「医療チャンバラの掉尾を飾る、大門未知子の正義の執刀大アクション!」劇場版ドクターX kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
医療チャンバラの掉尾を飾る、大門未知子の正義の執刀大アクション!
意外と見応えがあった。
テレビドラマ版は最初のシーズン以外は断片的にしか観ていないが、このドラマのセオリーを正直なまでに踏襲しながら、劇場向けに上手にスケールアップさせていると感じた。
脚本の中園ミホが〝Doctor-X 外科医・大門未知子〟を熟知しているのは当然だが、その軸をずらさず長編物語が書けているのだからサスガだ。
テレビドラマの劇場版という種類の映画を観ていると、これが意外と難しいのだろうと思う。
ドラマ版で田口トモロヲのナレーションが毎回同じ説明をしてくれていたので、本作で説明ナレーションがあるのは違和感がない。これが、一見さんにとっては基本設定の説明になり、ファンにとっては恒例行事となるのだ。
「これは、一匹狼の女医の話である…」
大門未知子(米倉涼子)と名医紹介所の神原晶(岸部一徳)それぞれの過去と二人の関係が明かされ、大門未知子が如何にしてスキルを叩き上げてきたのか、そして「私、失敗しないので」と言う決め台詞の真の意味も判明する。
なんとも集大成らしい正攻法。
内田有紀をはじめとするレギュラー陣が脇を固め、懐かしいメンバーも色を添えているのはドラマ版視聴者へのサービスで、知らなくても物語は楽しめる。
そして、スペシャルゲストに田口トモロヲである。
西田敏行、遠藤憲一、勝村政信、鈴木浩介らによるおちゃらけパートを劇場で観ると、往年のサラリーマン喜劇「社長シリーズ」を想起させる。
(西田敏行さんのご冥福をお祈りします)
さて、劇場版のゲストスターは染谷将太。
彼はいつからか、喉から声を絞り出すような喋り方になった。『バケモノの子』の頃はあんな発声方法してなかったと思う。
大河ドラマで信長を演ったときはあれが良かったのだが、現代劇だと観てるこっちも苦しくなってしまう😁
まぁでも、激戦区の世代の中で、個性を出している良い役者だ。
染谷将太が演じる双子の兄弟と神原晶との間には過去からの確執がある。
で、晶にはどんな過去があるのかというと、外国の野戦病院で一人でも多くの人命を救おうとする外科医師弟の姿に繋がっていくのだ。
大門未知子の同僚である田中圭が未知子の生立ちを追うのに重ねて、彼ら二人の過去を見せてゆく作劇が上手い。
ロケーションが織り込まれたり、新たなセットが組まれたりして、劇場映えがちゃんと計算されて撮られているが、なんと言ってもこの物語は病院内の室内劇だ。
手術室で展開される〝医療チャンバラ〟とでも言うべき大門未知子の執刀アクションが本作の見所なのだ。
かつてないスケールの危機が未知子を襲うが、未知子は敢然と「死」に立ち向かうのである。
テレビシリーズは7期、本作まで足かけ12年にも及ぶ。
チャンバラや事件ものでもないのに、勧善懲悪のパターンを長期間貫いたのは偉業だ。
途中、米倉涼子はブロードウェイの舞台に立ち、自身の大病とも闘った。
この映画での大門未知子の最後の闘いぶりは、正に「死」という悪との最終決戦に挑む正義の人だった。