悪い夏のレビュー・感想・評価
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これは河合優実を観るための作品である
染井為人の原作に基づく犯罪サスペンスであり、生活保護の不正受給という社会問題(もしくはセーフティネットたる生活保護の仕組み自体の課題)をテーマにした社会派映画でもある。
クライマックスの暴力シーンも含めて筋運びが実にしっかりしており、男優3名(北村匠海、窪田正孝、竹原ピストル)の熱演もあって見応えがある作品となっている。
でも、でも、私はこれは河合優実の映画であると言い切ってしまう。つまり不幸のオーラを発している彼女のむくれ顔を観るためのいわば三部作(「あんのこと」「ナミビアの砂漠」そして本作)の最終章であると。この作品群のあいだじゅうを通して、彼女は肉体面、経済面、精神面のすべてから搾取される者を表現した。搾取しようとする相手は、男どもであったり、社会であったり、制度であったりするわけだが、一方で彼女は搾取する側に加担する者でもあり続けた。この作品がその構造を見事に表している。シングルマザーの彼女は不正受給に手を染めることによって、真にそれを必要とする人達からリソースを搾取しようとしたのである。そこは木南晴夏の演じる生活保護申請者のエピソードが補助線として引かれておりとても明確である。ちなみに申請窓口にきた古川母子に対して佐々木が浴びせる罵倒は、ネットにおいて生活保護受給者や受給希望者たちに浴びせられる罵詈雑言とほとんど同じ内容であることを付け加える。
話はそれたが河合優実は、搾取される女性の姿を演じつつ「自分が自分でよくわからないから」といったあいまいな姿勢を取ることによって結果として搾取する側に加担してしまう女性の姿を無意識に演じている。
そこが、この極めて現代的な女優の立ち位置ということになるのだろうが、はっきり言って、むくれ顔にも見飽きてきた。そろそろ違った表現も見せてほしいと思う。多分、彼女がまだやっていないのは女性同士の連携といった領域だと思う。孤独を演じるのは得意だけどひょっとしたら連携を演ずるのは不得手なのかもしれないけど。
おまけ。本作では河合のむくれ顔と北村の三白眼と顔芸が見事に呼応して、女も大変だけど男も大変であるなあとしみじみ思わせた。そこが面白かった。
心温まるホームドラマに感動(途中までは)
現実の生活保護不正受給率は0.4%程度。
でも、この映画を観ていると不正受給する人だらけで、ますます生活保護への差別が進みそう。
ただ一方で、本当に生活保護を必要としている人をまあまあの時間をかけて描いていたのは、フェアな作りに感じた。
終盤、生活保護を申請しにきた女性に対し、市役所の担当者が罵声を浴びせる場面。
このとき担当者の言ってくることが、生活保護に関するニュースが報じられたときの、ヤフコメでよく目にするような意見と酷似。
群馬県桐生市で生活保護支給者への恫喝がニュースになったことがあったが、この場面みたいな感じだったのかと思うと、居た堪れない気持ちになった。
生活保護に関しては、まず本当に必要な人に届くことを最優先に考え、その後に不正かどうかを調べればよいだけだと思うのだが…
0.3%を0%に近づけることを最優先に考えてしまっている人たちにとっては、この映画のこの女性の顛末を観ても「まあしょうがないよね」って感じなのかな?
