「勝利者などいない」十一人の賊軍 マスゾーさんの映画レビュー(感想・評価)
勝利者などいない
東映の時代劇
時代劇の中でも東映の時代劇は
・エンターテイメント全振り
・歴史考証なんざ知らん現代的ムード
・迫力重視のブレッブレのカメラワーク
・血みどろの斬れ飛ぶ腕や足などの残酷描写
・個人描写より命令に従って死んでいく登場人物
などの思い切った作風が特徴
これは基本的に勧善懲悪の時代劇しか
なかった時代に任侠映画等で勝負してきた
東映が時代劇でも同種のスタイルで
映画作りをしてきたところ
そしてこれは時代劇がどんどん
テレビ放送に移行していき
斜陽にあった時代劇映画を
再興させるための打開策で
あったとも言える
で今作は
「日本侠客伝」「仁義なき戦い」などの
脚本を書き上げた笠原和夫が
戊辰戦争で藩に官軍を食い止める
ためだけに新発田藩の罪人が駆り出される
「十一人の賊軍」のプロットを蘇らせたもの
この脚本は結末の展開に
当時の東映社長・岡田茂が激怒し
第1稿350枚が破り捨てられ
残っていなかったとか
このエピソードを知った
「碁盤斬り」「孤狼の血」等の
白石和彌監督が現代に合うよう
メガホンを取った作品
さてその結末はどうだったか
前述したような東映エッセンスを
ふんだんに組み込みながら
ド派手に散っていく罪人たちと
精錬に藩の為に散っていく者
迫力満点でした
東映の剣会の殺陣はあの
張り詰めた空気感まで伝わってくる
ようでした
人物描写が弱い
感情移入できない
という感想もよく見ますが
そんなもんいらないのです
ただ「使い捨ての罪人たち」
でほぼ全員死ぬからです
確かに最近
人の道を外れた者たちの
彼らにも事情があるんだ!
みたいのをジャンプ漫画でも
色々見ますがそこってあんまり
必要ですかね
バトル漫画で戦いの虚しさ
とかをやたら出してくるの
正直げんなりうんざりしてます
この映画みたいに
新しい時代に生きる新政府と
それまでの社会を作ってきた
徳川幕府が日本人同士戦って
決着を付けなければいけなかった
戊辰戦争
これ以上の虚しい戦いは
ないわけでですから
この映画は新発田藩の家老
溝口内匠から剣士鷲尾兵士郎
まで自分の立場に囚われて
戦っていきます
それでいいのです
作中の描写だけで
だいたいわかるくらい
配役で使い分けされています
山田孝之演じる政なんか
超わかりやすい
別に主人公ではない
新発田藩は憎んでいるし
隙あらば官軍に寝返る
1人でも逃げたら全員無罪放免は
ナシという条件は後に
嘘八百であることが
バレますが
そもそも罪人同士が自ら
協力する義理はない
展開が進むと自然と
結局そうなっていきますが・・
あとほんとね
仲野太賀素晴らしい
お父さんもまだバリバリ
だけど二世俳優ほんとすごいよ
個人的には期待通りの
東映時代劇感満載で満足でした