劇場公開日 2025年3月20日

  • 予告編を見る

「これは河合優実を観るための作品である」悪い夏 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 これは河合優実を観るための作品である

2025年4月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

染井為人の原作に基づく犯罪サスペンスであり、生活保護の不正受給という社会問題(もしくはセーフティネットたる生活保護の仕組み自体の課題)をテーマにした社会派映画でもある。
クライマックスの暴力シーンも含めて筋運びが実にしっかりしており、男優3名(北村匠海、窪田正孝、竹原ピストル)の熱演もあって見応えがある作品となっている。
でも、でも、私はこれは河合優実の映画であると言い切ってしまう。つまり不幸のオーラを発している彼女のむくれ顔を観るためのいわば三部作(「あんのこと」「ナミビアの砂漠」そして本作)の最終章であると。この作品群のあいだじゅうを通して、彼女は肉体面、経済面、精神面のすべてから搾取される者を表現した。搾取しようとする相手は、男どもであったり、社会であったり、制度であったりするわけだが、一方で彼女は搾取する側に加担する者でもあり続けた。この作品がその構造を見事に表している。シングルマザーの彼女は不正受給に手を染めることによって、真にそれを必要とする人達からリソースを搾取しようとしたのである。そこは木南晴夏の演じる生活保護申請者のエピソードが補助線として引かれておりとても明確である。ちなみに申請窓口にきた古川母子に対して佐々木が浴びせる罵倒は、ネットにおいて生活保護受給者や受給希望者たちに浴びせられる罵詈雑言とほとんど同じ内容であることを付け加える。
話はそれたが河合優実は、搾取される女性の姿を演じつつ「自分が自分でよくわからないから」といったあいまいな姿勢を取ることによって結果として搾取する側に加担してしまう女性の姿を無意識に演じている。
そこが、この極めて現代的な女優の立ち位置ということになるのだろうが、はっきり言って、むくれ顔にも見飽きてきた。そろそろ違った表現も見せてほしいと思う。多分、彼女がまだやっていないのは女性同士の連携といった領域だと思う。孤独を演じるのは得意だけどひょっとしたら連携を演ずるのは不得手なのかもしれないけど。
おまけ。本作では河合のむくれ顔と北村の三白眼と顔芸が見事に呼応して、女も大変だけど男も大変であるなあとしみじみ思わせた。そこが面白かった。

あんちゃん
琥珀糖さんのコメント
2025年4月5日

おはようございます。
河合優美・・・本当にいつまでも見ていられる人ですね。
演技しているのが存在することで、普段はつまらない日常を送っているような気がします。
殆どみてますが、「不適切にもほどがある」のヤンキーな娘役の
吹っ切れぶり。
本人は、続投しないそうですね。
自分の演じたい役があるのかもしれませんね。
新しい面も見たいです、私も。

琥珀糖
またぞうさんのコメント
2025年4月5日

コメントありがとうございます。河合優実の負の側面ではまず「由宇子の天秤」がいい。陽の側面では「愛なのに」「ちょっと思い出しただけ」が好みで、彼女にはまったきっかけはこの三本なのです。

またぞう
またぞうさんのコメント
2025年4月5日

河合優実の女性同士の連携、朝ドラ「あんぱん」での演技に期待ですね!

またぞう
PR U-NEXTで本編を観る