この映画で個人的に心に残った場面は、中盤の北村匠海演じる生活福祉課の職員・佐々木と河合優実演じるシングルマザー・林野のホームドラマパート。
生活に困窮する林野は育児放棄気味。
その様子を見かねた心優しき佐々木が、「子供に罪はない」と言わんばかりに、林野の娘に献身的に接するようになり、仕事と関係ない日にも娘に会いにいくようになる。
表情の暗かった娘は徐々に佐々木に心を開くようになり、明るさを取り戻していく。
今まで見たことのない娘の喜ぶ姿を見て、荒んだ生活を送っていた林野にも、少しずつ変化が現れ始める。
前半で世の中の腐りっぷりを散々見せられた後なだけに、この「世の中捨てたもんじゃない」な展開に、かなり感極まってしまった。
個人的には「このまま三人は幸せに暮らしました」なエンドでも満足なぐらい、この場面が気に入ってしまった。
「三人にこれ以上不幸なことが起きませんように!」と願わずにはいられなかった。
そんなに城定秀夫監督は甘くないわけではあるが…
この映画に出てくる悪人には2種類あると思った。
「根っからの悪人」と「悪人になる人」。
「根っからの悪人」はともかく、生活苦から悪事に手を染めてしまう人の場合、自分は甘々人間なので、そういう人に対しては同情の気持ちが強くなってしまう。
生活に余裕のある人が増えた方が犯罪は減ると思うのだが、現実社会では格差はどんどん広がり、物価もガンガン上昇し、むしろ逆行しているように感じる。
社会の中ではそれを歓迎している人が多いように感じるが、個人的にはどうかと思っている。
そういう意味でも生活保護って大事だと思った。
林野が元々働いていた風俗店の場面が、今年公開の『ANOLA アノーラ』に出てくるストリップ劇場の日本版に感じた。
『ANOLA アノーラ』と比べ、オシャレさを減らして、生々しさをアップした感じ。
この中にいる人間の中で一番金銭的に裕福なのが誰かを考えたとき、社会構造の理不尽さに気分が悪くなった。
終盤は今泉力哉監督の映画みたいと思った。
役者たちの熱演はものすごい迫力だったが、ドタバタコメディの印象が強く、社会派な感じは減少してしまった気がした。
おっぱいがいっぱい(名もなきパイのうた)
2025年映画館鑑賞32作品目
3月31日(月)イオンシネマ石巻
ハッピーマンデー1100円
原作は『正体』の染井為人
監督は『女子高生に殺されたい』『ビリーバーズ』『夜、鳥たちが啼く』『銀平町シネマブルース』『嗤う蟲』の城定秀夫
脚本は『聖の青春』『愚行録』『ハード・コア』『マイ・ブロークン・マリコ』『ある男』の向井康介
舞台は架空
船岡市
ロケ地は佐野市と飯能市
生活保護を絡めたサスペンス
ダメ人間しか出ない映画らしい
エログロナンセンス
真夏
エアコンもない貧困
汗ばむエロティシズム
河合優実のはじめのメイクがドギツい
極悪同盟の下っ端みたいな感じ
しかし守と親密になりはじめた頃からなぜか普通になる
窪田正孝はこういう役が一番似合う
無口なマッチョとか童貞っぽい変人よりも
伊藤万理華は下からイライラしながら少し抑えめに理屈っぽいことを言うキャラがよく似合う
箭内夢菜は役作りのためか激太り
野呂佳代かと思ったら違った
『シャイロックの子どもたち』では性悪な銀行員を演じていた木南晴夏は今回も怪演
貧困に喘ぐ母子家庭の疲れ果てた主婦を見事に演じ切った
万引きで捕まり喚き散らすシーンがないのはとても残念
この作品を鑑賞し自民党ガーと食ってかかるヤフコメ民の政治豚みたいな書き込みはできない
映画のレビューに乗じて政治談義に花を咲かせるのは本当は大の苦手だ
全然楽しくない
アパートに主要なメンバーが揃った時これはコメディーかもしれないと思った
揃いも揃った顔と顔
東映オールスター時代劇のクライマックスのよう
まあそれほど凄くはないけど
チャップリンの名言「人生はクローズアップで見れば悲劇だがロングショットで見れば喜劇だ」と思い出した
