十一人の賊軍のレビュー・感想・評価
全406件中、321~340件目を表示
東映集団抗争時代劇、復活の狼煙
ドルビーシネマで鑑賞。
ノベライズは未読。
かつて東映が仕掛けた路線の復活請負人となりつつある感の白石和彌監督が、「孤狼の血」に続き良い仕事をしている。
東映集団抗争時代劇の要素を継承しつつアップデート。血沸き肉踊るアクション時代劇を、令和の世に見事蘇らせた。
たとえ不条理に踏み潰されようとも、生きるために足掻く十一人の「賊軍」が迸らせる命のエネルギーに、心が震えた。
個性的な登場人物が入り乱れる本作だが、中でも仲野太賀と阿部サダヲの演技に目を奪われた。クライマックスの仲野太賀の理不尽への怒りはこちらにも伝染し、唇を噛み締めた。
阿部サダヲは「死刑にいたる病」の時とはまた違ったベクトルの「イカれた奴」を演じていて、だんだん空洞に見えて来る瞳と、全身から発散される正義と言う名の狂気が怖かった。
東映剣会の本山力の熟練の技が炸裂する殺陣もすごい。長州藩槍術師範を名乗るシーンから始まる2対1の死闘は、手に汗握ると共に殺陣の見事さに溜息が出、興奮の涙が溢れた。
敢えて苦言を呈するならば、何人かのキャラに英雄然とした最期が用意されていたところだろうか。東映集団抗争時代劇の醍醐味として、物語が一貫してドライで、たとえメインのキャラであっても、その死は全く劇的ではなく、なんともあっさり死ぬ。そこがリアリティーを生み出す要素だと思うが、本作では一部を除いて散り際がカッコ良く演出されていた。現代風のアップデートと言われればそれまでなのかもしれないが、もう少しドライに徹してくれていたら良かったのに、と思った。
※修正(2024/11/09)
音が大きい
大軍vs小軍のリアルな戦い
砦を守る10名+αの賊軍(とは言い切れない)と官軍の直接的な戦闘と
幕府軍と新発田藩の心理戦の2軸で描いた作品です。
白石和彌監督作品とあって、血飛沫や首が飛んだり手足が飛んだり指が飛んだりは
割と頻繁だったりして、下手なホラー映画よりもグロいので苦手なかたは注意が必要ですね。
ただ、それがリアルだと感じました。
実際の戊辰戦争のリアルをこの映画で感じ取ることができました。
大河ドラマなど幕末の戦闘を描いた作品はあれど、ここまで痛々しい演出は白石監督ならではだと思いますし、
見どころのひとつでしょう。
それから、
吊り橋に仕掛けをするシーンにおける豪雨と焙烙玉への火付けが困難なリアリティも素晴らしかったですね。
そして何よりも私は仲野太賀の殺陣には息を呑みました。
特にラスト近くの戦闘シーンはすごいのひとこと。
仲野太賀の動きも殺陣では終始キビキビしていてかっこいいんですよね。
ラストは見事としか言いようがないくらい素晴らしかったです。さすが時代劇の東映といったところでしょうか。
山田孝之が演じている役もリアル。
あわよくば逃げてやろうと常に考えていて、即行動に移すところがリアル。
彼の状況ではそうするキャラクターで間違いないし、筋が通っているなと思いましたね。
阿部サダヲを難しい役を見事に演じたと思います。ラストは痛々しかったですね。
というわけで、面白い作品ではありますが、いかんせん上映時間が長いのはキツいなと感じました。
もうちょっと短い方がより集中できるし、スピード感のある展開でよかった気はしますね。
大軍に対して小軍がいかに戦うのか、これが本作の見どころかと思います。
正義こそ悪
大爆発
罪人となった九人の男と一人の女の生き残りをかけた戦い。
全体をおおうストーリーとしては戊辰戦争下の新発田藩をめぐる新政府軍と奥羽越列藩同盟軍の権謀術数を描き、伏線としては罪人となった九人の男と一人の女の運命を描く。
それぞれの罪人は、それぞれの思いで生き残りをかけた戦いに挑み、権力に利用され、ある者は命を散らし、ある者は生き残っていく。
自らの身の安全のみを得ようとしているかに見える人間が、最後には人のために命を捧げ、鮮烈とも言える死をとげる。
そして、十一人の賊軍の謎解きはラストに訪れる。
時代劇が作られなくなるのではないかと言われる昨今ではあるが、生き生きとした人間の描写と、脈々とした人材に裏打ちされた情熱のほとばしりを感じる。
これからも、力強い作品を作り続けていってほしいと強く願う次第である。
仁義なき戊辰戦争・新発田篇
