「歌をめぐる記憶」カンツォーネ talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
歌をめぐる記憶
たった12分の映画だけれど、イタリア人の歌をめぐる思い出、現代批判、ノスタルジーの語りと映像がよかった。映像はモノクロ、映るのは昔のイタリアのたくさんの人達。農家で働いていたり、踊っていたり。音はどのような仕組みで聞こえるのかを映像と説明で示す真面目シーンは理科の教育番組みたいで思わず笑ってしまう。
印象的だったのは、小さい子の言葉。「歌は沢山で歌うと声も大きくなって百人いるみたいで楽しい。覚えてるのはママのお腹に頭をのっけて、ママの歌を聞いているとき」
とても小さな子で声も話し方も子どもなのに、記憶や楽しみについて語れるのが可愛くてすごいなあと思った。台本があるのかなあ、それとも自由なインタビューなんだろうか?
もう一つ印象的だったのは、戦争と歌の関わり。第二次世界大戦がきっかけで歌に猛烈に関心を持つようになった男性とか、戦争関連の歌を父親がよく歌っていてその歌詞を楽しそうに懐かしそうに諳んじる女性。彼女は歌わなかったが、完璧に歌詞を覚えている。
そんなたくさんの人達の言葉は声だけが聞こえる。どんな風な人が話しているのかは映らない。でも映っているたくさんの人の顔は皆明るい。
今の人は歌や音楽を聞くだけ、BGMとしての音楽でしかなく、自分で歌わなくなっていると言ってる女性の声があった。確かにそうかもしれない。彼らがいう歌はカラオケやコーラスとは違う。室内で或いは特に戸外で、とにかく沢山の人と笑いながら自由に歌うことなのだと思う。中央に指揮者がいて皆が同じような格好して同じような表情で歌うコーラスでも合唱でもなくて、自由に勝手に楽しく笑いながら歌う。歌ってそういうものなんだと思う!そして勝手に自由に踊るんだ!