それにしてもなぜ東京にはホームレスがいるのか
なぜあんなに大量の空き缶を集めて自転車で運ぶのか
仙台や盛岡では見かけたことがない
あとまたしても吉岡睦夫
『早乙女カナコの場合は』『少年と犬』そして今回
3回連続で吉岡睦夫
配役
優実に嵌められる生活保護のケースワーカーの佐々木守に北村匠海
山田に話を持ちかけられ金本の指示で守を嵌めるシングルマザーの河合優実に林野愛美
愛美の娘でお絵描きが大好きな林野美空に佐藤恋和
守の同僚で高野に対する異常な執着と異常な正義感を持つ宮田有子に伊藤万理華
守の上司の嶺本に菅原大吉
妻子を持ちながら後輩の有子と関係を持ち担当している愛美とも肉体関係を続ける守の先輩の高野洋司に毎熊克哉
夫が役場を辞めた途端に離婚する高野の妻に美玖空
高野の娘に出口結葵
高野の息子に太田恵晴
セクキャバの経営者で犯罪の計画者の金本龍也に窪田正孝
金本の愛人でぽっちゃりの莉華に箭内夢菜
ドラッグの売人で生活保護を受けている山田吉男に竹原ピストル
万引きに手を染める貧しい母子家庭の母親の古川佳澄に木南晴夏
佳澄の息子に古川勇太に斉藤拓弥
ホームレスにチャンス大城
佳澄の友人に山本裕子
工場の責任者にカトウシンスケ
刑事に吉岡睦雄
刑事の立花に岩男海史
コンビニの店員に山下永玖
セクキャバのマネージャーの平岡亮
セクキャバの従業員に足立英
スーパーの客に金沢涼恵
コスプレ嬢に渡森さや
コスプレ嬢に松原怜香
市役所の職員に昼間由輝
河合優実のトリセツ。
生活保護をめぐる犯罪映画。城定秀夫が監督、向井康介が脚本を書いた。底辺…というか怠けたワルがたくさん出てくるんだが、巻き込まれた主人公の無力ぶりが腹が立つ。貧困から抜けられない若い女を演じると、現役最高のパフォーマンスを発揮する河合優実にはやっぱり注目。ただし、城定映画ではここまでしかやらんか、というのが私は残念です。
それ以外の配役はすこぶる面白かった。
キャストとスタッフが揃った秀作
まずキャストがいい。
北村匠海さん、河合優実さん、窪田正孝さん、毎熊克哉さん、伊藤万理華さんなど、誰か一人でも出ていれば映画を見たくなる若手キャストが揃ってます。
染井為人さん作品の映画は個人的に当たり外れがあるのですが、本作はダントツに当たり。良くも悪くも城定監督らしいタッチで、独特の猥雑さを匂わせながら、絶妙なドライさ加減で物語が展開していきます。
クライマックスはやりすぎな気もしますが、そこも城定さんらしく、さらっとしたエピローグに繋げて終幕します。
キャストはすべてよかったのですが、窪田正孝さんは圧巻でした。爬虫類っぽいお顔は苦手なのですが、その存在感は認めざるを得ません。
素晴らしい作品を拝見しました。
変貌っぷり
勢いと映画的華
精神的に追いつめられるところは他人事と片付けられない
原作は未読。
生活保護ビジネスを絡めた話でクズとワルばかりが出てくるってことになると観に行かずにはいられない。
河合優実と竹原ピストルの底辺感がとてもいい感じ。中盤からやさぐれていく北村匠海の演技も見どころだ。生活保護を悪用して儲けている悪い奴らがいることは知っている。でもその受給者も犠牲者と言える。そんなことを強く感じさせる展開だった。
後半の修羅場を迎えてからは雰囲気がサスペンスよりにシフトしていくところもいい。エンドロールでそういえば城定秀夫監督だったことを思い出して、あの修羅場の盛り上がりに納得がいった。あんなシーンを撮るのが本当にうまいな。
いろんな苦境に出くわすと人間っていろんな側面が浮かび上がってくる。精神的に追い詰められたときの人間のイカれた感じが真に迫ってた。こんな話は大好きなのだが、他人事と片付けられないところがまた怖い。これからの彼らに穏やかな日々が待っていることを祈ってしまった。それくらいにあの世界観にハマっていた自分に気づいた。
かなり面白い
いきなりの三文芝居?
