「さよならは別れの言葉じゃなくて〜♪」ヴェノム ザ・ラストダンス おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
さよならは別れの言葉じゃなくて〜♪
ダークヒーロー「ヴェノム」のシリーズ第3作。予告から期待を高め、IMAX先行上映で鑑賞してきました。
ストーリーは、ヴェノムたちシンビオートの創造主でありながら、その反乱により拘束された邪神ヌルが、自身を解放するカギであるコーデックスをもつエディとヴェノムからそれを奪うため、獰猛なクリーチャー・ゼノファージを差し向け、それとは別にシンビオート研究を進める米政府も捕獲のための追手を次々と送り込み、エディとヴェノムは三つ巴の激しい攻防に巻き込まれていくというもの。
今回もなかなかおもしろく、これぞハリウッドの娯楽大作といった感じで、IMAX映えする作品です。細かな設定はともかく、ヴェノムが完全体の時にだけ検知されるコーデックスめがけて襲いかかるゼノファージを、エディたちが撃退するだけというとても単純なストーリーで、誰でも理解できるし、楽しめます。ここに前作までに登場したキャラやシンビオートが絡むので、初見では意味不明な点もあるかもしれませんが、メインストーリーから脱落することはないでしょう。私も前作までの内容をほぼ忘れていましたが、問題なく楽しめました。
本シリーズの特長といえば、ヴェノムの変幻自在の暴れっぷりとエディとのコミカルな掛け合いですが、もちろん本作でもしっかりと描かれています。中でも、予告で何度も観たウマへの寄生シーンがメッチャ楽しかったです。その造形もさることながら、迫力の爆走と翻弄されるエディは必見です。息が合っているような合っていないような凸凹コンビは、ニヤニヤしながらずっと観ていられます。ちなみに本編中に、魚やカエルにも寄生するヴェノムですが、エンドロールではさらにさまざまな動物に寄生する姿が描かれ、これもまた楽しいです。フィギュア化されたら職場の机上にズラリと並べたいです。
クライマックスはエリア51を舞台に、シンビオート軍団VSゼノファージの大迫力のバトルが繰り広げられます。シンビオートならではのスピーディーでトリッキーなアクションは見応えがあります。シンビオート軍団もそれぞれに個性を感じさせるものがあったのもよかったです。それなのに、その個性を十分に生かす見せ場を与えられる間もなくゼノファージの前に倒れていくのは、ちょっともったいなかったです。また、序盤のフリがわかりやすすぎて、ゼノファージ攻略のオチが読めてしまったのも残念です。そして最も残念だったのは、ヴェノムとエディの別れのシーン。決して悪くはないのですが、もっと感動的な涙の別れを期待していたのに、思いのほかあっさりしていて拍子抜けです。きっと「さよなら」は別れの言葉じゃなくて、再び会うまでの遠い約束なんでしょうね。バディ復活をいつまでも待ってます。
こんな感じで見応えはあるものの、内容的には物足りなさを感じる本作。その一方で、エディたちが出会うUFOマニア家族との交流やカジノのあとのダンスなど、ストーリーに直接関わらず、これといった伏線にもなっていない描写は多かったように感じます。ミッドクレジットやポストクレジットでヌルの逆襲やシンビオートの復活を匂わせる前に、本編の脚本をもう少し練ってくれたらと思わなくもないです。
主演はトム・ハーディで、ヴェノムとの絆を感じさせるエディを好演しています。脇を固めるのは、キウェテル・イジョフォー、ジュノー・テンプル、リス・エバンス、ペギー・ルー、アラナ・バック、スティーブン・グレアムら。