2度目のはなればなれのレビュー・感想・評価
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70年抱え続けた心の傷と向き合う旅
ノルマンディ上陸作戦70周年記念式典に参加するため、老人ホームを抜け出して海を渡った老人の実話に基づいた物語。
主人公のバーニーは、ホームのあるコーヴ(イギリス南部の海辺の町)からタクシーでドーバーに行き、フェリーでノルマンディーに渡る。物語は彼とその妻レネの回想を交互に挟みつつ、夫婦の絆と戦争のトラウマ描写にウエイトが置かれたものになっている。
記念式典の団体ツアーに申し込みそびれたバーニーの背中を妻のレネが押したことで、彼は一見行き当たりばったりにも見える旅に出た。
終戦当時、レネのもとに帰ってきたバーニーは何か鬱屈としたものを抱えていたが、その理由をレネには決して言わなかった。レネはそんな彼の深い心の傷に立ち入らず、ただずっとそばにいることでバーニーを癒そうとしたのだろう。実際バーニーにとってもそれが一番の薬だった。だから、レネが老人ホームに入ることになった時、一緒についてきた。
そうして寄り添って70年の時を生きてきた2人だが、レネは病を抱えた身でありながら夫をノルマンディーに送り出した。
離ればなれの数日のうちに彼女の病状が悪化すれば、今生の別れの時に一緒にいられないかもしれない。それでもバーニーに出発を促したのは、彼には長年の心残りがあり、ノルマンディー行きによってそれを晴らすことができるかもしれないと見通したレネの慧眼だろう。今行かなければ、次の機会はないかもしれない。彼女の愛情の深さを感じた。
道中で、バーニーは戦争のトラウマに苦しむ人々と出会った。
フェリーで知り合ったアーサーは、退役後に名門校の校長を務めたという人物で、式典のチケットやホテルの手配をしてくれた。
戦地での経験を克服し充実した人生を歩んできたように見えた彼だが、実際はアルコール依存症に陥るほどの癒されない傷を抱えていた。大戦中、空軍兵士だったアーサーが爆撃した地域に、行方不明だった彼の兄がいた。自分が兄を殺したかもしれないという罪悪感に今も苛まれていたのだ。
バーニーも、あの日ノルマンディーで大丈夫だからと送り出した戦友のダグラスの死に自責の念を抱え続けていた。
彼らの抱えていた苦しみは、サバイバーズギルトと呼ばれるものなのだろう。戦争のせいで起きてしまった不幸な出来事が、個人の罪に擬態して生き残った者の心を人生の終幕まで蝕む。これもまた戦争の理不尽で残酷な一面だ。
その後の元ドイツ軍兵士たちとの邂逅が、特に印象的だった。バーニーがカフェに居合わせた彼らに歩み寄った瞬間は、見ていてにわかに緊張した。
だが、彼が声をかけたドイツ人もまた心の傷を抱えていた。かつての敵味方という関係を越えて、同じ苦しみを背負って来た者として彼の手を握るバーニーの姿に胸が熱くなった。
そして彼は自分の分だけでなく、アーサーのチケットまでドイツ人たちに譲った。式典よりも大事なことに向き合う覚悟ができたのだ。自分の心残りをなくすため、そしてアーサーを兄の墓に連れて行くため、彼はバイユー戦没者墓地を目指した。
バイユー墓地はフランス最大の第二次大戦イギリス連邦軍人墓地で、埋葬された遺体のほとんどがノルマンディー上陸作戦の戦死者、という場所だ。ちなみにここには他国籍の戦没者の墓も500基以上あり、その大半がドイツ人のものである。
数え切れないほどの墓標の中に兄とダグラスを見つけ、2人は墓参を果たした。彼らは悲しみと向き合い、戦争の虚しさに思いを致したが、きっと人生の心残りをひとつ減らせたはずだ。
無事ホームに帰還したバーニーを、すっかり時の人になった彼を追ってきたメディアと、レネの笑顔が迎える。理想的に思える老夫婦の絆に、心が救われるエンディング。
老いからは逃れられない、と語るバーニーの言葉が、本作で引退するマイケル・ケイン自身の思いのように聞こえる瞬間があった。
だが、今の年齢だからこそ表現できる人生のたそがれをスクリーンに刻み、自らの意思で俳優人生に幕を下ろした彼の生き方は、自身の年齢に向き合ってきたからこそ出来たことだと思う。そんな人間としてのあり方も含め、やはりマイケル・ケインは名優なのだ。
日本だけではないんだ。
日本では、本当は幸運なことなのに、自分だけ生き残った元特攻隊員が、こころの深いところで、自責の念にとらわれているという設定の映画が確か、過去何本かあった記憶がありますが、日本の特攻という特殊な環境によるものかと思っていました。
でも本作を観て、それが誤りであることに気づきました。
その「自責」は、国に対するものではさらさらなくて、まだあどけない顔のまま、自分の一番大切な人のことを思いながら、犠牲になった多くの者たちに対するものだということです。国に対するものなら戦勝国ではそうした感情はおこらないでしょう。でも違うのです。そのことが、ある秀逸なエピソードで明らかにされていきます。
日本だけではないんだ。そう思いました。
フラッシュバックのように70年前の二人と、今の二人の姿が交互に現れます。
踊り明かしたはち切れんばかりの若さと、いろいろなことがままならなくなった今の老いの対照の妙。大きく変わった二人ですが、確実に変わらないものがあったこともまた映し出されてゆきます。
なかなか生涯を添い遂げるのさえ当たり前ではない時代にそのこと自体に希少価値があるように思い、涙腺が緩んで仕方ありませんでした。
マイケル・ケインは、以前より、英国紳士風の温かな感じがよいなと感じていて、好きな俳優でしたがもう齢91歳なんですね。草笛光子といい勝負ですが、本作が引退作だそうです。相手役のグレンダ・ジャクソンはマイケル・ケイン同様、二度のオスカーを受賞している演技派の名優ですが、昨年6月、この作品の撮影後に87歳で亡くなられたそうです。色々ままならなくなった姿の演技は半分は本物だったのでしょう。昨年1月に亡くなった母の姿に重なり、胸が熱くなりました。