忠臣蔵のように日本の時代劇は集団ものの秀作が多いけど、今回は、ヤクザの集団抗争劇の名作『仁義なき戦い』の脚本家笠原和夫さんの原案で、最近作『碁盤斬り』でダンゼンご贔屓になった白石和彌監督作なんで、期待度マックスです。幕末の戊辰戦争で、佐幕派の同盟軍と官軍の間で揺れている新発田藩が、窮余の一策で死刑囚と数人の藩士で官軍を足止めさせるために国境の砦を守らせると言う設定がまず面白いです。寄せ集め集団の上、侍と囚人達が反目し合う中で、予想外に官軍を撃退してしまうのが痛快です。一方で、藩内も藩主と家老派が一枚岩でなく、そこに同盟軍が進軍してきて居座ってしまうのを何とか追い出さなければならなくなるなど、砦側も藩の上層部も旗色不鮮明の板ばさみ状態と言う一筋縄でいかない展開が上手いところです。難を言えば、上映時間が長めなんでもう少しコンパクトにまとめて、主人公二人のキャラを強めにした方がよかったかも。とは言え、久しぶりに気合いの入った時代劇が観られて嬉しかったです。よくぞ、東映さん作ってくれました。『仁義なき戦い』で終戦により既存の価値観が崩壊しヤクザの生き方が変わったように、幕末で侍達の価値観が崩れていくこと、あくまで反体制と言う笠原和夫さんのスタンスが感じられる作品でした。役者では、仲野太賀がソフトな風貌としっかりした殺陣のうまさが際立ってました。しかし、なんと言ってもすごいのは、阿部サダヲの鬼気迫る怪物ぶりでした。
邦画の王道
仲野太賀と本山力の男気を見る映画
外国人視聴者が多く想定されているとは思うが…。
今年399本目(合計1,490本目/今月(2024年11月度)5本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
※ お手洗いトラブルのため、途中10分ほど視聴が抜けているところがあります。
いわゆる時代劇にここでは分類されているようですが、時代劇といって一般的に思いつく映画であろう「碁盤切り」等とはかなり違ってきます。戊辰戦争・奥羽越列藩同盟といった語が飛び出すように、「時代劇アクション」といった、純粋な時代劇とはまた違ったジャンルになってくるのでは、と思います。
ここで述べられているようなことそれ自体(戊辰戦争等)は中学社会程度では学習はするでしょうが、奥羽越列藩同盟他になると高校以上の扱いでもあるようだし(公立高校の入試問題を見た限り、これを問う出題はされていない=中学社会の教科書外?の模様)、「やや」ハイレベルかなという気がします。
ただ、この作品については、やはりジャンルをどうとるかの争いは色々あるとしてもやはり「時代劇」であり、昨今「時代劇」のジャンルが激減していることを憂いて作られたのが「侍タイム~」であることを考えると、直接のつながりや応援関係はないのでしょうが、この作品が放映された意義は大きかったかなというところです。
内容に関してはそれまで気になった点はありません。ある程度「教科書に載っていない」この「映画で扱うこと」も、確か2021年か2022年かで扱った映画があったような…。そういうことなので、それらまで知識があると有利です。ただ、こういった時代劇は「だいたいの場合に」字幕をつけて海外進出されるのが普通なので(事実、「燃えよ剣」は大阪市のように外国人が多い地域では、「字幕上映版」という扱いでも英語つきのものが放映されていた)、そのときに、やはり日本の歴史の中では、例えば織田信長を頂点とするあの時代とはちょっと異なる(300年ほど)この時代のことは「まぁ歴史好きなら知っているか」程度で、海外進出時には苦労しそうかな、と思いました。
作品そのものへの不満はほぼないし、ジャンル分類をどうとるかは別にせよ「時代劇」であるのは事実なので、時代劇好きな方はぜひとも、といったところです。
今年公開作品の中では、トップクラスの出来映え
脚本の巧みさと、出演者の好演と、タイトル回収の見事さに唸らされる
2時間35分の長尺だが、新政府軍の侵入を食い止めようとする砦での攻防戦と、旧幕府軍に退去してもらおうとする新発田城内での駆け引きがテンポよく描かれて、飽きることがない。
登場人物は多いのだが、敵も味方も、皆キャラが立っていて分かりやすいし、初日の夜間の遭遇戦、2日目の敵による砲撃と煙幕の中での接近戦、3日目の雨の中での橋の爆破、4日目の敵陣への奇襲とそれに続く乱戦と、それぞれに趣向を凝らした戦闘シーンも楽しめる。
