本日公休のレビュー・感想・評価
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理髪店という陽だまりの空間にて
このヒロインは生涯のうち一体どれほどの常連客たちの後ろ姿をじっと見つめてきたことだろう。それぞれの背中や襟足には人生が香る。そこにチョキチョキと心地よくも絶え間ない音が鼓動の如く響く。自身の母親をモデルに描いた本作の監督にとって、この日常がいかに大切な原風景であるかが温もりをもって伝わってくる。まさにその実家の理髪店でロケを敢行したというのも納得。いささか年季の入った店の窓から注ぎ込む穏やかな日差し、色あせた床、さりげない備品の数々は、ノスタルジーという言葉を超えた懐かしさと、自分も常連客になったかのような居心地の良さをもたらしてやまない。全編を通じて何かしら大事件が起きるわけではないが、変わらぬ風景、ずっとそのままでいて欲しい空気感を、丁寧に紡ぎゆくこの語り口が味わい深い。いわゆる「反復とずれ」の描写で、絶え間なく続いてきた日々にふと気づきと変化がもたらされる様子も静かに胸を締め付ける。
昭和ノスタルジーを喚起する理髪店のおばちゃんと家族の情景
今年は台湾映画の当たり年かも(日本公開年ベースではあるが)。5月の日台合作「青春18×2 君へと続く道」、6月の「オールド・フォックス 11歳の選択」、7月の「流麻溝十五号」、そしてこの「本日公休」。タイプや時代背景は異なれどそれぞれに魅力があり、台湾の歴史や昨今の社会事情、人々の価値観や人柄などを映画を通じてうかがい知れるのもいい。
本作で初めて知ったフー・ティエンユー監督は、1973年9月13日台中生まれ。母親が理容師で、主人公アールイのモデルになったほか、撮影に使ったのも実家の理髪店だという。2015年製作のオムニバス映画「恋する都市 5つの物語」では第4話「日本・小樽編」の監督・脚本を務めたそうで、こちらもいつか観てみたい。
何よりもまずアールイのキャラクターがいい。女手ひとつで育てた娘2人と息子1人はすでに家を出て、店舗の奥の住居でひとり暮らしながら理髪店を営んでいる。常連の名前と髪型の好みはもちろん、接客時の会話から相手の家族の事情まで把握していて、しばらく来店していない客には電話をかけて家族の話題をとっかかりにしつつ、家族の行事の前に散髪にいらっしゃいと巧みな営業トーク。頭の形を見ると似合う髪型がわかる、頭の後ろ側にも“もう1つの顔”がある、といった台詞には、自分の仕事に誇りを持った職人ならでは言葉だなあと思うと同時に、プロからはそんな風に見えるのかと少しどきっとした。
3人の子らはあまり実家に帰らずやや親不孝なのだが、近所で自動車修理店を営む次女の別れた夫チュアンが優しくて善い男で、元義母を何かと気にかけている。チュアンのキャラクターもまたいい味を出していて、互いを思いやるアールイとチュアンの会話に温かい気持ちになったり、切なくなったり。
スマートフォンが使われているので比較的最近の時代設定だけれど、昔ながらの人と人とのつながり、得意客を大切にする心、家族の距離感などそこかしこに、日本の昭和の頃に通じるノスタルジーを感じる。台北などは東京と一緒でもちろん大都会だが、台中の下町あたりではまだ人情味あふれる個人商店などが残っているんだろうなと思わされる。
個人旅行で台中か台南で民泊を利用したが、家主のおばちゃんが本当に人懐っこくて親切だったのが良い思い出。アールイが友達と干潟のような場所ではしゃいでいる数秒のシーンがあるが、あれはおそらく台湾のウユニ塩湖と名高い「高美湿地」だと思う。台中の中心地から半日くらいで他の観光地とあわせて巡るバスツアーがあって、天気の良い夕方に訪れるのがおすすめです。
床屋さんの優しい物語
この春から老人介護施設に入っている我が父。
サラサラの白髪がだいぶん伸びてきたようだ。
60年間、夫の髪を切ってきた妻、つまり僕の母も、父と一緒に老健の夫婦部屋に入居しています。
でも母は脳梗塞をやってしまって、ハサミが持てなくなってしまったんですね。
遠くに住む僕としては考えをめぐらして、旧知に散髪を頼みました。彼は時おり両親の様子を見に行ってくれる友人です。出張の散髪をお願いしたのです。
ハンサムにしてもらってさっぱりした父と、その友人のいいツーショットが送られてきました。
