「最後はやっぱり……」ボレロ 永遠の旋律 クロイワツクツクさんの映画レビュー(感想・評価)
最後はやっぱり……
『ボレロ』を生で初めて聞いたのは、高校生の時にクラシック鑑賞会みたいなことをやったときだった。
確か、日本フィルハーモニー交響楽団が来ていたんではないかと思うが(場所は市内の劇場)記憶は曖昧。生のボレロはインパクトがすごくて、クラシックなんて聞かないクラスメートも感動していた。
この映画は、その『ボレロ』を作曲した、モーリス・ラヴェルの自伝的な映画(ラヴェル役はラファエル・ペルソナ)。といっても、半分くらいを『ボレロ』の作曲に悩むラヴェルの描写と、その後の反響の大きさに辟易する姿に充てられていて、子供の頃や若い頃が時系列に関係なく時々挿入されるという展開。なので、急に話が前後して、ちょっと展開を追うのが面倒な人もいるかもしれない。
ラヴェルのアメリカ演奏旅行では、『亡き王女のためのパヴァーヌ』なども流れて、有名どころはやっぱりやるんだ、という感じ。
アメリカ演奏旅行中にジャズを聴きに行っていたが、ある雑誌か何かで読んだエピソードに、ガーシュウィンが、オーケストレーション(オーケストラ用に編曲すること)を教わりたいと、ラヴェルを訪ねたところ、「あなたは一流のガーシュウィンです。私に学んで二流のラヴェルにならなくてもいいでしょう」と、断られた、という話があった。
てっきり、そういった、少々皮肉屋な感じの、フランスでいうところのエスプリの効いた人物かと思ったが、映画では、どこか、生真面目なエンジニアみたいな雰囲気だった(劇中、私は”スイスの時計職人”と呼ばれている、というセリフがある。ラヴェルの父はスイス人)。
晩年は、記憶障害などに苦しみ、手術を行うも、術後間もなく亡くなってしまう。いまでいうところのアルツハイマー認知症みたいな病気だったんだろうか。
最後の締めは、やっぱり『ボレロ』できたが、ダンスはいらなかったかな。フルでやるかも、と思ったが途中からだった。この映画では『ボレロ』の作曲に一番貢献したのは、家政婦の女性っだったみたいに見えるくらい、家政婦の登場シーンが多いのだが、パンフレットには、ルブロ婦人:ソフィー・ギルマン、とそれだけ。
あと、どうでもいいことかもしれないが、もしかすると、(唇への)キスシーンのないフランス映画を見たのは初めてかもしれない。