ご冥福をお祈りします。
第二次世界大戦から70年後のイギリスで、Dデイ記念式典に参加するため一人で旅立った男と彼に70年連れ添った妻を通し、人生のことを考えたくなる作品です。秀作。
鑑賞予定をしていない作品だったのですが
空いた時間に鑑賞できそうな作品を探していて
この作品を発見。作品紹介も気になりました。
そんな訳で鑑賞です。・_・
思いがけず、人生の深みを感じる良い作品でした。
老人ホームで暮らす、老夫婦が主役です。
夫婦で一つの部屋に入っています。
介護の必要が出てきたのは老婦人のほう。
一人で入居するつもりが、離れたくないとご主人。
自分も一緒に入居したのだそうです。仲良しさん。
「2度目の-」とタイトルにもあるように、過去に1回目の
はなればなれがあった二人。第一次世界大戦に出征する夫を
見送ったのが最初だったようです。
2回目めとなる今回。Dデーの70周年記念式典(?)にどう
しても参加したかったご主人=バーニー。
正式な申込みには間に合わず(抽選に漏れた?)単独でフランス
に渡ろうとしていました。
自分の年齢・体力・体調から考えて今年が恐らく最後の機会。
妻=レネに相談すれば、多分止められる。
どうしても-と主張すれば、その理由も話さなければならなく
なる…。70年前に何があったのか、についても。
一人で老人ホームを抜け出してフランス行きの船に乗るバーニー。
うーん。90オーバー老人の失踪事件発生。@_@
#「ハロルドフライの-」が頭に浮かびました。年寄りの一人旅。
# いや、船の中で私立大学の理事長だという老人に声をかけられ、
# 同行することになるので二人旅ともいえるかもですが…。
どちらの作品の主人公も、人生の残り時間の少なさをきっかけに
心に刺さったトゲの後始末に行くかのような行動に見えました。・_・
失踪を知った老人ホームでは、スタッフが警察に捜索願。あらら
…いや、そうしない訳がないのけれど ・-・;
やがてフランス行きの船に乗ったことが分かり、それを知って
バーニーがDデー記念式典に言った事を察するレネ。
一方、レネの側にも、現在進行形で夫に内緒の秘密がありました。
次第に悪化している心臓の病気。狭心症。
医者から「厚い本を読み始めるのはやめた方が良い」と冗談混じりに
言われてしまう程度に進行している様子。
読み終える前に命が…ということなのでしょう。…なんか笑えない
介護担当の若い女性が、バーニーに伝えないのか?と聞いてきますが
レネにはこの事をバーニーに伝える気が無いのです。
” 伝えたところで、バーニーを悲しませるだけよ ”
貴女もバーニーに話したらダメと念を押し、夫の帰りを待つレネ。
◇
と、この夫婦の70年前と今日との姿を描いた作品です。
バーニーもレネも、それぞれ相手を想って生きてきたことが分かります。
人生の重みを感じる晩年です。
ただ、バーニーには生きている内に精算したい過去があったのです。
最初の戦争で同じ戦場で戦った戦友が命を落としてしまうという過去。
自分が「上陸しろ」と言ったためだと、ずーっと心に想い陰となって
いました。そのことを誰にも(レネにも)告げられずに、70年の年月が
過ぎていたのです。
” レネにその話をすれば、黙って聞いてくれるだろう ”
” ただ、レネに余分な悲しみを共有させてしまう… ”
この機会が最後だろう と、一人で老人ホームを抜け出すバーニー。
うーん。深いストーリーです。
余韻も素晴らしい。秀作です。
観て良かった。
◇あれこれ
■戦後
バーニーにとって戦争は終わっていなかったのですよね。
70年前に戦場だったフランスへ渡り、彼の墓標を見つけて
そこでようやく彼の戦いも終息したのでしょう。
自己満足といわれたとしても、区切りは必要と思います。
戦争で「人に言えない秘密」を抱えて島た人の数、決して
少なくないものと推察します。・_・;
■当時の敵、今は?
イギリスもアメリカも。前線で戦ったドイツ人も。
70年という時間は、当時の敵を「生き残った同士」にする と
そういうものなのでしょうか。はて。
あのドイツ人が何を思って記念式典の会場にいたのか
その理由を考えることを、忘れてはいけない。
そんな気がします。
■墓場まで持っていくもの
相手のためを思えばこそ、相手に話さないこと。
バーニーは戦場での自分の判断を悔やみ続け
レネは自分の病気を隠して普通に振る舞い続ける。
夫婦なのに隠し事なんてしませんよ。 という夫婦もあれば。
夫婦だからこそ話さないことがある。 との夫婦もきっといる。
どっちが正しいか などという話では無いと思うのですが
共に前者を選んで、やり遂げたバーニー夫婦に敬意を表します。
◆あれはどうなったのでしょう?
後で思い出して気になったのが2点。
・預かった「手紙と写真入りケース」をどうしたのか?
・爆弾投下した街にいたかもしれないという弟の安否?
見落としたのかもしれませんが、この話がその後どうなったのか
分からなくて気になってます。?-?
※パンフレットに載っていないかと、購入しようと思ったのです
が「販売無し」でした。なんてこったい。。
◇最後に
” ミッションコンプリート ”
そう言いながらレネの元に還ってきたバーニー。
フランスに行った目的を尋ねることもなく、ただ労うレネ。
” けれど、次に遠くにいく時は一緒にいくわ ”
そして半年後、バーニーはこの世を去り
レネもその1週間後に亡くなったとのこと。
病気のこと、最後までバーニーには隠し通せたのでしょうか。
バーニーも、気付いても知らないふりをしていたのかも …とか
さりげなく最後まで一緒だった夫婦の素敵な物語でした。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
マイケル・ケイン引退作
概ね高評価だらけの本作ですが
バーニーがなぜあそこまでメディアに
持て囃されるのかが
全然わからない💦
90歳越えたおじいちゃんだから?
ひとりで参加したから?
