劇場公開日 2024年12月27日

「「ふさわしい」のが嫌味にならないと良いが。」私にふさわしいホテル やまちょうさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「ふさわしい」のが嫌味にならないと良いが。

2024年12月31日
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鑑賞方法:映画館

私はスパイス系のカレーライスが好きでして、神保町明大通り沿いの「エチオピア」というカレー専門店によく通っていました。その道すがらの看板から「山の上ホテル」ってのが有るってことはざっくりと知っていたんですが、川端康成や三島由紀夫ら有名な昭和の文豪が執筆の際に利用された由緒ある高級ホテルであるってのはこの映画きっかけに初めて知りました。さらに調べますと最近、コロナから続く経営難からかホテル部門は休業されて土地建物が歴史的建造物として隣接する明治大学が買い取られたとのこと。取り壊しなど、最悪な状況は避けられたということでしょうか。

余談はさておき、今作はなんといっても主演がのんさんとのことで、あのピュアな笑顔にまた会える・・・という期待を込めて年末ギリギリの映画館に足を運びました。ちなみに原作は未読です。

のんさん演じる新人作家が新人文学賞を獲って以降、鳴かず飛ばずで単行本さえ出せないのは、文壇のある大御所作家が自身の受賞作を酷評したからだ・・・との予測(逆恨み)を元に、あの手この手で閉鎖的、権威的な文壇で成り上がってやろうと奮闘する物語です。

新人作家は大学の演劇サークルに居た経験を活かし、大御所作家にギャフンと言わせるべく、ホテルのメイドに化けて執筆活動を妨害するなどやりたい放題・・・って最初から稚拙で何の捻りもない犯罪行為を主人公にさせる脚本って、いかがなものでしょうか。

あと、のんさんに暴言吐かせたり、わざと汚い言葉使わせることをコメディ要素として脚本に加えているみたいですが、文学作家ならではの「表面的には綺麗だけど、非常に棘があったり皮肉ったりする表現」を何故、使わせなかったのでしょうか。そもそも日本語の語彙不足な稚拙な原作であったら仕方ないのだけど、彼女の短絡的な暴言を聞くたびに不快な気持ちになりました。せっかくののんさんのピュアでイノセントな笑顔が逆効果で憎たらしさ倍増(笑)。

ストーリーも自分が成り上がる為に、他人の足を引っ張ってやろう、自分は援助されて当たり前だ、男はこれといって能力ないのに権威に縋ってすべて敵だ・・・何か最近sns上で声ばかりデカいエセフェミみたいな思想、論調で観ていて疲れました。

そもそも作家が目指すべきはどこぞの権威的な文学賞をとることじゃなくて、読者に真摯に向き合って彼らの期待に応え、時に読者の想像を遥かに上回る作品を作ることじゃないでしょうか。最後まで見ましたが、全くこのシンプルな結論に至っておらず作家の主観的なバイアスの掛かった思想ばかりで辟易としました。

時代が移り変わり冒頭に書いた高級ホテルの様な末路を、この作家さんが辿っていないことを祈念いたします。

「ふさわしい」ってのが嫌味になっちゃったら悲惨なので。

やまちょう
ゆり。さんのコメント
2025年1月6日

コメントありがとうございました。おっしゃる通り、のんさんが演じるなら、ピュアな部分が欲しいですね。まず新人作家の成長物語があって、そこに文学賞のごたごたが絡むみたいな方がベタかもしれないけど私は好みです。作家だから、自意識過剰で感情の乱高下が激しく、そこをコメディにしてくれたらなと思います。

ゆり。