「良い話の一言で片付けてはいけない」2度目のはなればなれ きーろさんの映画レビュー(感想・評価)
良い話の一言で片付けてはいけない
戦局を決めたノルマンディ上陸作戦を共に戦い、彼の地で目の前で亡くなった戦友を思う。戦争という我々の想像を遥かに超えた厳しい時代に青春を捧げて、せめて次の世代は戦争のない平和な時代をと願って自分たちの国は正しいと信じ戦ったあの頃を思う。
彼ら老夫婦を取り巻く環境は小さいけれど温かな幸せに満ちているし、お互いを気遣い、愛を積み重ねながら、自らが存在したことを世間に示しながら天寿を全うしていく姿はとても素晴らしい。カットも丁寧に積み重ねられていてふたりは常にチャーミングで前向きだ。遺恨を残しているはずの元敵兵とのエンカウントも素敵な話に昇華しているし、トラウマと向き合う姿も感動的だ。
あまりの素晴らしさに涙が溢れる映画だが…ちょっと待て。
第二次世界大戦での世界の戦死者は5千万人。明治の終わり頃の日本の人口と同数の命が失われている。
5千万通りの、あったはずの未来の幸せや人生が失われて、その犠牲の上に今の我々の、世界の毎日が成り立っていて、とはいえ愚かにも人類は終戦後もずっと紛争や戦争を延々と続けていて、ここ最近のウクライナとロシア、イスラエルとパレスチナの戦争はそのまま次の大戦にまでもつれ込みそうな勢いだ。
この80年の間に日本はジリジリと国際的な地位を下げて曾祖父さんの世代が望み創り上げた「子供達が当たり前に腹一杯食べて毎日笑っていられる世界」はとうの昔に失われてしまった。街には移民や旅行者が溢れて治安は悪くなる一方で、楽して儲けることこそが美徳で汗水垂らして働くのは勘弁で他人からの承認が全ての世界が回っている。これでは未来のために戦った世界中の英霊に誰ひとり顔向けができないのではないか?どうしたら個人の小さな力で戦争のない世界を実現できるのか?そんな思いが映画館を出て夜の寒さに震える私の胸に去来した。
みたいな文章が書きたくなる映画です。日本の湿っぽい反戦映画をこんな詩的に仕上げられる英国人のセンスに脱帽しました。まあ敗戦国で自虐史観しか植え付けない教育受けてたらこれは作れないよね。さすが戦争に負けたことのない国だわ。
マイケル・ケインとグレンダ・ジャクソンの老夫婦がお互いをずっと愛し続ける姿は、倦怠期を過ぎてパートナーに興味すらない人々には眩しすぎるかもしれないから夫婦やカップルで行くのはお勧めできないかもしれないと思ったりしましたね。
それでは次回をお楽しみに!
あと選挙に行ってから映画見よう!
ハバナイスムービー!🎞️