい。個人的にいちばん嬉しかったのは、「Cloud」でぶっ飛んでた吉岡睦雄さん演じる車谷さん。ちなみに同伴者は、「ラストマイル」で翻弄されまくっていた安藤玉恵さん!とのことだった。
 友人の・家族の死を受け入れ、新たな一歩を踏み出すまでに、様々な人の「ちょっとした」言動が絡み合い、大きなうねりとなっていく本作。急逝された佐々部清監督さんが脚本に名を連ねていることからも、本作は死にまつわる物語といえる。佐々部さんの思いが若手に受け継がれ、みずみずしい物語が生まれた。死はつめたく悲しいだけのものではなく、あたたかく広がり、人と人を繋げていくものであると素直に思えた。それから、これまで地名しか知らなかった桑名の町並みも魅力的で、佐々部監督の「六月燈の三姉妹」が思い出された。古びた家が連なり、川が流れ、あちらとこちらを繋ぐ橋がある。初めてなのに、懐かしい感じがして、物語とよく馴染んでいた。
 なんてことないやり取り、思い付きの行動が、ちいさな偶然と結びつき、誰かの人生の背中を押すかもしれない。そう思うと、ちょっと背筋が伸びる。本作は、そんな「背中」にまつわる物語でもあった。
 あれこれシーンを思い返すほどに、自然に顔がほころぶ。そのまま少し顔を上げ、背中をピンと伸ばして歩きたくなる。時には誰かと手をつなぎ、時には一人でスキップなんかして。

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cma

4.0 「情けは人の為ならず」と「ペイ・フォワード 可能の王国」

2024年11月12日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

幸せ

「相見互い」の語義は広辞苑によると「同じ境遇や身分の者は互いに同情し合い助け合うべきであるということ」だそう。映画の原作である中條ていによる同名の連作短編集は未読ながら、映画「アイミタガイ」の趣旨は本来の語義通りではなく、むしろ「情けは人の為ならず」に近いと感じた。他人へのちょっとした親切、手助け、心遣いとったものが、めぐりめぐっていつか自分に還ってくる。これに近い趣旨でハリウッド映画でも「ペイ・フォワード 可能の王国」(2000年)があったが、あちらは子供が始めた小さな善行が大きな社会運動になっていくといういかにもアメリカらしい派手な感動ストーリーだった。

一方こちらの邦画は、ごくごくささやかな他者への思いやりだとか、ちょっとした勇気で人を助けたことが、わずかではあるが関わった人々の心を温かくする、コミュニティーを良い雰囲気にするといった、いかにも日本的な情緒を感じさせるエピソードに、大切な人をなくした喪失感とそこからの再生をからめた切なくも愛らしい珠玉作になっている。派手さはないもののよく練られたシナリオだと思ったら、市井昌秀監督(「箱入り息子の恋」「台風家族」)が脚本の骨組みをつくり、佐々部清監督(「チルソクの夏」「半落ち」)が企画を温めていたが2020年に他界、最終的に監督を務めることになった草野翔吾が脚本にも名を連ねている。この映画の製作自体にも多くの人々の思いがバトンのように託されて実現に至ったバックストーリーがあるようで感慨深い。

相見互いであれ、情けは人の為ならずであれ、昔から受け継がれてきた美しい心のありようが、この映画を通してまた多くの人に広がっていくと素敵だなと思う。

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高森郁哉

3.0 叶海を基軸とする人間関係の温かさ、柔らかさ。

2025年9月12日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
「その若者のお陰で、最後に叶海に会うことができたんです。」

本作での、すべての人間関係の「基軸」は叶海だったのだろうとも思いました。

まずは、叶海と梓との関係性。
そして、範子を介しての梓とこみちの関係性。
さらに、叶海のLINEを通じての梓と優作・朋子の夫婦(叶海の両親)との関係性。
加えて、叶海と児童養護施設施設の人たちとの関係性。
あとは、最後の最後に、澄人と優作との関係性―。

言ってみれば、叶海の人間性から滲(にし)み出て来るかのような、それらの関係性の温かさ、柔らかさ―。

そんなことに思いを致すと、やっぱり、本作の最も象徴な台詞は、上掲の映画のことば以外には、ちょっと考えられないと、評論子は思いました。

いずれにしても、佳作の評価が惜しくない一本だったとも、評価子は思います。

(追記)
多くのレビュアーが言及しているとおり、本作の最後の方で表現される、朋子(叶海の母親)が梓に送った「行っちゃえ」のLINEメッセージは、案外と本作では「意味深」のワードではないかと、評論子は思います。

表向きは朋子が梓に澄人との結婚を後押しするセリフなのですけれども。

他方では、叶海を亡くして前に進めなかった朋子自身へのエールになっていたことも、また間違いのないことと思います。

そして、このセリフに背中を押されて、澄人に強引に手を引かれている時の梓の表情―、評論子には、忘れられません。

本作の「アイミタガイ=相身互い」は、そんなところにも、ひょこっと顔を出していたのかと思うと、感慨深いものが、評論子にはありました。

(追記)
本作のモチーフとなっているのは、言うまでもなく「相見互い」という慣用句で、同じ悪い境遇や身分の人が、互いに同情し合い、また助け合うことを意味するものですけれども。

しかし、評論子的には「籠(かご)に乗のる人、担(かつ)ぐ人、そのまた草鞋(わらじ)を作つくる人」という言い方の方が、本作の内容には、より良くフィットするのではないかと思いました。

つまり、世の中は、さまざまな立場の人々…それ故に、さまざまな思惑の人々によって成り立っており、同じ人間でありながらその境遇に差のあることのたとえ、ということです。

しかし、レビュアーの皆さんのレビューを読ませていだたいているうち、もっともっと本作にはフィットする言い回しを見つけることができました。

自らのレビューを一応は書き上げてからでも、何かしら言い足りないようなモヤモヤとしたイメージを払拭できなかったのですけれども。

そのモヤモヤを一気呵成に解消するような、適切な言い回しを、ズバリと見つけることができました。
(これも、多くのレビュアーのレビューを読むことのできる当サイトのメリット!)
それは「持ちつ、持たれつ」という言い回しです。
的確なレビューで、そのことに思いを至らせていただいたレビュアー・活動写真愛好家さんに感謝し、末尾ながらハンドルネームを記させていただき、お礼に代えたいと思います。

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共感した! 17件)
talkie

4.0 優しい世界

2025年8月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

癒される

良き人たちのあたたかいお話
こんな世界を信じてみたくなる

コメントする (0件)
共感した! 4件)
れん