劇場公開日 2024年11月29日

「MX4D!」ザ・バイクライダーズ 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5MX4D!

2024年12月3日
iPhoneアプリから投稿

MX4Dのスクリーンで観た。
入口で、ノーマルの映画と、
アナウンスがあるが、
やはり期待してしまう、
せめて排気音だけでも、、、

期待感は抑えて本作。

作品全体的に、
潜在的な魅力を最大限に引き出すには至らなかった。

静謐な雰囲気を漂わせ、
観客を深く物語世界へと引き込むには至らない。

もちろん、
これがいいという観客も多いだろう。

理由は二点。

一点目。

回想形式による物語の展開は、
感情移入を阻む要因の一つである。

過去の出来事を淡々と振り返ることで、
現在の緊迫感や登場人物たちの内面の葛藤が希薄になり、
観客は物語に十分に没頭できない。

回想は、物語に深みを与える効果的な手法ではあるが、
本作においては、かえって物語のテンポを遅延させ、
観客の興味を薄れさせてしまう結果となっている。

二点目。

物語のシナリオと演出の推進力が不足している点も指摘せざるを得ない。

トム・ハーディ演じる主人公が圧倒的な存在感を放ち、
組織が安定しているため、物語に大きな波乱が起きにくい。

アウトロー映画においては、
組織内の対立や外部からの脅威など、
ドラマティックな要素が物語を牽引するが、

本作ではそのような要素はあるのだが不足している。

例えば、
ライダーズチームのドラマ『サンズ・オブ・アナーキー』では、
リーダーの不在、伝説のリーダーの息子が主人公、
が物語に緊張感をもたらし、
組織の存亡をかけたドラマが描かれる。

さらに、『ゴッドファーザー』のように、
ドン・コルレオーネが命を狙われることでファミリーの絆が試され、
組織が危機に瀕するような状況が描かれることで、
観客は物語に引き込まれる。

回想形式は、物語に深みを与える一方で、
物語のテンポを遅延させるというジレンマを抱えている。

成功例、『グッドフェローズ』では、回想が効果的に用いられ、
物語に奥行きが与えられている。
(個人的にはグッドフェローズの評価は低い)

本作においては、回想が物語の推進力を阻害している。

キャストの演技は素晴らしい。

トム・ハーディをはじめとする俳優陣は、
それぞれのキャラクターを見事に演じている。

しかし、物語そのものが静的で、
観客を興奮させるような要素が少ないため、

キャストの演技が十分に活かされていないように・・・
いや、
活かし過ぎなのかもしれない。

結論として、
『ザ・バイクライダーズ』は、
美しい映像や魅力的なキャラクターにもかかわらず、
物語の構造的な問題により、
観客を十分に満足させることができなかった。

史実に忠実に描くなら他にも方法はあっただろう。

よりダイナミックな展開や、
登場人物たちの内面の葛藤を深く描くことで、
より完成度の高い作品になったのではないだろうか。

蛇足軒妖瀬布