「万感の思い溢れ」劇場版ドクターX 健部伸明さんの映画レビュー(感想・評価)
万感の思い溢れ
初日の初回に行ってきたが、かなり席が埋まっていた。作品世界内では、みんなこれからもしっかり生きていくんだろうけど、映像作品としては確かに「ああ、外科医・大門未知子(米倉涼子)とも、これでお別れなんだな」と実感する仕上がりで、ちょっと感情の持って行きようが難しい。未知子に、米倉の難病を治してもらいたいものである。とはいえドクターXのコンセプトは西部無頼の孤高のガンマン。口笛のようにむせぶ風と共に現れ、風ともに去るのは極めてそれっぽい。
そんな未知子の幼少時、医学生時代(八木莉可子)、そして研修医として神原晶(岸部一徳)に鍛えられる姿を目の当たりにでき、エピソード0としてもよくできている。
この過去を掘り起こすパートで重要な役割を果たすのが、TV第一期で好演した森本光(田中圭)と毒島隆之介(伊東四朗)で、自然で嬉しい再登場。
第二期から憎めない悪役として続投してきた蛭間重勝(西田敏行)現東帝大会長は、遺作とは想えない存在感だ。
ドライに改革を進める新院長・神津比呂人と、双子の弟で事業家の多可人を(色んな意味で)二人一役でこなしきった染谷将太の鬼気迫る演技が、作品の背骨として通っている。神原・森本の両名とも知り合いである設定も、プロットの重要な柱として活きていた。
12年間、声の顔としてナレーションを入れてきた田口トモロヲを、多可人の主治医・進藤悠介として起用したのも実にニクい。
総じて「集大成として一寸たりとて手を抜かずに仕上げよう」というスタッフの意気込みが伝わってきた迫力のフィナーレであった(さすが、米倉自身がプロデュースに関与しただけある)。
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