友人は繊細な人で、心を病んでしまったので、理容業を休んでいるところです。
いい床屋談義があったことでしょう。
彼に頼んで良かったと思います。
・ ・
床屋さんの映画といえば「私は貝になりたい」のフランキー堺や、リメイクのSMAPの中居クン。
フランス映画「髪結いの亭主」もそうです。
そして
床屋さんの歌といえば、北原白秋作「慌て床屋」のカニの散髪屋さんが先ず思い出されますが、
ブルースを歌うBEGINの「パーマ屋ゆんた」も涙がにじんでしまう良い歌ですね。
(「ゆんた」とは労働歌のことです)。
髪は生きていることの証でもあり、その人そのものです。
髪を切ってくれる人とお客さんの間には全幅の信頼がある。
刃物を 頭と顔と、そして頸動脈にあてるのですから。
生まれたときからの生い立ちを知っているし、その家族のことも、悩みや希望も、分かっている。
体調の変化や気分の落ち込みも気付いてくれる。
床屋のおじちゃんやおばちゃんは、みーんな承知なのだ。
台湾の映画。
働き者の、自身の母の思い出を監督が脚本・映画化したそうです。
実家でのロケです。
生活に根付き、地に足のついたやり取りが良いんです。
誰もがお世話になっている村の床屋さんを、こんなにも温かく素朴に取り上げてくれている、素晴らしい作品でした。
もちろん僕の髪を、二十歳で家を出るまで切り続けてくれたのは母でした。
髪の毛はその人そのもの。命。
また髪の毛は遺髪にもなりうる。
大切です。
・・・・・・・・・・・・・
【パーマ屋ゆんた】BEGIN 比嘉栄昇
〽サー 明日は内地に行くんでしょ 合格祝いもあげんとね
寮があるなら安心さ 父ちゃんはなんて言ってるの?
♪サー 赤ちゃんだったよ初カットは 今でも指が思い出すさ
母ちゃんがカーラーを巻いてから 待ってる間にチョッキンね
♪なんでー なんでアンタの人生さ きれいになるのは罪じゃない
色を 色を抜いても 重ねても 髪の根っこは染まらんさ
だからパーマ屋があるわけさ
♪サー あの頃 三つ編みだったよね 琉球舞踊は続けてよ
行きの飛行機は空いてても 帰りは混んでるのがふるさと
♪なんでー なんでアンタがヒロインさ 鏡に映して見てごらん
サイド サイドライトも点けるから 彼氏も心配するはずよ
♪なんでー なんでなのかね運命は それでも信じるほうがいい
髪は 髪は切っても揃えても 同じようには伸びないさ
だからパーマ屋があるわけさ
明日は内地に行くんでしょ…
昭和感溢れる人情噺
理髪店を営むお母さんとその子どもたちを中心とする人情噺ですね。
丁寧な仕事がお客さまの信頼を得ることを先代から学び、それを信条としているお母さん。
それから積極的に電話営業もするのですが、これは営業を兼ねた様子うかがいなんですね。
しばらく来ていらっしゃらないお客さまが元気かどうかも併せて確認しているのでしょう。
そういうお母さんだからこそ、お客さまからの信頼は当然厚いわけですが、
子どもたちに対しても愛情が深いんですよね。
娘の彼氏がお母さんの車にてスピード違反で捕まったときの違反切符も
娘に知らせず(知らせようとしたけど思いとどまる)、自分で支払えば娘に余計な心配を
かけなくて済むという。こういう心持ちなんですよね。
途中からお母さんのロードムービーになりますが、
道中に出会ったロン毛のお兄さんにお茶を出してもらったお礼に髪を切ったり、
田舎道を塞いでいた悪ガキたちに助けられたり、
都合も良いと思う一方で、このお母さんの心持ちだからこそ、ちゃんと思いは返ってくる、
そういうメッセージかなと思いました。
ただ、ちょっと間延び感もあるんですよね。
回想が長かったり、なかなか終わらなかったり(笑)
たぶん90分にまとめられるんじゃないかなと思いましたし、
その方がより鑑賞後感はよかったと思います。
それにしても台湾映画は賑やかというかセリフが多いというか
若干やかましい感じですね。
とはいえ、良作だと思います。癒されました。
丁寧に積み重ねた仕事と家族の記憶のかけがえなさを、心打つ映像で描いた一作
主人公のアールイ(ルー・シャオフェン)のモデルはフー・ティエンユー監督の母親、というだけでなく、舞台となる理髪店自体が監督の実家であるなど、映像で綴る家族史、という趣の強い作品です。
