「ボレロ誕生を目撃」ボレロ 永遠の旋律 A.Camelotさんの映画レビュー(感想・評価)
ボレロ誕生を目撃
産みの苦しみを見たし、繊細な性格ゆえの苦悩に同情と共感を覚えた。
新しい17分間のバレエ曲を短期間に作らなければならないが、何も降りてこない。映画の中で記者に答えていたが、曲想が浮かべば短時間で書けるが、そうでなければ長い時間が掛かることもあると。ボレロの場合は後者であり、時間がなさ過ぎの状況。それでも、なんとか絞り出すようにして作曲に取り組み、家政婦さんとの会話とかあらゆる物事を取り込み、1分の旋律を17回繰り返して17分にするアイデアに至り、全体をクレッシェンドさせ・・・と独創的な曲に仕上げることに成功。この状況で不滅の名曲が作れるラヴェルってやっぱり天才。しかし、当の本人は満足していなくて多くの賞賛が受け入れられない。短時間に絞り出して無理矢理工夫を凝らして作ったものでは自分自身が認めることができなかったのだろう。この映画でずーっと描かれているラヴェルの生真面目で繊細な性格を考えればうなずける。しかも、自分のイメージにない官能的なバレエにされたらなおのこと。
いろいろと委嘱されて作曲するばかりとラヴェルが語るところがあったが、天才でも凡人でも、やりたいことをやりたいようにはできないものだなぁ。ラヴェルの晩年は曲想があるのに楽譜に書けなくなって、現代の私たちにとっても不幸で残念なことになったが、何が起こるか分からない人生、このままでいいのかと考えさせられた。人生は本当に難しい。
ラヴェルと言えば、あの写真というのがある。端整な顔立ちの男前。今回の俳優も男前ではあるが、あの写真のイメージとはちょっと違ったなぁ。ラヴェルのミューズとされた人、個人的にはあまり魅力的ではなかったなぁ。ラヴェルの母親に近づけたのだろうか。