「日本発のロボットアニメを、フィリピンの人々による物語へと昇華させた熱意と愛情に涙を禁じ得ない一作」ボルテスV レガシー yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
日本発のロボットアニメを、フィリピンの人々による物語へと昇華させた熱意と愛情に涙を禁じ得ない一作
1977年に日本で放映されたロボットアニメ『ボルテスV』が、フィリピンで絶大な人気を博したというエピソードは、知る人ぞ知る話題となっていました。そしてついに、その『ボルテスV』で育った映画監督が、この物語の実写映画を作り上げる時代となりました。
ある程度現代的にブラッシュアップしているとはいえ、俳優が演じる場面や演技は『フラッシュ・ゴードン』(1980)を連想するような時代感があるし、特撮も随所に予算的技術的な限界を感じさせはします。
しかし、それらはごく些細な問題です。屹立したボルテスVの造形、動きは、フィリピンの若いCGクリエイターのまさに力の結晶。勇ましく、というか生き生きと動きまわす姿に、マーク・A・レイエス監督とスタッフたちの、これが描きたかったんだ!という熱い想いが伝わってきて、落涙を禁じ得ませんでした。
そして見せ場ではアニメ版の堀江美都子による主題歌が流れるという、トランスナショナルな演出とオリジナルへのリスペクト。レイエス監督はオリジナルの要素をできるだけ忠実に再現することを心掛け、新たな要素を入れないよう注意を払った、とインタビューで語っていましたが、それでも本作における家族関係の描写などは紛れもなくフィリピンの人々の物語となっており、原作が40年以上経過してこのような形で昇華するとは、と再び感動でした。
本作はフィリピンで放映のテレビドラマを下敷きにしている上、本作の展開上から見ても、間違いなく続編を視野に入れた作りになっています。次回作が実現するためにも、日本でもできるだけヒットしてほしい、と強く願わずにはいられませんでした。
フィリピン製映画、かつ昔のロボットアニメの実写化、という、なかなか国内でのヒットを予想し難い要素が多い本作に対して、東映はフィリピンでの制作の後押しだけでなく、国内での配給、さらにパンフレットのデザインに大島依提亜を起用、加えて来場特典のペーパークラフトも付けるという気合の入れよう。コレクターズアイテムとしても間違いなく貴重なので、気になる人はぜひ劇場で鑑賞を!