「官軍に挑んだ多士済々の11人の激闘群像劇」十一人の賊軍 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
官軍に挑んだ多士済々の11人の激闘群像劇
幕末から明治維新にかけて、新政府軍(官軍)と旧幕府軍が繰り広げた戊辰戦争。この戦争で旧幕府軍側の奥州越列藩同盟に加盟していた新発田藩が生き残るため官軍に寝返る奇策を実行した11人の壮絶な激闘を圧倒的な迫力で描いた群像劇である。
新発田藩・家老・溝口内匠(阿部サダヲ)は、官軍への寝返りを画策していた。折しも同盟軍は新発田城に赴き参戦を要求してきた。官軍も新発田城目前まで迫っていた。両軍の衝突を回避するため、溝口は官軍の進路にある砦に長岡藩を装った死罪が確定した多士済々の罪人達を送り込み赦免を成功報酬にして官軍と戦わせる。罪人達は奮闘するが、大砲を使った圧倒的な戦力の官軍に苦戦を強いられる・・・。
大砲の爆音が強烈。敢えて強烈にしたのは観客への意識付けでありラストへの布石だと推察できる。頭の弱い花火士罪人ノロが黒い水を見つけるシーンも同様である。黒い水が何かは推察できる。罪人達が望遠鏡で見つける官軍布陣背後の山の中腹にある横穴も同様。布石を打つのは大切だが、布石なので観客にもっと考えさせて欲しかった。
序盤で煙幕を張り砦の門を利用して官軍勢を分断して倒す方法は七人の侍を彷彿とさせる。しかし大砲があるなら、門、物見櫓を真っ先に破壊するのが定石ではとの疑問が沸く。
戦力の優劣に関わらず理詰め、緻密さが戦いの必勝条件だろう。
溝口が同盟軍の疑いを払拭するため、罪なき市井の人々を次々と斬首していくシーンが出色である。画面に映るのは彼の血染めの顔と斬首された首のみ。彼の表情に喜怒哀楽はない。彼もまた戦争の被害者であることが画面から伝わって胸を打つ。名演技だった。
罪人達はそれぞれの事情を抱えているが、キーパーソンを絞って深堀すれば、もっと重厚な人間ドラマになっていただろう。罪人達を束ねる11人の賊軍リーダ鷲尾平士郎役の仲野大賀の殺陣が見事。剣捌き、姿勢が決まっている。とても時代劇初出演とは思えない。
観終わって“戦争の理不尽と不条理”という言葉が心に強く刻まれた。
共感ありがとうございます。
戦争を推し進める者、義を感じ自ら参加する者、欲得ずくの者、巻き込まれる者、家族・・色んな関わり方と変化を描いていたと思いますがこうなると、11人って適正だったのかとちょっと考えますね。