生活保護の不正受給者、受給者を食い物にするワル、受給者の弱みに付け込むケースワーカー、そして、本当に生活保護を必要とする困窮者が入り乱れる社会派ドラマです。
冒頭から抜群の切れ味・緊張感が途切れない展開で、「さすが城定秀夫監督」と感心して見入っていたのですが、最後の最後のドタバタ三文芝居で「えっ、ここ笑っていいの?」と急に放ったらかされた気分になりました。劇画的展開もコメディ転調もありだけど、本作ではその繋ぎが余りに唐突過ぎました。俳優さん達も魅力発揮のいい作品だっただけに残念無念。
そして、これは僕自身も迷う点。この映画って、本当に生活に困窮し保護を受けようとする人達への偏見を広める事にはならないだろうか。或いは、保護申請を躊躇させる要因にならないだろうか。生活保護の不正受給者は全体の0.3~0.4%と言われています。逆に、受給資格がありながら適正に受けられない人々が多く居ると報じられています。不正受給をクローズ・アップした方が物語を作り易いのだろうと思いますが、本当にそれでいいのかな。と、ちょっと気になるのでした。
本当の恋
2025年。城定秀夫監督。生活保護を担当する公務員の男は、先輩が対象者の若い女性を脅して性的な関係を迫っている噂を聞きつけて、上司と共に調べ始める。先輩に非を認めさせて辞職させた後、その対象者の幼い子供の相手をしているうちに関係を持つようになるが、実はその背後には生活保護をめぐる陰謀が張り巡らされていて、という話。
いいように扱われてしまう若くて貧しい女性と、いいように食い物にしようとする悪い奴ら、そして人生に何も期待していない公務員、という登場人物では本当の恋など起きようがないはずなのに、本当の恋が始まってしまうというのがミソ。逆にいえば、罠にはめられて土壇場に追い込まれなければ、恋など生まれないし、たとえ生まれたとして気づくことなどないのだ。自然に生きて小さな欲望で満足している限り、恋とは無縁の人生を生きるだけなのだ。この映画はそのような深遠な真実が刻印されているので、最後の最後に現れるその姿を目に焼き付けなければならない。それは男の優しさについ企みを忘れてつぶやく「どこにも行かないでね」という消え入るような声だったり、自暴自棄となって心中を図る男に対して「いいよ死のう」と平然と答える声だったり、とてもかなわない相手に嵐の中で突っ込んでいって、包丁で足を刺される姿だったりするだろう。見逃すな。
誰にでも落ちてしまう可能性はある
見終わった後「悪い人とは関わらない人生を歩もう」「真面目に生きよう」と強く誓った。
生活保護問題ってどうしても他人事に感じてしまうけど、だからといって私には何もできないのでしっかり働いて税金を納めて、それが本当に困ってる人に正しく使われればいいなと思った。
金本みたいな人に関わったことないはずなのに「こういう怖い人いるよね」って思わせるくらい窪田正孝の演技がすごかった。女を見下してそうで梨華のことも大切に思ってなさそうだったのに、刺された時ちゃんと心配してたのが意外だった。
冒頭の佐々木と山田のシーン。山田が「飯はコンビニ、服はユニクロ」って言ってる時点で本物の貧困層じゃないんですよね。本物の貧困層からしたらコンビニ飯もユニクロ服も高いんですよね〜。
佐々木が女体に興味なさそうな感じだったから、実はロリコンで愛美の娘が目的なのか?とも思ったけど本当にただの童貞で肩透かし食らった。登場人物全員悪というならもう一癖欲しかったかも。あんな裏切りされたら闇落ちするのも当然の結果だしな〜という感じ。まあ佐々木に1ミリも非がなかっとは言えないですよね。最初の時点で子供にクレヨンを与えるのもアウトでは?他の受給者と平等じゃないし。来年も祝おうって言うならその時点でプロポーズでもして結婚しちゃえばあの映像流されても許されたのに。
愛美も梨華も夫に逃げられてたけど、本当こういうの罰してほしい。子供作ったら養育費払わないと探し出されて罪に問われる社会になってほしい、子供のためにも。佳澄みたいに夫が死別した場合は生活保護受け取れるようにしてほしいけど、受け取れないこともあるし子供を持つ親は死亡保険かけるべきですね。
大人たちが揉めてる時子供が隣の部屋で大人しく絵を描いてるのが気になったけどあまり子供を巻き込むとコンプラ的によくないからなのかな…。
現代日本
後半、キャラものと言っていいくらいエンタメるけど、自分的にはそれで...
確かな
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