「見逃さないで良かったと思える、一度は観て欲しい映画。」本日公休 TRINITY:The Righthanded DeVilさんの映画レビュー(感想・評価)
見逃さないで良かったと思える、一度は観て欲しい映画。
作品の冒頭、発進しようとする車が後ろの車両や前方の障害物に何度も接触する。
運転しているのは化粧はさほど濃くないので派手とまではいえないが、髪型は妙にきまっている中年女性。乗ってる車はVOLVO。
彼女はぶつけたことなどお構いなしに走り去って行く(ように見える)。観ている方は「このオバハンは…」という気分に思わず駆られてくる。
映画を見続けると、実はこのオバハ…もとい中年女性こそが作品の主人公で、彼女の人柄も次第に伝わってくる。
そして、もう一度冒頭の場面。
同じシーンなのに、今度は「ああ、気を付けて」と思ってしまうし、「どうか道中ご無事に」と願ってしまう。
それが人情。それが人間。
でも、やっぱり途中でアクシデントや事故に遭う主人公。「これからどうなる?」と、観てる方はハラハラドキドキ。
ハラハラドキドキは映画における大切な要素のひとつ。
そんなハラハラドキドキが、派手なアクションシーンもラブロマンスもCGも海外ロケも見栄えするスターもなしに成立することを証明出来たのは、俊英フー・ティエンユー監督の手腕ゆえか。
彼のことも出演陣のことも、まったく予備知識なしに観たが、それでも見逃さずに済んで良かったと思わせる作品。
コスパやタイパ優先で利便性重視の時代に取り残されがちな古い世代。
主人公アールイ(阿陸)もそのうちの一人だが、観ている側の多くは「これからも頑張って」と願わずにはいられない。
でも、映画のラストには、そんな鑑賞者の思いに対するアンサーがちゃんと映像的に用意されている。
それもまた、この作品の大きな魅力のひとつ。
最近は社会派作品やドキュメンタリーも含め、殺伐とした映画ばかり観ていたので、鑑賞後は心が洗われる気持ちに。
細かい説明など抜きに、一度は観て欲しい作品。