劇場公開日 2024年11月29日

「日本のヤンキー漫画に通じる面白さ」ザ・バイクライダーズ kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0日本のヤンキー漫画に通じる面白さ

2024年12月4日
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鑑賞方法:映画館

60年代〜70年代に実在したバイクチームを題材にした物語。日本でバイクチームと聞くと暴走族の話を連想してしまい、巷によくあるヤンキー漫画と似た感じになるのかと思っていた。
統率力のあるリーダー、ケンカっ早い若きカリスマ、冷静な参謀、おふざけ担当なんかがいるチーム。法を犯したりもするが、そのカッコよさに憧れる者が増え組織が大きくなっていく。他のチームと衝突しケンカするが仲良くなったりもして。やはり日本のヤンキー漫画と似たような同じ流れだった。違うのは年齢が少し上だということ、少し上だからこそ彼女や妻も一緒に出かけて遊ぶ関係だというところか。
ふと考えると、「莫逆家族」といういくつかのヤンキー家族が出てくる漫画を思い出した。昔ヤンキーだった奴らが築いたファミリー(チーム)を描いた漫画だった。そこには大人になったヤンキーたちが描かれている。本作が「莫逆家族」と共通しているのは、彼らは他に居場所がなくて、だからこそ仲間との絆を第一に考えるところだろう。
身近な仲間だけだったのが、チームが大きくなるとよく知らない人間が所属することになる。組織というものは大きくなると統率が難しくなる。これはどんな組織・団体でも同じ。世界共通と言っていい。本作で若くて狂った奴らが暴走していく様は、予想がつくとは言え見ていてつらくなった。
この映画って何を楽しむ映画なのかという疑問が浮かんでしまう。ヤンキー漫画でも同じだが、この手の物語ってカッコいいと思えるキャラがいるだけで成立してしまう。本作で言えばベニーかジョニー。特にベニーを演じたオースティン・バトラーが異次元のカッコよさだった。ジョニーがベニーのカリスマ性に期待して次のリーダーを任せようとした気持ちもわかる。
本作は、インタビューを受けたキャシーの目線で語られる形で物語が進む。だからベニーの本当の気持ちはわからない。ベニーは本当にリーダーになる気がなかったのか。ベニーが話した言葉と彼の行動でしか判断できない。彼がリーダーになっていたら少しは違っていたのだろうかと想像してしまう。でも、あの流れでは難しいだろうな。
だから最後のベニーの笑顔が何を意味していたのかが気になってしまう。答えはない。後悔のない笑顔にも見えるし、バイクに対する未練があるけど今の生活を彼なりに守ろうとしている笑顔にも見えた。チープな言い方になるが、人には居場所って大事だということを改めて考えてしまう映画だった。とても心に残る映画だったことは確かだ。

kenshuchu