ヒューマン・ポジションのレビュー・感想・評価
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社会の中に存在価値を求めるよりも、座り心地の良い椅子を探す方が人生にとっては有意義
2024.10.29 字幕 アップリンク京都
2021年のノルウェー映画(78分、G)
病気療養から復帰した新聞記者の居場所探しを描くヒューマンドラマ
監督&脚本はアンダース・エンブレム
原題の『A Human Position』は、直訳すると「人の位置」という意味
物語の舞台は、ノルウェーの港町オーレスン
病気療養から復帰したアスタ(アマリエ・イブセン・ジェンセン)は、久々に職場に行くものの、自分がいなくても何も変わらないことに少しばかりショックを受けていた
ルームメイトのライヴ(マリア・アグマロ)は普段と変わらず、アンティークチェアーのメンテナンスや曲作りに励んでいた
アスタは、仕事の勘を取り戻そうと、カメラマンのゲイル(Lars Halvor Andreassen)と一緒にいろんな取材をして回る
デモの現場などに出向いて取材をしたりする中で、10年間ノルウェーで働いていた男が会社の倒産とともに不法滞在として強制送還されたというニュースを耳にした
そこでアスタは、彼がどのようにして強制送還に至ったのかを知るために、彼が働いていた会社、市役所、難民受付の事務所などを取材することになったのである
映画は、淡々とした長回しのショットが延々と続く感じで、次のシーンになかなか進まない
セリフもかなり少なめで、情報は画面から感じ取ってねという感じで、アスタが何の病気だったのかもはっきりとしない
下腹部の手術痕から察するに子宮筋腫の全摘のようなものだと思うが、それにどのような意味があるのかも想像してくださいという感じになっていた
映画では、取材先でインタビューされる人の写真を撮るシーンがあるのだが、そこで撮られる人はなぜか取材の内容とそぐわないポーズを決め込んだりする
その都度、アスタがカメラマに注意したりするのだが、このあたりの意図もイマイチわからない
おそらくは、アスタの仕事観を示していて、取材相手も当事者ではないので深くは考えていないというもので、お国柄が現れているのかもしれない
とは言え、取材側には明確な意図があっても、取材中はそれを前面には出さないので、それゆえに無関係な人からすれば「取材をされた特別性」が感情を動かしていると言えるのかもしれない
映画のタイトルは「人間の位置」という意味だが、言い換えれば「自分の居場所」ということになるのだと思う
それが社会的地位のことのようにも思えるが、実際には「感覚的にしっくりする場所」というところなのだと思う
ラストでは、強制送還された男が使用していた椅子に二人で収まる様子が描かれていて、それがタイトルを如実に示しているように思える
いずれにせよ、何かしらの出来事で心に穴が空いた女性を描いていて、その穴に何かしらが浸透していく様子を切り取っていたのだと思う
大袈裟に自分の存在価値は何かを社会の中で探そうとしても無意味で、自分が誰かの穴にスッポリと入れればそれで良いだろう
ライヴが贈った歌にもそれが示されていて、感情の赴くままに生きていくことで、心が満たされるということを描きたかったのかな、と感じた
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