幕府軍側との同盟を反故にして新政府軍側に寝返った新発田藩の史実に基づいて、策略と裏切りの物語を紡ぎ出し、石油の産地である新潟の地理的な特徴を、迫力のある爆破シーンに活かした脚本の巧みさも光る。
考えてみれば、新政府軍側には、事情を説明して、新発田藩に入るのを少し遅らせてもらえば良かっただろうし、若君には、「嘘も方便」だと説得して、旧幕府軍側に「出陣する」と言ってもらえば良かったのではないかとも思えるのだが、そんなことが気にならないくらいに、緊迫した展開に引き込まれた。
はじめは、10人の囚人と4人の藩士で砦を守っていて、2日目の戦闘で4人が討死にし、3日目に家老の娘がやって来て、それで「十一人」なのかと思ったのだが、クライマックスで、その真の意味が明らかになった時には、見事なタイトルの回収ぶりに唸らされた。
忠誠を誓っていた藩と家老に立ち向かっていく仲野太賀演じる鷲尾にしても、逃げ出す機会がありながら仲間の元に戻って藩士たちを道連れにする山田孝之演じる政にしても、権力に利用され、踏みにじられ、使い捨てにされた者の怒りと憤りが痛いほど伝わってきて、胸が熱くなる。
特に、初めて目にする仲野太賀の殺陣が素晴らしく、その身のこなしや太刀さばきには目を見張るものがあった。
さらに、特筆すべきは、家老を演じる阿部サダヲで、若君に裏切られて切腹させられそうになる哀れな中間管理職だったかと思えば、生き残った囚人たちの抹殺を命じる非情な部隊指揮官になり、果ては、刀で斬りかかろうとする鷲尾にピストルで応酬するような卑怯者に成り下がって、善人なのか、悪人なのか、応援すべきなのか、憎むべきなのかで、脳内がバグるような感覚になった。
彼が生き残ったことには、釈然としないものを感じないでもないが、結局、最愛の娘を失うという重い罰を受けるし、無用な戦争を回避して領民を守ったという点で、彼のしたことは決して間違いではなかったので、逆に気の毒にも思えてしまった。
こうした、多面的で掴みどころのない人物造形は、まさに、阿部サダヲの真骨頂と言っていいだろう。
最後に生き残ったのが、あの2人だったという結末には納得ができるし、政の死が無駄にはならなかったと思わせるラストには、後味の良さを感じることができた。
ラスト20分!
アクションで真っ向勝負した時代劇が観たい!という願望に応えてくれる一作
ちょっと火薬量を間違っているように思わなくもないけど、ここまで派手な爆発を見せ場で勝負を挑んだ日本映画も珍しく、劇場で観てよかった!と思える作品でした。
掛けた予算が全く異なるエミー賞総なめの『SHOGUN 将軍』と劇場公開のタイミングが重なってどうしても映像的な豪華さを比較されがちだけど、だからこそ(『侍タイムスリッパー』)を含め「時代劇」の見せ方には様々な方向性があることを劇場で体感できるという点で、なかなか稀有なタイミングと感じました。
白石和彌監督はかつて、韓国ノワールが映画界を席巻し、「もはやアクションで日本映画は太刀打ちできないのでは…」という認識が広まりつつあった時期に『孤狼の血』シリーズを作り上げるなど、劣勢に見える部分であえて正面突破を図るところがあり(しかも娯楽作品としての質も極めて高い)、本作の「賊軍」たちと重なり合うものがあります。
設定上籠城戦が主になるのかなぁ、それだとこの上映時間は長く感じるかもなぁ、という予感は、戦闘開始早々城門は破られるわ、味方は満身創痍になるわ、といきなり絶体絶命の状況を持ってくるあたり、ここでも文字通り、度肝を抜かれました(しかも凄惨な戦闘描写に躊躇がない)。観客側にも絶望感が漂う中、どう切り返していくのか……、その展開の妙こそが本作の魅力であって、阿部サダヲの底の見えない演技も含めて、ドラマ部分でも十分見ごたえのある作品となっていました!
仲野太賀がカッコいいという珍しい映画(失礼)。 主人公が誰だかわか...
音とアクションを体感する令和の時代劇
仲野太賀がラスト近くで叫ぶ人数に掛けたセリフが熱い。集団劇ではよく使われるが、このひと声で長かった作品を締め、カタルシスを生む。ただ同じ東映印の集団時代劇では平成の迷作「将軍家光の乱心・激突」が何と言われようが好きである。オープニングの緒方拳、登場のシーンには痺れる。
善悪の境界を揺さぶってくる…
全406件中、321~340件目を表示