「わたしの家族の物語」にこだわった作品作りのため、理髪店の丁寧に設えられているけど年月を感じさせる室内も、アールイの繊細かつ巧みな手さばきも、ごく自然なんだけど現実の時間の積み重ねを強く実感させられる迫真性に満ちています。
十分に事情も知らされずに、理髪店の「本日公休」という札を残して行方が分からなくなった母親を探して慌てふためく子供たちと、愛車でひた走る母親。このちょっとしたロードムービーのドタバタが本作の肝かと思いきや、一連の騒動が一段落するのは作品の3分の2あたり。そこから場面が転換するのですが、むしろここからが本作の見せ場、という作りになっています。
時代に取り残されたようなたたずまいの理髪店に鎮座する、観客すらも見慣れたものとして見過ごしてしまうようなモノやコトが、どのような過程を経てここに至ったのか、その描写はあくまで静かな語りであるにもかかわらず、圧巻です。上映時間100分そこそこなのに、重厚な家族ドラマを観たという満足感が強く、その点からも後半の物語が映像的な意味でも濃密であることがよくわかります。
派手さはなくとも流行の最先端でなくとも、理髪という技術は人と人とが長年かけて積み重ねていくものだ、という力強いメッセージを込めている点で、完成度の高い仕事映画としても楽しむことができました!
小太りのおばさんたちは、第2の春を楽しむ
私の母は、田舎の美容師で。
田舎の美容院は近所の女性の社交場だから、美容師はそれはもう情報通になるわけです。
でもって、噂を広げることもできる。なんか地域の大物きどりだったです、うちの母は。
床屋と美容院の違いはあるけど、地域の人が定期的に足を運んで、美容師・理容師とそれなりの時間を共有するので、自然つながりが濃くなるようです。
なので、40代で引っ越して引退したのに元お得意様が個人的に電話をかけてきて、家でこっそり切ったり、パーマかけたり。私は狭い家にしょっちゅうおばさんたちが来て、長居していくのが嫌で仕方なかった。自分の居場所がないのですよ。
理髪店の店主アールイは、40年理髪店を営んできたと言うから、60代後半だろうか。
ベテランのプロフェッショナルです。
台湾映画にはなぜか、ノスタルジックな昭和の雰囲気がある。窓ガラスに書かれた「家庭理髪」の文字が昔ながらの床屋と思わせる。
床屋のサインポールって中世ヨーロッパ起源の、床屋を表す世界共通のものらしいです。
トリコロールは、静脈、動脈、包帯を表している、という説があるらしい。
よく見かけるのに、なんだか懐かしい感じがする。
店をいきなり「本日公休」にして遠くに引っ越した常連客、歯医者の許先生の出張散髪に古い愛車ででかけるアールイの、道中の出来事がメインの話かと思えばそうでもない。
カクカクの古いボルボに乗って賑やかにはしゃぐ小太りのおばさんたちも、昔は細くて可愛かった。重荷を少しづつ肩から下して、ついでにダイエットの呪縛からも解放されて、友だち集まってのびのびと人生の第二の春を楽しんでいるんです。
寝たきりの許先生にアールイが昔語りをするところ、そして先生の後頭部の黒髪が段々白くなっていくのに、泣きそうになった。
人生は短いな、と思う。いつの間にか老いていき、終わってしまう。
一緒に年を取ってきた人たちに囲まれて、これからも一緒に年を重ねていけるのは、いいなあ。新鮮味はないでしょうが、心強く、穏やかな安心感がある。
理髪店のおばさんの、特に何があるわけでもない日常だけど、観ていて心地よい。
でこぼこの急坂だったり、なだらかでなめらかだったり、いいことも、悪いことも、心配も楽しみも、あるのが人生。
台中の、優しいノスタルジックな風景にも和む。
次女の元夫チュアン、良い人なんだろうが夫にはしたくないです。
夫婦で貯めた、家を買う頭金をぽんと友達に貸して催促なし。
仕事した代金もある時でよい
なんでもかんでも家族より他所の人優先、これだと子供が大けがして病院に運ばれても友達から車の牽引頼まれたらそっちに行っちゃいそう
家族はたまったもんじゃない
そして、「山本頭」って何?
チュアン君お幸せに…
日経映画評とシネマ銀幕の夜で取り上げられてから、近所での公開を待っていたのです
多くの常連客をもつ理容師さんの誠実な仕事ぶりと生きざまに感動でした。自立する子どもたちは淡々としたさまが何気にリアルで、ハラハラさせるコ先生宅への道中と劇中歌がまたいい!
