「やや難解な語が出てくるのが人を選ぶもののおススメ枠」うぉっしゅ yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
やや難解な語が出てくるのが人を選ぶもののおススメ枠
今年123本目(合計1,664本目/今月(2025年5月度)8本目)。
いわゆるソープ嬢の女性のところに、1週間だけでも祖母の面倒を見て欲しいという連絡があり、仕事と掛け持ちをしながら(認知症の)祖母との交流を深めて自分探しもする、という物語。映画の「うぉっしゅ」には複数の意味がありますね。介護においては入浴や体ふきなども含まれますから。
一方で、最初のほうに「嚥下機能」といった語が出てきますが(ちらっと写る)、医療現場や介護現場等では常識語でしょうが、日本人の成人でもそれらの仕事にいないと、認知語彙にすらないのでは…と思います(ほか、「せん妄」など。「歩行器」も同様だが、こちらは漢字から意味が理解できるし、病院の病棟でも見ることは結構ある)。一方でいわゆる介護人材不足による外国人受け入れが一般的となりつつ今では逆にこれらの「特殊な語彙」はそうした方のほうが理解が早かったりしますので、この映画の一つのテーマである「自宅介護」の論点は(介護の場所が病院か自宅か、という違いはあっても)介護現場に外国人の方がどんどんいらっしゃる現状、ある意味逆転現象も起きそうです。
主人公がいわゆるソープ嬢であるのも、実は映画のストーリーと大きく関係はするし、また映画の中でいう「くだらない職業」と述べている割に実は重要な事項でもあるし、また本人はそうはいっても誰も否定的にも肯定的にも述べないし、そこは好感が持てるところです(なお、PG12以上の映画ではないので、「その手の描写」は一切存在しません)。
公式サイト等にはちゃんと記述がありますが、在宅介護の協会など一部の医療に関する協会等の後援等もあり、描写は結構リアルでかつ正しく描かれている点も良かったです。このような映画は時としてテーマが人を選んでしまいミニシアター中心となってしまうことが多々ありますが、大きな映画館で放映されていたことに意味もあると思います。
採点に関しては以下まで考慮しています。
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(減点0.2/「嚥下障害」「せん妄」などの意味を理解するのにある程度の大人の教養を要求する)
この点、現場で働いている方には常識扱いでしょうし、それらと連携することがある法律職(行政書士も同じか)もまぁある程度わかりますが、少なくとも日常語彙ではないでしょうし(当事者除く)、認知語彙かというのも怪しいので、ある程度単語の選択に配慮があってよかったかな、とは思います(「歩行器」だけは、漢字の意味から類推ができる)。
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(減点なし/参考/親の介護義務と求償関係)
ここからは行政書士の資格持ちが気になった部分です。
日本の民法上、直系血族と兄弟姉妹には扶養義務があります。そしてその扶養者や扶養の程度が決まらない場合、家庭裁判所がそれを決めることになっています(民法)。戦後の混乱期など特殊な状況を除けば「一人しか扶養義務者が残らない」ことは想定できない一方、民法の物権債権(財産法)と違い、これらのトラブルが実際に家庭裁判所で争われることも極めてレアで、法律上の規定は別として「現地の習慣」や「当事者の暗黙の了解」が優先される代表的なケースです。
なお、(通常は)複数人想定できる扶養義務者がいるとき、誰か一人が代表したとして、その費用ほかをあたかも均等割りして他に求償できるか?というのは、日本では判例が少ないものの否定的な見解です(高裁で争われたケースがいくつかあるのみ、最高裁まで争われたケースがまず見当たらない)。また、複数人想定できる場合でも、「地理的な近さ」や「共同生活の実際の有無」は問題と「ならない」(配慮しない)というのが高裁判例です(大阪、仙台高裁など)。