「人間としての尊厳を果たす」ぼくの家族と祖国の戦争 アベちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
人間としての尊厳を果たす
戦争では必ず多くの罪なき人々の命が奪われ、その憎しみの連鎖が果てしなく続いていくものである。とりわけナチスドイツは侵略した国も多く、迫害した人種とその数も膨大であり、憎しみの度合いも桁外れだったのだと思う。
デンマークは4年以上も占領下にあり、ドイツが敗戦する終戦前後であれば、憎しみはピークに達してるなかであり、しかもこの映画の舞台となったフュン島はナチスに抵抗するレジスタンスの拠点でもあり、ドイツ人難民を救うことなどあってはならないことだった。
そのような中、最初は妻のリスが赤ちゃんにミルクを与えたり、少女に食事を施したりするが、夫ヤコブは激怒。だがジフテリアの蔓延もありヤコブは薬を医師宅から盗んで難民に渡す。それが許されない行為と知ってるセアンは兄のように慕うビルクにチクる。そうなると家族全員が非国民扱いになる。それでも正しいことと信じるヤコブは学校を閉鎖してでも難民に住みかを提供する。戦争が終わって無政府状態になりレジスタンスはナチスに加担した人々を虐げ、ビルクは難民の唯一の医師であるハインリヒを射殺する。もう何が正しいのかがわからなくなったセアンは自分を助けてくれた少女ギセラがジフテリアで死にそうになってることを知り、とにかく助けたくて連れ出す。父に見つかるも一緒に病院に行き、治療を受け命を救うことができた。
どのような国の人々も「困ってる人がいれば助けなさい」が当たり前の教えであった筈である。
その当たり前のことが出来なくなるのが戦争なのです。
結局、ヤコブの家族は仕事も失い街から追い出されます。でもラストシーンで街をでる家族は誇らしい顔をしています。人間としての尊厳を果たすことが出来たからです。
私の中の名作が1本加わりました。よい作品です。