んー。そんなに盛り上がるんだぁ。と
なんだかその辺に全然ハマれず
あとあとになって「まぁそうなるか🤔」とは
思ったけれど
鑑賞中はなんだかシラケてしまったんです、わたし💦
大戦をくぐり抜け戦争の悲惨さに
もがき苦しみながらも
レネとの生活はとても幸せそうだったし
まさかバーニーの方が先に他界するとは
思わなかったけど。
バーニー役 マイケル・ケインは
本作を最後に引退し
レネ役のグレンダ・ジャクソンは
2023年6月に他界しており本作が
長編映画遺作となったそう。
往年の大スターが引退や他界
寂しい限りです。
とても可愛らしい茶目っけあるレネ
バーニーの人を引き寄せる魅力
こんないつまでも誰からも愛される
老人になりたいなと思いました。
「r」がついただけだけど
「The Great Escape」は大好きな映画です。邦題が「2度目のはなればなれ」だったので、戦争に関係のあるお話とは全く思っていませんでした。
とても心に残る作品になりました。見てよかったです。
全てが上質なヒューマンドラマ
90歳近いおじいさんが1人で老人ホームを抜け出すという設定(実話らしいので当時は大騒ぎだったと思うが、さすがはユーモアあふれるイギリス。日本ならあんな面白がるような報道にはならないだろう笑)だけでもう面白いのだが、ロードムービーとしてもラブストーリーにしても描き方がなんとも上質。
バーニーと若き退役軍人との会話しかり、レネとアデルとの会話しかり、どちらも老夫婦がこれまで経てきた人生の厚みからくる温かさや心の強さを感じた。
それでいてお互いのことになると心配や焦りも感じさせるような愛が2人の間には確実にあり、この2人のような夫婦として人生をまっとうできたらどれだけ幸せなことかと思った。
そんな繊細で細かい心情を丁寧に確実に演じたマイケルケインとグレンダジャクソンにはあっぱれである。
また、脇を固めるアーサー役のジョンスタンディングや老人ホームのみんなもそれぞれキャラが立っていてとても良かった。
出演者全員がいるべくしていて、主人公たちを暖かく守っていると言う意味でも、映画として無駄のない作品だと思う。
『帰ってくれたらうれしいわ』ではないんです。
1944年のノルマンディー上陸作戦をモチーフに戦争の意義を問い掛けるヒューマンドラマ。
2014年のイギリス。妻のレネとともに老人ホームで静かに余生を送る退役軍人(元帰還兵)の主人公バーニー。
一旦は参加を断念したノルマンディー上陸作戦70周年の式典を目前に、ある思いを胸にひとり渡仏を敢行する。
かつて何度も映画の題材となった同作戦。その多くが作戦の成功や兵士の勇敢さを主題に描かれるのとは対称的に、本作は敵味方関わりなく多くの人命が損なわれたことや、残された者の心的外傷(トラウマ)にスポットを当てる。
バーニーが渡仏先や途上で出会う負傷した元アフガン帰還兵や第二次大戦の元爆撃兵(ともにトラウマを患い、アルコール依存症に陥っている)に加え、敵だった元ドイツ兵も彼同様、戦争で負った心の傷を抱える人たち。
本作でバーニーのフラッシュバックとして描かれる上陸作戦の光景は『プライベート・ライアン』(1998)ほど勇ましくもなければ苛烈でもない。ただひとり、約束を果たせなかった戦友ベネットの最期だけが脳裏に焼き付き、戦後もバーニーを苛み続ける。
式典への団体参加を見送りながら渡仏の際に彼が携えたのは、ベネットから託された恋人への伝言を封入した煙草ケース。結局、彼の目的は式典への参加ではなかったのだろう。
敗戦国の日本とは異なり、お祝いムードに沸き返る戦勝国の記念イベント。しかし、戦争トラウマで苦しむ元兵士のことまで配慮はしていない。
施設に残した妻のレネは、当時のオバマ米大統領やエリザベス女王を招待した盛大なセレモニーをTV中継で見ながら「ばか騒ぎ」と吐き捨てる。
戦勝国の英仏両国を舞台にイギリス資本で製作された本作。
バーニーがバイユー墓地に葬られたベネットの墓前で「無駄死にだ」と呟く以外、直接的に戦争批判を訴える場面は特段ない一方で、作品には和解や融和が重要なテーマとして垣間見える。
式場付近の食堂で元ドイツ兵と交流する場面もそうだが、主人公夫婦が暮らす施設の職員の多くが移民であることにも注目。
移民問題は欧米諸国では国論を二分するほど重大な課題になっているが、本作では深刻な対立は登場しない(黒人のアフガン帰還兵も含め、そもそも異端として扱われていない)。ヘイト主義や差別を看過したままでは戦争はなくならないことを逆説的に示唆しているのだと自分は思う。
ここ数年、ウクライナや中東で続く戦争も、根底にはヘイトや差別が介在するが、第二次大戦を引き起こしたナチス政権もその点は同じ。入手した式典の参加証をバーニーが元ドイツ兵に譲り手を携える場面は過去の清算だけでなく、未来の融和への可能性を託しているのかも知れない。
重くなりがちなテーマを扱いながら、少なからずコメディの要素も併せ持つ本作。
多くの映画ファンが気付いていると思うが、作品の原題 “The Great Escaper” は戦争映画『大脱走』(1963)の原題 “The Great Escape” のもじり。
さりとて、同作のパロディでもなければ、主人公や他の主要人物が元脱走兵という込み入った事情もなく、SNSを通じて話題になったバーニーにメディアが冠した「称号」が映画のタイトルとなっているだけ。
主人公の妻、レネのコメディ・リリーフ的な存在も作品を和らげるのに一役買っている。
楽天家で医師からの余命宣告にも従容として、施設の職員に「Oki doki」なんて軽口で応じるなど、どこかとぼけた感じの彼女。回想シーンでの若い頃も積極的でひらけた印象の、英国淑女にあるまじき(?)女性として描かれている。
邦題は作中の彼女のセリフにも引用されるが、『2度目のはなればなれ』とは、すなわち「2度目の生還」をも意味する。
劇的にできたはずの1度目の生還の場面を敢えて描かなかったのも、レネの軽妙なイメージを損わないためだったのかも。
施設に無断で出掛けたバーニーを失踪と早合点した職員がSNSで情報提供を呼びかけたばっかりに、彼の「2度目の生還」は一躍メディアの注目の的に。
事情を知らずに帰国したバーニーを待ち受けるカメラの砲列から施設に到着するまでのコミカルな場面のBGMに使用されるのは、ジャズの名曲 “You'd be so nice to come home to” 。
誤った和訳のタイトルが市民権を得てしまったが(「世紀の大誤訳」なんて言われている)、文法的に正確な日本語訳にするなら、本来の意味は「(私が)あなたのもとに戻れたら、なんて素敵なことだろう」。つまり、バーニーの心境を代弁するための挿入歌。
ヘレン・メリルの熱唱が超有名だが、しんみりし過ぎるからか、ここでは他の歌手によるアップテンポの歌唱が使われている。
未来への希望を灯すかのような白夜のラストシーンは美しいが、主人公夫妻の死去を伝えるメッセージは、個人的には不要だった気がする。
作品のモデルとなった実話があるそうだし、感想は人それぞれだと思うが、夫妻の人生の余白部分を鑑賞者が想像する余韻を残した方がよかったのでは?!
