「人の弱さをつっつく底意地の悪さがなぜか痛快」悪い夏 ヌノノノノさんの映画レビュー(感想・評価)
人の弱さをつっつく底意地の悪さがなぜか痛快
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アマプラで鑑賞。
日本の、アングラチックで、かつリアルな生活保護不正受給が題材となっています。社会問題的な話ですが、無縁な人にはとことん無縁なテーマなせいか、本作もその解決に向けた話は皆無です。ただ、その渦中にある1組の母娘周りで展開する愛憎劇とも言うべき、強いて言うならダークロマンスです。愛してはいけない人を愛してしまうと言いますかね。
河合優実氏と窪田正孝氏の演技が特に光っていたと思います。この両者は非常に対極的な演技をしています。河合優実氏は儚げな、それでいて怠惰な美しさを湛えた色んな意味で弱いヒロイン。窪田正孝氏は感情的で分かりやすい悪。北村匠海氏が河合優実の見えそうで見えない感情を少しずつ引き出していく様と、窪田正孝氏が弱者を分かりやすく痛ぶる様が、物語の幅を広げて飽きないものにしていると感じました。
終盤の展開は思わず笑ってしまいました。関係者全員集合のドタバタ劇はシリアスなコントのようであり、若干無理やり終わらせました感はあるものの、一応勧善懲悪的なラストに繋がります。ラストの「ただいま」は含みのある締めくくりで上手いですね。河合優実か別の誰かか、はたまた独り言なのか。よくよく考えれば、北村匠海が「自分の家」に帰る描写が劇中全くないのです。元からあそこに住んでいて「親」の線もありますし、もちろん本命の母娘の可能性もある。私はやはり河合優実氏に待っていてほしいですね。
観た後になんとも言えない感覚が残るので、もやっとしたい時におすすめです。
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