メニューの山本頭って何なんだと思って調べたら、ナルホド!
高鉄で見た風景
今年、5年ぶりに台湾へ行き、桃園から高雄まで新幹線で向かいました。
高層マンションが並ぶ景色が終わると、どこまでも緑が続く田んぼが広がっていました。
東海道新幹線の都市部の合間で見られるような、その景色がとてもキレイで、ずっと見ていると、やがてまた都市の風景が流れてきて、台中へ。
台中って都会のすぐ近くに(新幹線だから速いというもあるだろうけど)、こんな田園風景があるんだ、と思って見ていた景色が映画の中にも広がっていました。
私が訪ねた高雄、台南も街も人も面白く、この映画の舞台の台中のような感じでした。
東京や日本の都市部が全て”イオン化”されて、どこに行っても私はつまらなく感じるのだけれど、映画の中の台中はまだ侵食されていない(ように見えました)。次はぜひ台中に行ってみたいなぁ。
あと、この理髪店は「山本頭」が散髪メニューにあったので、映画の中のお客さんも一人くらい、山本頭で刈ってほしかった。これが、山本頭かぁっていうのが見たかった。
あと、今天ではなくて、本日って書くんだ、本日でも通じるんだというのも学び。
見逃さないで良かったと思える、一度は観て欲しい映画。
作品の冒頭、発進しようとする車が後ろの車両や前方の障害物に何度も接触する。
運転しているのは化粧はさほど濃くないので派手とまではいえないが、髪型は妙にきまっている中年女性。乗ってる車はVOLVO。
彼女はぶつけたことなどお構いなしに走り去って行く(ように見える)。観ている方は「このオバハンは…」という気分に思わず駆られてくる。
映画を見続けると、実はこのオバハ…もとい中年女性こそが作品の主人公で、彼女の人柄も次第に伝わってくる。
そして、もう一度冒頭の場面。
同じシーンなのに、今度は「ああ、気を付けて」と思ってしまうし、「どうか道中ご無事に」と願ってしまう。
それが人情。それが人間。
でも、やっぱり途中でアクシデントや事故に遭う主人公。「これからどうなる?」と、観てる方はハラハラドキドキ。
ハラハラドキドキは映画における大切な要素のひとつ。
そんなハラハラドキドキが、派手なアクションシーンもラブロマンスもCGも海外ロケも見栄えするスターもなしに成立することを証明出来たのは、俊英フー・ティエンユー監督の手腕ゆえか。
彼のことも出演陣のことも、まったく予備知識なしに観たが、それでも見逃さずに済んで良かったと思わせる作品。
コスパやタイパ優先で利便性重視の時代に取り残されがちな古い世代。
主人公アールイ(阿陸)もそのうちの一人だが、観ている側の多くは「これからも頑張って」と願わずにはいられない。
でも、映画のラストには、そんな鑑賞者の思いに対するアンサーがちゃんと映像的に用意されている。
それもまた、この作品の大きな魅力のひとつ。
最近は社会派作品やドキュメンタリーも含め、殺伐とした映画ばかり観ていたので、鑑賞後は心が洗われる気持ちに。
細かい説明など抜きに、一度は観て欲しい作品。
QBハウスは台湾にもある
今まで何となく見落としてしていた本作。なのに先週末、不意にそのタイトルが目に留まって見過ごせなくなたため、すでに公開から3週遅れとなりましたが、サービスデイの本日にシネスイッチ銀座で鑑賞です。午前中の回でしたがシアターは残念ながらガラガラ。。まぁ、3週目なのでしょうがないですかね。
「男は習慣の生き物だから」作品序盤のあるシーンで次女リン(ファン・ジーヨウ)が言うセリフですが、確かに。私も数年前まで30年以上同じ美容室に、店名が変わっても、移転しても通い続けた口。現在は経済的なこともありQBハウスへ乗り換えましたが、本作を観て「QBハウスは台湾にもある」ことを知りちょっぴりサプライズ。