バーニーを演じた名優マイケル・ケインは今年で91歳。本作は彼の俳優引退作であるとともに、昨年87歳で他界したレネ役のグレンダ・ジャクソンの遺作でもある。
日本でも第二次大戦に関わった人たちのほとんどは百歳前後。語り部は今後ますます少なくなる。
ノルマンディー上陸作戦では数千もの味方の犠牲を強いたにも拘わらず、その数は連合国側の想定を大きく下回るものとして評されている。当然、個人の精神的苦痛など考慮されていない。
語り伝えるべき経験者と接する機会が失われつつある今、人間を簡単に手段化、数値化する戦争の本質を見抜くための意識を残された者が養うべきだろう。
戻って来るから送り出せる
レビューで評価が良かったので見てみました。
この夫の気持ちは良く分かる。
目が見えるうちに
足が動けるうちに
見ておきたいもの、
行っておきたい場所があり過ぎて。
その日じゃないと開催されない大切なイベントや、例えお墓の前であってもまた会いに行くべき人のもとへは命があるうちでなきゃ行けない。
そして、行ったら必ず家に帰ってくるから。送り出してくれた奥様にも拍手。
思い出の朝日を見た時のこと、ずっと忘れないでいてその日のバラを押し花にして思い出を取っておいたことも素敵。
また晩年になって2人で朝日を見れて良かったです。
主人公が、ドイツの退役軍人の皆さんに入場パスを渡すところ、相手の方が感無量で泣いてしまったら無言で手を取り、お互いに敬礼する場面で思わず泣いてしまいました。
戦争のことは考えさせられるけれども、とても落ち着いた時間の流れる良い作品でした。。!
終活最大の難問
戦争を生き抜いた世代の、終活の話だと思った。
「THE GREAT ESCAPER 」
たしかに「大脱走(者)」ですね、歩くのすらおぼつかない90歳が、誰の世話も受けずたった一人で連絡船乗り場まで行き、ドーバー海峡を渡り、現地に行ったのだから確かに偉大かも。
但し、計画性なし、お金だってない。(ちょいボケ入ってたか?)
アーサーが助けてくれなかったら野宿するしかなかった。
そういう夫を普通に送り出した妻・レネも相当肝が座ってる。
そっけないが、ツンデレなのだ。
ノルマンディー上陸作戦を経験したバーニーが、70周年記念式典にどうしても参加したかったのは、心に刺さった杭と折り合いをつけるには最後のチャンスと思ったからだろう。それは、バーニーに親切にしてくれた、育ちの良い金持ちジェントルマン・アーサーも同様。バーニーは、行きずりの戦友を死なせてしまったのは自分では、という葛藤に苦しみ、アーサーは、弟を殺したのは自分では、という罪悪感とともに生きてきた。
そして、それはノルマンディーで迎え撃ったドイツ兵にも。
彼らも、ここで命を落とした「英霊」を悼むために、ひっそりとやってきた。
彼らも、これが最後の機会だと思ったのだろう。
言葉少ない彼らに、バーニーはそっと手を重ねる。
憎きドイツ軍だが、個人として何の悪意があったのか。
ドイツ兵であっても、ここで多くの同胞を亡くし辛い時代を共有したという点では同士ではないか。
手と手を重ねて視線を交わしただけで、お互いの人間としての苦悩を共有できたよう。
バーニーは、自分とアーサーの参列の特等席を彼らに譲る。
追悼の式典なら、彼らには十分出席する資格があるのだ。
そんな風に思えるのは、70年という年月がバーニーの思考に、熟成の期間を与えたからだと思う。
ノルマンディー上陸作戦の数ヶ月前から、ドイツ軍の増援部隊や装備を迅速に動かせないよう連合軍の爆撃機がフランスの道路網や鉄道網を攻撃し、フランスの民間人が多数犠牲になった事実がさりげなく挟まれる。ドイツ軍との戦闘を生き延びたアーサーの弟は、民間人のレジスタンスに救われたのに、味方であるはずの、アーサーも含めたイギリス空軍の爆撃でやられた。手を下したのは自分かもしれない。こんなとんでもなく皮肉なことも、現実にはあったことだろう。
やはりバーニーに親切にしてくれた、現代の戦争で片足を失いPTSDを抱える若い元軍人の連絡船乗務員は、アーサーともども、お返しとしてバーニーから人生を大きく変える光をもらった。
情けは人の為ならず、とはこういうことだと思った。
バーニーとレネの、互いに口にすることはない終活は着々と進むが、最大の難関が見えてくる。
それは、どのように逝くか、ということ。
夫婦仲が良いのは、人間が得られる幸せの中でも最上級なものの一つだと思うが、死ぬときは大抵はひとりづつ。仲が良い分残されたほうの辛さはいかばかりか。
子どももいないようだし、この夫婦はあるときからずっと、このことを考えてきたのだろう。
「今度離れ離れになるときは、私もついていくことにした」
言葉通りにできたレネの終活は、GJだったようだ。
マイケル・ケインはさすがな名優、大物オーラを出すこと無く、思慮深さと意志の強さを持ち、少々ボケが入った「普通の老人」を、いとも自然に、言葉に頼ること無く表情と醸し出す空気で演じている。
我が物顔のサイクリストに仕返しで自転車のタイヤの空気を抜いたり、思いがけず有名人になって浮かれて反省したり、笑ってしまった。だけど夫は妻のためにすかさず巨大なスイスのチョコレートをプレゼントしてもらってたよね。高価なソーセージももらって、食いしん坊な妻を喜ばせたい、微笑ましい夫ぶりです。
