「双六で振り出しに戻ったみたいだった」グランメゾン・パリ ゆり。さんの映画レビュー(感想・評価)
双六で振り出しに戻ったみたいだった
映画の公開前にその内容に繋がるスペシャルドラマを放送するというやり方は気に食わないのですが、SPドラマが面白かったので鑑賞しました。
個人的にはがっかりですが、ドラマを観ていない方は楽しめると思います。
映画はこれまでの経緯を入れる代わりに、尾花を昔の自分勝手で未熟なキャラクターにして、本作であらためて人間的に成長する姿を見せています。
でもドラマを観てきた人間にとっては、これまで多くの困難に立ち向かいながら、時間をかけて築き上げてきた信頼関係も信用もぶち壊し、スタート地点に戻ってしまったようです。
倫子さん、相沢さん、京野さんと協力する姿は良いなあと思うんですが、借金取り、暴力事件、警察沙汰は飽きました。
映像は、料理は美しいのですが、導入部の無意味な早送りやスローモーションの多用など、テレビでは気にならなくても映画だとセンス悪く感じました。
料理の方は、食べたらきっと美味しいのでしょうが、高級店に縁のない私には、サラダとかパイ包みの断面とかは美しいか?と思ったし、奇をてらい過ぎていて味が想像できず、見た目はドラマの方が美味しそうに見えました。デザートも、東京店の萌絵さんのセンスの方が好きです。
料理のテーマは、「料理に国境はない」だったんでしょうか。素人には一貫性があるのかどうかは分かりません。あと、リンダさんが「プチトマト」と呼んでいたものは、正しくはミニトマトです。プチトマトはかつて日本で売られていたミニトマトの一品種で、現在は出回っていないようです。
ドラマ版視聴者にとっては、出だしの設定は疑問ですよね。
グランメゾン・パリはミシュラン二つ星獲得して何年か経っているので、その間にも三つ星を目指し続けた中でぶつかった壁が尾花を追い詰めていたんでしょうね…。
人種差別が無くなる事は難しいのでしょうし、実際あるかもしれませんが、それをこのエンタメ映画のテーマにした事が私にはつまらなかったです。今は日本人がコンテストで賞を取っていますし。二つ星のレストランへの敬意も無かったです。
評判のお寿司屋さんの職人に西洋人が混じっていても腕前を疑いはしませんが、全員外国人だったら、私もたぶん避けますね。
そうなんですね。
フレンチの世界では、もうアジアン差別等はあまりないんですか。進んでますね。
日本でヨーロッパ人たちが寿司を握ってたら、なんとなく避けたい気がしてしまいます。
Mさん、共感ありがとうございます。グランメゾンはドラマでも様々なトラブルを乗り越えて一歩一歩成長するのが爽快な物語です。既に二つ星を取っている(しかも2度目)レストランが今更良い食材を売ってもらえないなんて信じがたい話で、他に色々な要素を入れられるのになあと残念でした。
料理についても、映像は美しいけどあまり美味しそうに感じなかったのは、最高の食材だという説明ばかりで、メニュー作りの苦労や料理法は詳しくやらなかったからかなと思いました。尾花の「アレンジに逃げるな」というセリフには疑問でした。逃げるというのは手抜きやコストカットを誤魔化すためのアレンジのことで、手に入る食材で美味しくする工夫をしていた相沢さんが可哀そうです。
料理の手際は良かったです。そこは見ごたえありました。