海外は疎か旅行そのものにあまり興味がない私。ところが本作の舞台である台中はノス味深めで懐かしさを感じ、ちょっぴりそそられる雰囲気。(あと、出来ればちゃんと「ローカル飯の食事シーン」があるとよかったけど)ただ、そんな場所だからこその交通の便が悪さはまさに「地方ならではの事情」であり、ほぼそのことがきっかけでいろいろ起こる「ある1日」が作品の大筋。時系列の入れ替えなど軽いギミックはありますが、基本的には働き者で情が深いアールイ(ルー・シャオフェン)の優しさとちょっとした可笑しみを感じるストーリーで、終始ほのぼのと観られます。そして、親と子達の双方向それぞれの目線で描くことで、肉親だからこその愛と甘え、お互いの距離の取り方などがより浮かび上がって見え、そのぎこちなさが観ていてもどかしかったり切なかったり。そして決して劇的さはないだけに、むしろじんわりと沁みてついつい亡母のことも重ねたり、とても感慨深く鑑賞しました。
比較的、台湾映画はあまり観てきていないため、初めて観る方、或いは出演作は観ていても記憶できていない俳優さんばかりでしたが、皆さん印象に残って素敵な方ばかり。そしてそんな中にお一人、登場時こそかなり奇抜な髪形で気づきませんでしたが、アールイによる散髪でようやくチェン・ボーリンだと判りました。やはり知っている俳優には思い入れも格別。折角なので、これを機に他の出演者の過去作品も掘り下げてみたくなりました。
と言うことで、「気づいてよかった」とても素敵な一本でした。
優しさに溢れた眼差しと音楽
「誰にでも頭はある.だから理髪師は失業しない」←お師匠さんの教え (笑)
2回目は横浜みなとみらいキノシネマで(10月20日).
優しくやわらかく温かい映画.
理容師の母親をずっとみて,お客さんとのやり取りをずっと聞いて育った監督が,自宅の理髪店を舞台にして創った映画.しかも,3年かけて!
主人公の女優さんは「こんな脚本をずっと待っていた」と24年ぶりに銀幕に復帰した大女優のルー・シャオフェンさん(ぴったり).4ヶ月間ヘアカットの猛特訓を経て撮影に臨んだとのこと.
しかも,実際のお店にいる猫も出演.好演.
こんな映画,面白くなくないわけ ないでしょう!(滞在を一日伸ばして観て,本当によかった).
2回目はルー・シャオフェンさんの顔と猫をずっと観てました.
家族,息子,娘,婿.出会う人々,散髪屋さんのお客さん達,登場するみんないい.
台詞もいい.日常に溢れて,そして洒落ていた.
「私の散髪はモルヒネのようだ.習慣性があるって」
「お世話になった以上のお礼がしたい」
「あなたといると自分がわがままにみえる!そんなの私じゃない!!」
「洗濯物の前にポケットの確認を! ……,変わらないのね.優先順位を考えないのね…」
「帰省か……、彼氏とは別れるべきだ」(大笑)
「(髪はご希望どうりにしました…)明らかに違うのは顔だけです」(笑)
「本当に気に入っているなら、中古でも問題ない」
「まっすぐ行って.人生みたいに」
「漬物がないと口寂しい…」
ほーんとに観てよかった.
「本日公休」を掲げて出かけるエピソードがひとつのクライマックスだけど,それだけではなくて最初から最後まで理髪店のお母さんの日々,日常.
「時間はあっという間に過ぎる」→だからこそ、この日常、淡々とした毎日がかけがえなくて.
『この瞬間が永遠なんだ』という言葉を思い出した.
思うようにいかないけど…
みんなが,母さんが,すべての関係がかけがえなく,いとおしい.そんな気持ちになった.
唯一無二の映画.
そうそう,音楽がまた最高なんですよね.