90歳でも毎日お化粧し、美容活動に余念がないレネは若い頃、相当モテたようなので、バーニーはずっと気が気ではなかったかも。今だってツンデレで、かわいいおばあさんだし。
但し、頭が良く思慮深いであろう以外、アーサーの人となりは良くわからない。
妻をひたすら愛しているのは確かだが、育ちも欠点もわからないからちょっと不気味な気もする。
若い頃に見たらどうということない映画と思っただろうが、あと30年もすれば歩くのもおぼつかない、身の回りの世話すらひとりでは苦労するような時が来るのだと身につまされた。
その頃自分はどんな生活をしているんだろう、いや、そこまで生きていないかも
自分、人生も後半で、あとは衰えていくだけ、それはどうしようもない現実だ。
時が経つのは早く、つい昨日と思っていた若い頃がいつの間にか遠い過去のものになっていて愕然とする。
人生は短い、とつくづく思ってしまった。
それにしても、うらやましい夫婦ですよね。
愛する人と離れることなく、ケアが行き届いた小綺麗な高級(に見える)老人ホームに暮らし、車椅子を押しながらの散歩の途中でふたりで躊躇なくアイスクリーム食べられるくらいのお小遣いもある、夢で思い描くようなゆとりある老後ではないですか。
戸田奈津子さんが字幕を務めていて、ご自身もご高齢なので老境を描いた映画には適任だったように思いました。
「史上最大の作戦」こと第二次大戦のノルマンディー上陸作戦。 その日...
「史上最大の作戦」こと第二次大戦のノルマンディー上陸作戦。
その日は「Dデイ」と呼ばれる。
2014年はDデイ70周年の節目だ。
英国の海辺の町ブライトンの老人ホームで暮らすバーニー(マイケル・ケイン)とレネ(グレンダ・ジャクソン)。
英国のDデイ記念式典に申し込み忘れたバーニーは、式当日、フランスでの式典に参加すべく、早朝ひとりでホームを抜け出した・・・
というところからはじまる物語。
日本タイトルの「2度目」は今回のバーニーとレネの「はなればなれ」。
1度目は大戦の際のことだった。
バーニーは、Dデイでの「忘れ物」を70年経ち、死期も迫った現在になって成就しようと試みる。
いい映画なんだけど、50年目ぐらいで実行すればいいのに・・・と思ってしまい、やや乗り切れず。
ま、死期がみえたからの決心なのだろうが。
個人的には、道中、バーニーが知り合う元空軍爆撃士のエピソードが切なかった。
監督のオリバー・パーカー、脚本のウィリアム・アイヴォリーとも、作品を観るのは本作がはじめて。
大戦シーンや過去の回想など、やや水増し的だなぁと思いました。
マイケル・ケイン、グレンダ・ジャクソンとも、若い時分は、どちらかというと苦手な俳優さんだったんですが、本作では「流石」と思いました。
人生のHOLY HOUR
通常スクリーンで鑑賞(字幕)。
名優マイケル・ケインの引退作。実話を元に、老夫婦の70年に渡る愛と絆、人生のホーリー・アワーを美しい映像と共に描き出す。ずっと戦争の傷を抱えて来た夫の心を癒した妻の言葉に涙が止まらなかった。本年度ベスト級の感動作だと思う。
70年ぶりの帰還
妻のレネと老人ホームで暮らすバーニー。彼はノルマンディー上陸作戦70周年記念式典が行われるフランスへ行くためにホームを脱走する。70年前戦場に向かう彼を見送った時と同様に妻に送り出されて。
しかし彼が向かった理由は式典の出席ではなかった。彼は70年前にノルマンディーの地に置き去りにしてきた自分自身の思いを遂げるためにかの地を目指す。
第二次大戦を経験したバーニー。彼に限らず多くの戦争体験者はあまりにもつらい体験をしたがゆえに自身の体験を語りたがらない。口に出すにはあの時の状況がいやがうえにもフラッシュバックする。あの悲惨な記憶が蘇り体験者を苦しめる。二度とあのような思いはしたくない。自身の記憶を掘り起こすことはあのつらい体験を再び体験することに他ならない。彼らの多くはそれらの記憶を心の奥底に封じ込め、その記憶は死ぬまで掘り起こされることはない。
そんな彼らを誰も責めることはできない。彼らが体験したつらい思いは体験者にしかわからないからだ。むしろ自分の体験を話してくれる体験者の方が稀有な存在なのだ。
バーニーもノルマンディー作戦から生還した時、妻のレネに何があったのか語ることは一切なかった。しかしレネは彼の気持ちを理解していた。同じ時代あの戦争を共に生き抜いた同志として。
道中でバーニーは彼と同じく戦争で心に傷を負った二人の男と出会う。同じ退役軍人のアーサー、彼にもやはり他人には語れないつらい戦争体験があった。彼は自ら行った空爆で自分の弟を死なせてしまったことを悔やみ続け、アルコールに溺れていた。また若き退役軍人のスコットもやはりアフガンへの従軍でPTSDを患っていた。
そして現地では元ドイツ兵たちとも出会った。ドイツ菓子購入を躊躇していたバーニーは勇気を振り絞って彼らと会話する。
同じ戦争体験者同士、そこには敵か味方か、勝者か敗者かなどとは関係なかった。あの時は皆が共に国のためと信じて戦った。そして両者ともにあの戦争で得たものより失ったもののほうがはるかに大きかった。会話の最中涙を流す元ドイツ兵の老人、その気持ちがバーニーには痛いほどよくわかった。
