「優しい気持ちにさせてくれる良作」本日公休 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
優しい気持ちにさせてくれる良作
台湾第2の都市である台中で理髪店を営むアールイ(ルー・シャオフェン)を主人公に、彼女の3人の子供達との親子関係や元娘婿のチュアン(フー・モンボー)との擬似親子関係、そして理髪店の客達との関係を通じて、人生において何が大切なのかを描いた良作でした。
物語はアールイが店を臨時休業(公休)にして車で何処かへ旅立つシーンから始まりますが、その後時計の針は少し戻って物語世界の説明とも言うべき部分になって行きました。この辺りは非常にゆったりとした流れであり、成人して親の言うことを聞かない子供達を心配するアールイの姿に同情せざるを得ないものの、一方で長年の常連客との関係を築いている彼女は、理髪師としても、そして人間としても幸せに暮らしていると感じさせることが丁寧に描かれます。
この調子で何気ない日常が続くのかと思ったところで、冒頭の旅のシーンに戻り、話は急激に(二重の意味で)ドライブして行きました。家に水筒を忘れて来たアールイが、稲作農家の若者(チェン・ボーリン)からお茶をご馳走になり、代わりに長く伸びた髪を切ってあげるシーンは、その後に続く物語の頂上に続く登山口でした。そして旅の目的地であるかつての常連客の歯科医のコ先生の家で、先生が意識もなく寝たきりになっていることが分かり、それでも先生との思い出を噛み締めつつ髪を切るアールイの姿には、大いに涙腺を刺激されました。
これで本作は絶頂を迎え、あとはエンディングに向かうだけかと思いきや、心配する子供達の待つ台中の理髪店にアールイが戻ると、ギクシャクしていた親子関係も正常化の方向に向かい、子供達や最も信頼していた元娘婿のチュアンの人生も明るい方向に再出発することが決まり、暖かい空気に包まれて物語は終焉を迎えました。
本作で描かれた親子関係は、観る者一人一人の親子関係を想起させることから、観た人それぞれに違った思いが宿るだろう作品だったと思いますが、私としては親の思いも子の思いも心に染みわたるように理解出来た感があり、心を揺さぶられる思いがした次第です。真心を持って家族に接し、真心を込めて仕事をする。そんな日常の大切さを再認識させられた作品でした。
そんな訳で、優しい気持ちにさせてくれた本作の評価は★4.5とします。