台湾映画、これも良かった
台中の理髪店の店主アールイは40年にわたって常連客を相手に店を営んでいた。夫を病気で亡くし、3人の子どもたちは既に独立していてたが、頼りにしてたのは近所にいて自動車修理店で働く次女の元夫チュアンだった。ある日、離れた町から通て来てくれてた常連客の先生が病で散髪に来れなくなったことを知ったアールイは、本日公休、の札を掲げ、愛車で先生のもとへ出張散髪に行く事にした。そして・・・てな話。
常連客だけで理髪店の営業が成り立つのかどうかは別にして、いい店だなぁ、って思った。
アールイ役のルー・シャオフェンが時々ドジするけど、ほっこりとした良い演技を見せてくれた。
最近台湾映画を観る機会が増えたけど、どれもなかなかレベル高くて心打つ作品が多い気がする。
長女シン役のアニー・チェンも次女リン役のファン・ジーヨウも可愛かったし、アールイの若い時の女優も美しかった。
オープニングの発進シーンに
戻る迄1時間弱、どうやらこれはロードムービーではないと気付く。家族ムービー? お仕事ムービー? 焦点が定まらないのは否めない。
先生最期の散髪の下りは泣けるし、“後頭部を診れば・・”は仲々含蓄だったけれど。お母さんが立ち過ぎてて他が皆霞んでしまっていた。
ドライレモンって酸っぱそうだな。
65点ぐらい。いい話。
理髪師の女店主が店を休み客に会いに行く…監督の母親がモデルみたいで…
台湾の映画だけど、日本の髪切りチェーンQBハウスも出てきます。
ホッコリする、いい話です。
お年を召されてる方が、より響くと思います。
良かったけど、少しマッタリしてて少し眠くなった(笑)
青空屋根の小さな理髪店
台湾の下町、壁一面の大きなガラス窓から差し込む日差しの元、今日もはさみの音とお客さんとの会話が店に響き渡る。
理髪店を営むお母さんのもとに集まったその子供たち。ところが母親の姿はどこにも見当たらない。お母さんはかつての常連さんに整髪をするため車で向かった。
前に主張サービスの話を聞いた次女はそれじゃあ燃料代、手間賃などもらわないと割に合わない、ちゃんとコスパを考えてと母親に諭す。でもお母さんは通常料金でいいんだという。そういうことではないのだと。
女手一つ、はさみ一つで店を切り盛りしてきたお母さん。三人の子供たちを育て上げた。店には日にお客は二、三人。けして何十人ものお客が訪れるような店ではない。それでいいんだと、常連さんさえいてくれれば十分食べていける。
お母さんは常連さんへの電話でのお知らせを欠かさない。もうすぐお孫さんの入学式では?髪を整えに来てください。そろそろ髪が伸びてる頃ではありませんか。まるで郷里のお母さんが自分の息子や夫を気づかいするかのような電話での優しいお知らせ。SNSの時代、メールの一斉送信とは違うお母さんの手間暇かけた心遣い。
そんなお母さんの店に常連さんは足しげく通う。常連さんたちはけして離れていかない、その命が尽きるまで。
お母さんの店は地域のコミュニティだ。お客同士も知った仲、時には食料を持ち合って食堂まで兼ねる。
そのかつての常連さんの中で命が尽きようとしている人のためにお母さんは慣れない運転で遠路はるばる向かう。そこでは新たな出会いも。そうして紡いできた人間関係。
10分で整髪が済んでしまう今どき流行りの都会の理髪店。お客はまるでベルトコンベアに乗せられたかのように流れ作業で整髪がなされる。短い時間では会話が弾む暇もない。店もお客もコスパ重視。時間に追われ売り上げに追われて、どちらもそんな暇はない。会話を求めたければチャット。安らぎを求めたければリラクゼーションルーム、サービスは細分化されている。料金が安い店は重宝されるがさらに安い店があればお客は離れていくだろう。お母さんの店のようなコミュニティは失われつつある。
SNSの発達で人々は瞬時に世界とつながることができるようになった、でもそれは広くて浅い関係。お母さんの店では狭いが深い人間関係が築かれる。
今日もお母さんの店でははさみの音と常連さんの談笑する声が響き渡る。
かつてどこにでもあった失われつつある風景がそこにはあった。
心あたたまるノスタルジックな作品。なにげに資本主義社会やSNSに対する問いかけもなされている。
髪を切る、ただそれだけ
お得意さんの散髪にはるばる出かけていくおばちゃんのロードムービー。
台湾好きという贔屓目抜きにしても良い映画。
理髪店と近所の常連さんとの付き合い方って、どこも一緒なのかな?体が悪いとか、熊が出たとか、他愛もない話をしながら散髪。プライベートな付き合いはなくても床屋さんって、なんかいろいろ知ってる不思議な存在。
道中出会った野良チェン・ボーリン。
ずいぶんとボサボサで登場だったので、トラブルになるのかと思ったら、ほっこりパートだった。
散髪してさっぱりしたら、やっぱりカッコいい。
到着して髪を切るシーン、すごく良い。
当たり前のことなんだけど、ずっと眠ったままで返事はしなくても、髪って伸びるんだな。
回想シーンで後頭部越しに髪の毛が少しずつ薄くなっていくのが、2人の長い付き合いを物語る。
家族も知らない優しい父親像が知らされ、子供たちもちょっと優しい気持ちになれたかな。
台湾名物ともいうべきバイクではなく、整備士だったり駐禁だったりと車がポイントなのも珍しい。
トーク上手な美容師って、赤封筒の幽霊の方か、気づかなかった。
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