バーニーは式典のチケットを彼らに渡しアーサーを連れて戦没者の墓へと向かう。彼がこの地を訪れた理由は戦友を弔うためだった。今回この機会を逃せば二度と訪れることができないだろうという思いから。
上陸作戦でともに戦った戦友ダグラスは帰らぬ人となった。彼はバーニーの目の前で爆撃され命を絶たれた。それを間近に見たバーニーにとってそれはただ戦友の死というだけでなく、自身の命も絶たれたかのような体験だったに違いない。自分と何ら変わらぬ同世代の若者の死。自分が死んでいてもおかしくはなかった。彼が死に自分だけが生き残った、そんな自分だけが生き残ったことにバーニーは罪悪感を感じて生きてきたのだろうか。
彼は年を取り、この先の人生が決して長くないことを悟りあの時封印した自身の記憶と向き合うことにしたのだ。そしてあれ以来一度も訪れることのなかったノルマンディーの地に足を踏み入れた。同じく罪悪感に苦しむアーサーを伴い戦友を弔うために。
戦友を弔い、70年越しの心のしこりが取れた彼の心は晴れやかだった。PTSDに苦しむスコットを励まし、アーサーとも冗談を言い合い別れを告げた彼は家路を急ぐ。妻の待つ家へと。
帰還の途に就く彼をマスコミたちが追い回し、彼は有頂天になり羽目を外す。心のしこりが取れたおかげであろう。
そして帰宅した彼をあの時と同様に妻は受け入れてくれた。何事もなかったかのように。そんな妻に彼は70年前の出来事を話す。それは70年越しの告白だった。愛する妻にも話せなかったつらい体験を彼はやっと話すことができたのだ。
あの時あのノルマンディーの地に置き去りにしてきた彼の思いは今ようやく現在の彼に追いついたのだ。
心に背負っていた重荷をようやく降ろすことができた彼は愛する妻と残り少ない人生を穏やかに過ごせたことだろう。無礼なチャリダーの若者たちのタイヤの空気を抜きながら。
戦後80年になろうといういまの時代、戦争を体験しご存命である方々の人数はわずかだ。国の為政者に戦争体験者がいなくなるとその国は戦争を起こしやすくなるとよく言われる。
過去の悲惨な戦争を知らない人間たちは再び同じ過ちを犯す。いまの世界を取り巻く状況を見ていて不安になる。
バーニーがダグラスの墓の前で声を押し殺して述べた言葉が印象的だった。「無駄死にだ」と。様々な理由で始められる戦争。しかし尊い命を犠牲にしてまで正当化される戦争はこの世にはない。戦争を始めた時点でどちらが正義でどちらが悪ということもない。戦争を始めた途端それは否応なく敵味方双方の尊い命を奪い去る、戦争をするものすべてが悪に染まるのだ。
実話に基づくお話で、ちょっとシチュエーションは異なるが、同じく実話ベースの「君を想い、バスに乗る」を思い出した。高齢者の映画は自分も歳をとったせいかとにかく心に沁みる。
御年91歳のマイケル・ケイン、彼の芝居の端々からその生きてきた人生の重みが感じられるとても魅力的は俳優さんだ。これが引退作とは実に惜しい。そしてチャーミングな彼の妻を演じたジャクソンも介護士の女の子に母親のように温かく接する姿が印象的だったし、夫婦役の二人は本当に長い年月をともに連れ添ったかのように見えて見ていてとても心を癒された。
夫婦であっても1人で越えるべきこと、2人だから越えられること
個人的な問題意識?から、ジョーカー2を見ようと思ったのですが、あまりにレビューが低くて迷っていたところ、たまたま目に入った本作が良さそうだったので鑑賞しました(そういう映画選びも時々あります、、、)
はっきり言います!
パートナーと共に人生を生き切るということがどういうことかを味あわせてくれる、素晴らしい作品です!
特に、夫婦であっでも、1人で乗り越えなければならないこともあれば(その間、パートナーはそれをじっと見守る)、2人だからこそ力を合わせて越えられることがある、ということを見せてくれたように思います。
本作については、映画館で映画パンフレットは売っていませんでした。少なくとも日本では作成していない感じです。もしかしたら、本作のもととなった実話のご夫婦と、演者であるベテラン俳優さん達への敬意と愛情を込めて作られたこの作品を、見る人が見て愛してくれたら嬉しい、、、そんな気持ちで公開しているのかもしれません(ボリューム層をターゲットに大ヒットを目指して制作された作品でないことは明らかなので)
作品のベースとなった実話も素晴らしいですが、実話とほぼ同じ年齢の俳優さんたちが、高齢である今もなお、演じて何かを伝えたい、とする姿に心を打たれました。
主人公のお二人の俳優さんがいなければこの作品は無いわけで、この作品がなければ、作品のもととなった実話を私が知ることは出来ませんでした。
本作を観て感じたことは、お互いを労わりあいながら生きる夫婦の力強さと優しさ、そして年齢を重ねて2人で様々なことを乗り切った後に見る、景色の穏やかさです。
私はこの後の人生、まだまだ努力しなければ、この穏やかな境地には至れませんが笑、目指すべき到達点を少しだけ垣間見させてもらったように感じました。
「まだ想像もつかないほど先の話だけれど、パートナーと生きる一生がどのようなものか知ってみたい」という若い方、あるいは、もう何十年も連れ添って来て、人生山あり谷ありで乗り越えて来た、というご夫婦には、きっと観て心を打たれる、素晴らしい作品だと思います!
