劇場公開日 2025年2月21日

「タバコとマントが恋をした。」ゆきてかへらぬ 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0タバコとマントが恋をした。

2025年3月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

かつて、山口市にある中原中也記念館を訪れた時、中也の泰子にたいする愛に涙した。小林との三角関係をどう受け入れていたのか、中也なりの瘦せ我慢を感じたからだった。同時に、中也と小林の心を弄んだ(が正しいのか?)泰子の実像は、ファムファタルなのかむしろ犠牲者なのか興味を持っていた。
広瀬すずの危うさが泰子とシンクロしてた。岡田将生は安定。中也役の若手木戸大聖、青臭さがよくでていてよかった。
過日の記念館訪問時のメモを探してみた。″彼の言葉を我が身の内に落とし込んでじっくり噛み締めると、とてつもなく胸が苦しくなってくる"と書いていた。そしてさらに"泰子を奪った小林秀雄との、終生変わらぬ関係は、まるでJ・ハリスンとE・クラプトンのようだよ。 悲しみからしか文学が生まれないのだとしたら、不幸ではないか?"とも。中也が後世の我々に残したものは大きいが、中也自身、自分の人生をあれで良しと思えたのか。幸せと思えたのか。

栗太郎