「天才・中原中也を捨てた女。」ゆきてかへらぬ 孔明さんの映画レビュー(感想・評価)
天才・中原中也を捨てた女。
大正時代の京都と東京を舞台に、実在した女優・長谷川泰子と詩人・中原中也、文芸評論家・小林秀雄という男女3人の愛と青春を描いたドラマ。
端役の女優をしていた長谷川泰子が出会ったのが年下の学生詩人・中原中也。
後の世では「天才詩人」とも称される青年と出会い、恋仲になる。
やがて二人は京都から東京へ。
二人で同棲する生活を始めるも、やがて中也の強烈な個性は泰子の精神を蝕んでいく。
そんな中で泰子が知り合ったのが、中也の友人の評論家の小林秀雄。
この女一人を挟んだ男二人との奇妙な関係が幕を開ける。
やがて泰子は中也への腹いせか、もしくは逃避か、家を出て今度は小林と同棲を始める。
しかも、小林の家と中也の家は近所で三人はそれ以降も度々逢瀬を重ねることになる。
不可思議な「三角関係」だったのだ。
泰子は小林と同棲しても心休まらず、却って精神に異常をきたしていく。
小林との蜜月も共倒れを恐れた小林が逃避して終わりを告げた。
しかし、そこで三者の縁が切れたのではなく、その後も連絡は取りあうなどしていた模様。
やがて中也には結婚話が持ち上がる。お相手は実家の紹介らしいが、お嬢様で自分とは全然違う。
後に中也と再会した際に彼は子供が夫人との間に生まれていたが、既に病重篤で余命いくばくも無かった。
小林から中也の死を知らされたのはそれから程ない頃。
葬儀にも参列した。やはり彼には何かしらの想いが残っていたのだろう。
その後の彼女は史実では金持ちと結婚して戦前までは贅沢な暮らしをしたものの、戦後は一転して夫の事業が傾いて、晩年は職を転々として神奈川や東京に住んでいた模様。
亡くなったのは何と平成5年で88歳であった。
職業は本来は「女優」のはずで、残された写真からも美人であることは間違いなかったのだが、主演映画は生涯を通して1本しかない。むしろ「中原中也を捨てた女」として世に名を遺した。
晩年、自ら中也との関係を回想して本も出されている。中也ファンには重要な人物であることは間違いないようである。