ただ一点だけ老婆心ながら注意点を。
あくまで私個人が感じただけなのですが、作中のご夫婦と自分の人生と重ねて、沈む夕日を見るのは、自分にはまだ早かった、と感じました。人生を生き切った主人公2人と同化して眺める景色は、素晴らしく穏やかではありますが、その中に僅かにでも寂寥感を感じてしまう人は、この作品の後味には寂しさが残ってしまうかもしれません。
自分が経てきたティーン世代のドラマなら、自分の過去と重ね合わせて共感できるところが沢山ある気がしますが、いよいよ人生の総仕上げをする年齢を描いた映画は、まだ観てもピンと来ない、、、というより、人生が終わりになってしまうことへの寂しさを感じてしまいました。自分はまだ、誰かと共に人生を生き切っていないからなのかもしれません。
ん〜、うまく表現できませんが、大好きなおじいちゃん、おばあちゃんが亡くなった時、頑張って生きてくれてありがとう、お疲れ様、と感じながらも、やはり寂しい気持ちになるのと同じような感覚かもしれません。(観た後、なんとなく寂しくなって、少し引きずってしまいました。こう感じたのは、私だけでしょうか)。作品中では、主人公が意地悪じいさん?よろしく、無礼な若者の自転車の空気をコッソリ抜くシーンとか、クスッと笑えるシーンも色々あるんですけどね。
、、、それでもやはり、この作品は素晴らしいと思っています。制作者の皆さんと俳優さんたちに、拍手喝采です!
私もあと20年くらいしたら、またパートナーと一緒に見直したいと思います。
今回は、「作品を鑑賞するのにふさわしい年齢」というものがあるのかもしれない、、、と感じた、初めての経験でした!(^^;) まあ、これもひとつの経験ですね)。
、、、と、書いていたら、今ニュースで西田敏行さんの訃報が入ってきました、、寂しいです、、、ご冥福をお祈り申し上げます。
追伸
レビューで夫婦愛のことばかり書いてしまいましたが、
本作品で一番感動的なのは、主人公がかつてのドイツ兵と対峙するシーンと、戦没者墓地を訪れるシーンです。
あの行動、あのセリフは、長い人生を実際に生き抜いてきた俳優さんにしか出せない重みと説得力があります。本当に、泣きます!
何ヶ月か前にNHKで、日米のかつての兵士同士が野球試合をするドキュメンタリーを見ましたが、本作と同じように、人は「許し合いたい心」を抱えながら生きるのだと感じました。自分が生まれてからこの方、戦争を経験せずに生きて来られたことには、本当に感謝をしなければいけないと思いました。
2人の偉大な俳優の最後の輝きが感慨深い
物語を引っ張るのは、90歳の主人公が、病気の妻を一人残し、老人ホームを「脱走」してまで、ノルマンディー上陸作戦70周年記念式典に参加しようとする「理由」である。
度々、挿入される上陸作戦時の回想シーンから、それが、ある戦車兵の死に起因していることが明らかになっていくのだが、その一方で、主人公と戦死者が特に親しい間柄だった訳ではなく、主人公のせいで戦車兵が死んだ訳でもない(と思える)ことには、やや釈然としないものを感じてしまった。
「自分が彼を死に追いやった」と思い込んでいる主人公が、「サバイバーズ・ギルト」と呼ばれる罪悪感に苛まれ、苦しんで来たことは理解できるし、実話をベースにした物語なので、過度な脚色も避けるべきなのだろうが、それでも、「史上最大の作戦」を舞台にしたエピソードにしては、ドラマチックさに欠けているように思えてならない。
そのせいか、敵地にいた兄を、自らの爆撃で殺してしまったのではないかと苦悩する元空軍兵と、主人公が、英軍兵士が眠る墓地を参拝するというクライマックスよりも、彼らが、カフェで、ドイツの退役軍人達と、相互に敬礼するシーンの方が、「かつて殺し合いをした者同士の70年ぶりの和解」が心に響いて、感動的に思えてしまった。
いずれにしても、映画を観て、最も心に残るのは、やはり、マイケル・ケインとグレンダ・ジャクソンの、人生の重みが感じられる存在感と、人間としての深みだろう。
特に、ジャクソンは、夫の悩みを察知して、彼を記念式典へと送り出し、夫が抱える戦争のトラウマを聞いて、「あなたのせいじゃない」と慰め、夫が生還したお陰で自分達が幸せな結婚生活を送れたことを彼に理解させ、さらに、「今度いなくなる時は、私も連れてって」と「とどめ」を刺すなど、まさに完璧な妻を完璧に演じていて、強い印象を残す。
ジャクソンは、この映画が遺作になったということだし、ケインも、これで俳優を引退するらしいのだが、2人の偉大な俳優の最後の輝きを見届けることができて、観ているこちらも幸せな気分になることができた。
名優マイケル・ケイン引退作品。グレンダ・ジャクソンの遺作 。ノルマンディー上陸作戦に参戦した男とその妻の70年目の”一番長い日”。
名優マイケルケインの引退作品。
なのになんていうコピーか。
「笑顔で、泣ける!!」人情コメディか。
「ノーランに愛された男」ノーランにもケインにも失礼。
よほど売りにくい作品らしい。
しかも、パンフレットも無し。
数々の出演作品の一覧を見ながら、解説を読もうと思ってたのに。
さらに予告編のイメージも”夫婦愛”感動作としてしか語っていなかったが、実際に観たら、もう一つの大きなテーマ「ノルマンディー上陸作戦」にほとんど触れていなかった。
その70周年記念式典に出席するために、施設を脱走。
70年ぶりに再び海峡を渡るために、離れ離れになった夫婦の話。
どこかユーモラスなのは、夫婦役二人の役者の真摯な名演があってこそ。
二人の名演と言うより、やはり二人のこれまでの人生の重みが画面から伝わってくる。
グレンダ・ジャクソンはイギリス公開前に他界、遺作になったのは残念。
’60~'70年代に活躍した俳優たちの新作がもっと観たいです!!
