劇場公開日 2024年11月1日

「良く出来てるようで出来てない映画」十一人の賊軍 不敗の魔術師さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0良く出来てるようで出来てない映画

2024年11月11日
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鑑賞方法:映画館

同じ東映集団時代劇でタイトルも似ている「十三人の刺客」リメイク版ぐらいのクオリティを期待しちゃいましたけど、大分違ってましたね。

幕軍vs官軍って「壬生義士伝」での鳥羽伏見を代表に“幕末クライマックス”という事で良く映画でも描かれますが、「様々な身分性別の死刑囚による決死隊」というアウトロー軍団的道具立てを組み合わせた事で、せっかく用意した鉄板構図を自分で打ち消しちゃってると思うんですよね。欲張り過ぎが裏目というか、二兎を追う者一兎も得ずというか。

なんで、常に3人の藩士以外の動機がフワッフワで(だって藩自体が大揺れのあんな状況なら夜中に散り散りに逃げちゃう方が絶対合理的じゃん?)終始落ち着かない気分で観る羽目になった。
なんか「賊の意地見せたろうや」みたいなソレっぽいセリフもあったけど、「いやお前ら大概賊軍も何も関係ねえじゃん」と思いましたわ。「敗勢濃厚な滅びゆく賊軍として官軍に見せる最後の意地」ってのがやりたいんなら、藩なり幕府なりへの帰属意識が最低条件な訳で、アウトローでやったら成立しないでしょ。

なんか始終その調子で、「為にする展開」が多すぎるように感じました。以下、その線で気になった部分を列挙。

・橋を落とす時、大雨の中あんなに長い導火線引いて橋の真ん中で焙烙玉使う必要あった?もっと砦側に近い場所でなきゃ無駄なリスク背負う事になるし成功率も下がるでしょ。

・崖の上の炭田?を爆破する必要あった?何度目かの抜け駆けしたばかりの山田孝之が謎に仕切って、例によって意地見せたろうやみたいなテンションで誤魔化してたけど、全然ノレなかった。で、結局生きてるんかい!結局白兵やるんかい!何やったんあの爆破は?ってなった。(敵の数が減ったから意味があったんだという明確な描写があればもう少し..?)

・最後に残ったお侍が家老らに斬り込むシーン、絶対笑顔で何か報告する体で近付いてって脇差をズブリ、とやるべきだったでしょ。本気で家老許せないなら。不必要に自分を不利にするアホな言動をテンションで誤魔化すのはやめちくり〜。

・最後の奥さん、女郎屋の前で小判ぶちまけてたけど、あれ絶対奪われるでしょ。放置して行くなよ。下手するとコロされちゃうよあんなん。

とにかく色んな事が気になってしゃあない割に、今コイツらのモチベーションどこにあんの?がフワフワなもんだから何だかなぁ感が拭えない。

そういえば槍術指南役の人、名乗りだけは近年稀に見るカッコ良さであそこだけ何度も見返したくなるぐらいの本作の白眉だけど、その後の敵の「生きとるんかいっていうかピンピンしとるんかい!」な流れには脱力。じっちゃんの無駄に残酷な死に様は何だったのよw

まあ「十三人の刺客」との差でまとめると、役者陣の差、ルックの格好良さの差、キャラ立ちの差など色々あったけど、何よりもやっぱり圧倒的な「動機の差」に尽きますわな。太平の世に望むべくもなかった侍としての散り際、そしてそれを飾るに相応しい「絶対に倒さなければならない悪」としての鮮烈極まるゴロー殿様w
あゝやはりこうでなくては。

不敗の魔術師