「【”大脱走。そして高齢の英国退役軍人は2度目のノルマンディへ”任務”を果たす”ために一人旅立った。”今作は、名優マイケル・ケインの最後の雄姿を見るに値する逸品であると、私は思います。】」2度目のはなればなれ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”大脱走。そして高齢の英国退役軍人は2度目のノルマンディへ”任務”を果たす”ために一人旅立った。”今作は、名優マイケル・ケインの最後の雄姿を見るに値する逸品であると、私は思います。】
ー 2014年6月6日、ノルマンディで行われたDデイ70年記念式典に参加するため、89歳の英国退役軍人が、老人ホームを抜け出しフェリーで現地に行き、マスコミに”大脱走”と騒がれた実話の映画化である。
そして、物語はほぼその通りに描かれる。
但し、夫バーナードを演じたマイケル・ケインと妻レネを演じたグレンダ・ジャクソン(公開前に死去。この作品が遺作となった。だが、この作品が遺作であれば女優冥利に尽きるのではないかな。合掌。)の名演で。ー
■バーナードは体調の優れないレイを気遣い、一度は式典参加を諦めるが、妻の強い勧めで70年前の激戦地”ソード・ビーチ”へ老人ホームの職員たちに何も言わずに、こっそり旅立つ。
そして、Dデイの日に、同じ船に乗っていたダグラス・ベネットに頼まれた約束を果たしに行くのである。
◆感想
・前半はコミカルな感じで物語は進む。特に全編を通じ妻レネを演じたグレンダ・ジャクソンの明るさが、作品を和ませる。
・この作品は、バーナードが”ソード・ビーチ”に立つ冒頭のシーンから、随所で第二次世界大戦の潮流を連合国側に変えた激戦シーンを絡めつつ、現在のシーンを主に描かれる。
■心に残ったシーン幾つか
1.バーナードが殆ど何も持たずに会場に着いた時に出会ったイギリス空軍だったアーサーが、親切にも自分のホテルに彼を誘い、彼と往時の話をするうちに息が合い”自分はアルコール中毒だ”と告げるシーン。PDSDに苦しむ様は描かれないが・・。
2.”ソード・ビーチ”沿いに立つレストランで、バーナード達米英兵が食事を摂る中、近くにいた仲間だった兵を偲ぶ旧ドイツ兵達のグループにバーナードが近づき、米英、旧ドイツ兵達が同じテーブルを囲み、言葉は通じないが、バーナードが差し出した手を一人の旧ドイツ兵の男がその上に手を置き、二人で相手の眼をしっかりと見ながら、固く手を重ね合うシーンは、沁みたなあ。
そして、バーナードとイギリス空軍だった男は自分達のオバマ大統領とエリザベス女王の直ぐ後ろの席を、彼らに譲るのである。
ー 時は、憎しみを同じ苦難を共にした者たちを、友として結ぶのである。白眉のシーンだと思う。涙が出たよ。ー
3.更に、バーナードは式典には出ずに、ノルマンディの戦いで亡くなった兵たちが眠る墓地を訪れ、バーナードが同じ舟に乗っていたダグラス・ベネットに”突撃しろ!”と言った際に彼から受け取っていた、彼の恋人の写真と手紙を入れた金属の小さな箱を持参し、深く詫びるのである。
このシーンも実に沁みた。
4.アフガン戦争で地雷で足を失っていた黒人青年に、バーナードが掛ける言葉も良かったな。
<そして、”任務”を果たした”バーナードは英国に戻るのだが、熱狂的に迎えられる中、バーナードは妻レネと、手を握りながら夕日が沈む光景を静かに見ているのである。
その後に流れたテロップも、心に残る。本当に二人は2度だけ離れたけれども、それ以外はずっと一緒に暮らし行く事が分かるからである。
今作は、現況の世界情勢の中、大切なメッセージが描かれており、又、名優マイケル・ケインの最後の雄姿を見るに値する逸品であると、私は思います。>
共感ありがとうございます。
今年は何も言わず旅立つ映画が多かった印象でしたが、今作は明らかに戦争が家族に与えた後遺症の映画だったと思います。
マイケルケイン、英国の濃厚な香りでしたね。