「35年ぶり」ビートルジュース ビートルジュース 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
35年ぶり
ビバリーヒルズコップは(4つ目の)続編までに30年かかったがビートルジュースは35年かかった。
3作目の可能性について聞かれたバートン監督は「これつくるのに35年かかってるんだから計算したらつぎは僕も100歳超えてることになるわけで科学が進歩するにしたって無理ゲーだわ」(意訳)と言った、とのこと。
来歴によるとビートルジュースは1988年初作のあとすぐに続編の告知がなされ、恋するビートルジュースとか、ビートルジュース・ゴーズ・ハワイとか、ビートルジュース・ゴーズ・ウェストとか、ビートルジュース・アンド・ザ・ホーンテッド・マンションとか、じっさい脚本下案が幾つか挙がったという。
ウィノナライダーは2013年のインタビューで「リディアディーツのキャラがすきだし、わたしにとっても大きな存在だった。27年後に彼女が何してんのか興味あるわ」と話して続編の製作や復帰への意欲を示している。
が、ビートルジュースは俎上にあらわれては消える回路をたどって35年、紆余曲折を経てブラッドピットとワーナーの共同製作によって2024年にやっと完成をみた。
ピットの年譜をみると1988年はかれの初主演映画であるリック(The Dark Side of the Sun)が公開された年だった。20代半ばのピットは35年後にビートルジュースのプロデューサーをやるなんて夢にも思わなかっただろう。
一作目から35年経ってはいるが映画製作に35年かかったわけではないし35年の重みが蓄積されているというたぐいの映画でもない。
続編といえば続編だろうが、前作の予習が必要な人たち、あるいは前作を忘れている人たち、だらけであろうことを想定して、前作を知らなくても問題がないようにつくられている。
近年の久しぶりな続編、たとえばゴーストバスターズやビバリーヒルズコップやトップガンやマトリックスなどようにリユニオン(同窓会)をやって旧世代に懐かしさを提供しながら、最前線女優のオルテガを配して、新世代へも訴求をはかっている。
オルテガは「ウェンズデー風に演じて」と言われたかのようにウェンズデーだったが、たんにオルテガのウェンズデーが脳にへばりついているだけかもしれない。
あちらのメディアでZ世代の絶叫クイーンと呼ばれているそうだが一般の役回りでも光る人で本作でも娘の葛藤を巧く演じた。
マイケルキートンのしぶとさも感慨深かった。くせっぽいし、器用な演技スタイルだとは思わないのに、これだけ延命し、これだけあっちこっちに登用されている。率直にすげえと思う。年齢を調べたら73歳だった。
リユニオンなのでほかの年齢も調べてみた。
ウィノナライダーは53歳、キャサリンオハラは70歳、モニカベルッチは60歳、ウィレムデフォーは69歳、ダニーデヴィートは79歳。ちなみにオルテガはまだ22歳だがすでにフォーブスアンダー30(30歳以下の億万長者リスト)の常連だそうだ。(年齢はすべて2024年時)
ティムバートンという監督はチョコレート工場やシザーハンズや不思議の国のアリスなどのように一見子供向けに思えるファンタジーネタを大人向けに換骨奪胎する天才だと思う。
ビックフィッシュを「なんかつかみ所のない不思議な話だなあ」と思いながら見ていたのに全体象は遺訓に昇華されていて、とても感動したのを覚えている。(わたしたちの身の周りにはエドワード・ブルームのようにいつもふざけていてぜったいにシリアスにならないタイプの人間がいるものだと思う。)
そんな転化を可能にするマジカルな監督だが、この映画はライトコメディでもっていく感じだった。そうはいっても重みのあるライトコメディで、大人の鑑賞にたえる職人芸のエンタメだった。
なにしろ台詞がうまい。日本のクソ映画群を見てからハリウッド映画を見たとき、とくにそれを感じる。ハリウッド映画は日本映画と違って、こっちが小っ恥ずかしくなっちまう──ということがぜったいにない。
個人的にいちばんの見どころだったのはバラバラ遺体のベルッチがじぶんの身体を組み立ててステープルガンでつなぎあわせていくシーン。視覚効果も完全でグロテスクな景色なのにベルッチが演じると艶めかしいんだわ。
imdb6.8、RottenTomatoes76%と79%。