「怒りの権化で夢を諦めるな!」ポライト・ソサエティ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
怒りの権化で夢を諦めるな!
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』や『モンキーマン』など、アジアン・テイストの斬新アクションに近年気を吐く作品が続く。
本作もそのジャンルだが、テイストがだいぶ違う。ぶっ飛んだ設定でもなければKO級アクションでもない。
青春×ガールズ・パワー×カンフー×ボリウッド(的要素)で、ゴキゲンなエンターテイメント!
パキスタン系イギリス人のムスリム家庭に生まれ、家族とロンドンで暮らす高校生のリア。
将来の夢はスタントウーマン。憧れの存在のスタントウーマン目指し、空手やカンフーの訓練に勤しむ。
が、そんな彼女を周囲は理解してくれない。同級生にはからかわれ、教師からは問題児扱い。両親からも、バカげた夢見てるんじゃない。
唯一の理解者は、姉のリーナ。姉は画家志望。
画家とスタントウーマン。姉妹で自立した夢を見ていたが…。
ある時リーナは、富豪のプレイボーイ息子サリムと出会い恋に落ちる。彼との結婚を決め、画家の夢を諦め、海外に移住するという。
リアは大ショック! そこでリアは…
姉に結婚を諦めさせる。
サリムの悪い点を見つけようと。どうも彼の一族はきな臭い…。
親友二人に協力して貰って、サリムのパソコンをハッキング。さらには邸宅に侵入…って、それ犯罪!
親友もやり過ぎのリアに付いていけず、喧嘩。
勿論先方にバレる。家族にもバレる。姉にも…。
姉と大喧嘩。時々妹の訓練に付き合ってるからか、姉もなかなかアクションが出来る。家の2階で姉vs妹のカンフーバトル! お父さんお母さん、のほほんとしてないで。
これで何も無かったらただの困ったちゃん。
が、リアの直感は当たっていた…。
サリムの母ラヒーラ。
ママ友サークルのボス的存在で、地位も名声もある富豪のご婦人。
息子を溺愛。息子の為に良き結婚相手を見つけようとするだけならまだ分かるが、とんでもねー!事を企んでいた。
謝罪で邸宅を訪れるリア。ラヒーラは一見許し、脱毛エステを勧めるが…、
強引にワックスを剥がすプチ拷問。本性を現すラヒーラ。
堪らずリアは逃げ出し、地下へ迷う。そこは、何かのラボ…?
リアたちも招かれたパーティーに出席した若い女性たちの身体が密かにスキャンされ、データが保存。特に調べられていたのは、子宮や生殖能力。
何を調べているのか…?
やがて判明。探していたのは“良き結婚相手”ではなく、“母体”。
最も適した母体の子宮で、ある遺伝子を育て、産ませる。
ラヒーラのクローン…! 息子と共謀して、自分のクローンをリーナに産ませようとしていた…!
もはやイカれてる怖母。セクシーイケメンだと思ったサリムもただのマザコン。
イカれた母子にイカれた陰謀。これなられっきとした理由。
姉が危うい。
お姉ちゃんを救え!
その事実を家族に訴えるが、信じてくれない。
結婚式。大勢の出席者の前でイカれた陰謀を暴露するも、やはり信じてくれない。
またあのお騒がせ問題児が…。
このままでは姉は海外に連れて行かれ、イカれた母子にいいようにされてしまう。
事前に結婚式に忍び込む。協力を乞うたのは、やっぱり親友二人。あれ以来喧嘩したままだったけど、仲直り。
ちょっと抜けているリア、ノリノリな親友二人、さらにはリアをからかっていたいじめっこがナイスヘルプ! 出たとこ勝負の救出作戦!
シリアスにやったら母子も陰謀もサスペンス/ホラー級。
女性の幸せは結婚。夢など夢。
家父長制ならぬ家母長制。民族や宗教の問題点も。
自分には才能が無いととっくに夢を諦めていたリーナ。喧嘩時、あんたなんかスタントウーマンになれる訳ない!…とキツい一言。これはこちらも耳が痛かった…。
シリアスなテーマや問題を忍ばせつつも、作品は基本ライト。話もシンプルで、クセのある『エブリシング~』や『モンキーマン』よりずっと見易い。
リア役、プリヤ・カンサラのコケティッシュな魅力。
親友、家族、姉らとの掛け合い。
校内でいじめっこや邸宅でラヒーラの部下とのバトル、ラスボスのラヒーラとのバトルもよくよく考えたら滑稽おバカ設定だが、それも踏まえ日常バトルアクションとして楽しめる…?
スタントウーマン目指し、日々訓練し、身体能力は高いが、まだまだ半人前。ラヒーラどころかいじめっこにも敗北。
そんな彼女の成長、奮闘。
出来なかった空中後ろ回し蹴りを、最後の最後にお見舞い!
何より、カラフルな民族衣裳姿で華麗に闘うニュー・アクション・ヒロイン誕生こそ、目の保養であり掘り出し物。
勿論ハッピーエンド。
姉を救出し、共にイカれ母子を撃退。って言うか、お姉ちゃんもスタントの道に進んだら…?
姉とも仲直り。
憧れの存在から嬉しい連絡。
怒りの権化を滾らせ、夢を諦めるな!