もう病気で絶対に行けないのに、次は一緒に行くという妻と並んだ二人が、一瞬若い姿に戻るカットが今思い出しても泣ける。
【”大脱走。そして高齢の英国退役軍人は2度目のノルマンディへ”任務”を果たす”ために一人旅立った。”今作は、名優マイケル・ケインの最後の雄姿を見るに値する逸品であると、私は思います。】
ー 2014年6月6日、ノルマンディで行われたDデイ70年記念式典に参加するため、89歳の英国退役軍人が、老人ホームを抜け出しフェリーで現地に行き、マスコミに”大脱走”と騒がれた実話の映画化である。
そして、物語はほぼその通りに描かれる。
但し、夫バーナードを演じたマイケル・ケインと妻レネを演じたグレンダ・ジャクソン(公開前に死去。この作品が遺作となった。だが、この作品が遺作であれば女優冥利に尽きるのではないかな。合掌。)の名演で。ー
■バーナードは体調の優れないレイを気遣い、一度は式典参加を諦めるが、妻の強い勧めで70年前の激戦地”ソード・ビーチ”へ老人ホームの職員たちに何も言わずに、こっそり旅立つ。
そして、Dデイの日に、同じ船に乗っていたダグラス・ベネットに頼まれた約束を果たしに行くのである。
◆感想
・前半はコミカルな感じで物語は進む。特に全編を通じ妻レネを演じたグレンダ・ジャクソンの明るさが、作品を和ませる。
・この作品は、バーナードが”ソード・ビーチ”に立つ冒頭のシーンから、随所で第二次世界大戦の潮流を連合国側に変えた激戦シーンを絡めつつ、現在のシーンを主に描かれる。
■心に残ったシーン幾つか
1.バーナードが殆ど何も持たずに会場に着いた時に出会ったイギリス空軍だったアーサーが、親切にも自分のホテルに彼を誘い、彼と往時の話をするうちに息が合い”自分はアルコール中毒だ”と告げるシーン。PDSDに苦しむ様は描かれないが・・。
2.”ソード・ビーチ”沿いに立つレストランで、バーナード達米英兵が食事を摂る中、近くにいた仲間だった兵を偲ぶ旧ドイツ兵達のグループにバーナードが近づき、米英、旧ドイツ兵達が同じテーブルを囲み、言葉は通じないが、バーナードが差し出した手を一人の旧ドイツ兵の男がその上に手を置き、二人で相手の眼をしっかりと見ながら、固く手を重ね合うシーンは、沁みたなあ。
そして、バーナードとイギリス空軍だった男は自分達のオバマ大統領とエリザベス女王の直ぐ後ろの席を、彼らに譲るのである。
ー 時は、憎しみを同じ苦難を共にした者たちを、友として結ぶのである。白眉のシーンだと思う。涙が出たよ。ー
3.更に、バーナードは式典には出ずに、ノルマンディの戦いで亡くなった兵たちが眠る墓地を訪れ、バーナードが同じ舟に乗っていたダグラス・ベネットに”突撃しろ!”と言った際に彼から受け取っていた、彼の恋人の写真と手紙を入れた金属の小さな箱を持参し、深く詫びるのである。
このシーンも実に沁みた。
4.アフガン戦争で地雷で足を失っていた黒人青年に、バーナードが掛ける言葉も良かったな。
<そして、”任務”を果たした”バーナードは英国に戻るのだが、熱狂的に迎えられる中、バーナードは妻レネと、手を握りながら夕日が沈む光景を静かに見ているのである。
その後に流れたテロップも、心に残る。本当に二人は2度だけ離れたけれども、それ以外はずっと一緒に暮らし行く事が分かるからである。
今作は、現況の世界情勢の中、大切なメッセージが描かれており、又、名優マイケル・ケインの最後の雄姿を見るに値する逸品であると、私は思います。>
マイケル・ケイン引退作!
俳優の引退って本当に引退するから困ったもんで、タランティーノも次作で引退かぁ。
大仁田厚の引退は、聞き飽きたけどさ。引退する俳優って、俳優やらなくても食っていけるもんなぁ。
引退した芸能人って、慈善活動したり、記念式典に出席しているだけなのに食っていけるから、復帰はしてくれないでしょうねぇ。
あ、大仁田さん、貴方はもう結構ですから。また痩せたり太ったりしててください。
2014年、夏、ノルマンディー上陸作戦で従軍した過去を持つ陸軍と空軍の兵士が戦後70年記念式典で出会い、お墓参りに行くお話し。以上3行であらすじ終わり!どっとはらい!
では、あんまりですか?ところが、このシンプルなお話しを最後まで飽きさせないで見せてくれるのですよ?名優達の演技力だけでね?
竹中直人が「 役者は下手な方がいい」 という本を書いていたけど、演技が下手な役者ってさ?天丼のてん屋で海老の天ぷらを入れ忘れて提供されるのと同じで、許してはいけないと思うんだ。
俺の家系は、女は長生きでこの前亡くなった婆ちゃんは102歳で天寿を全うしたが、それに比べて男は短命で( 落語とは関係ないからね) 男のお爺ちゃんって、会った事がありません。永久保貴一先生に調べてもらったら原因は分かるのかしら。何とも悩ましいところです。
だから、お爺ちゃん俳優の動向は気になって、映画で見ると安心します。良かった、まだ生きていたってね。
マイケル・ケインの最後の仕事です。映画ファンなら見に行くのが義務です!見て損はしません!二回見ろとは言いません!絶対に損はしないから、見に行こうぜ?!
人生の幕引き
90歳の老人が施設を抜け出し従軍したノルマンディー上陸作戦で亡くなった戦友の墓参りに行って帰るまでの一泊二日の物語。俳優陣の演技がとてつもなく、後半は演技の枠を超え、本人の言葉なのではないかと思わせるほど観客の心に静かに染み渡る。戦争のトラウマに向き合う姿など考えさせられる。両親が昭和一桁生まれで同じ世代であり、親のこと、また、これから迎える自分の老後のことなど考えさせる映画。実話だと知って最後に涙が出てきた。細かいアラはあるのだが、イギリス短編らしい良い映画だった
「戦争、後」の描き方
終盤は、マイケル・ケインさんへの賛歌に見えて、ジーンとした。
マイケル・ケインさんの引退作ということは事前情報で知っていたけど、
本編を観終わり、グレンダ・ジャクソンさんの遺作と知ったら、めちゃくちゃ切なく、寂しくなった。
ところで、
なかなか日本映画が向き合い描く「戦争」のその後とは違うなぁ、と。
けど、
70年近く経った今でも、トラウマに悩んだり、
戦争を否定し、戦争は無駄死にだとしっかり言及してくるところ、
退役軍人のパーティー感だけじゃないところが印象的だった。
ポスターを見る限り、ほのぼの系だと思っていた!
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