「一つの時代の終わりとバイクライダーという生き方」ザ・バイクライダーズ とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
一つの時代の終わりとバイクライダーという生き方
カラーズ。それはいつでも戻ってこれて安心できる居場所とアイデンティティ。誰にも何も頼らないし頼られたくない自由。社会のルール規則しがらみから逃れたはみ出し者たちの溜まり場から、ただ風のように仲間たちと走りたかった、それだけ…だったはずが。
ピクニック。仲間"家族"から格好良くてアツくてみたいな憧れ性と止められない形骸化。古き良き時代からのどうしようもなく否が応でも迫ってくる時の流れと移り変わりは止められない。
ニューガイズ。気づけば当初の志などは流行らず廃れては全く別物に成り下がっている。ヘルズ・エンジェルス等だろうかヤバい新世代の台頭。いつからか思う、最初目指して・必死に築き守ってきたこんなものじゃなかったはずだろ、と。
目を見開いて早口で捲し立てる語り部であり、『最後の決闘裁判』に続き周囲の男どものせいで苦労の絶えない当時の女性を体現するジョディ・カマー ✕ 切れ味抜群で格好良すぎるオースティン・バトラー ✕ 流石の安定感で文句無しに腕っぷしも頼れるトム・ハーディはじめマイク・ファイスト、マイケル・シャノン、ボイド・ホルブルック、トビー・ウォレス、ノーマン・リーダスなど才能豊かな豪華キャスト共演によるバイクムービー。
好きな監督ジェフ・ニコルズがバイクカルチャーを描いたら?その答えがこれ。音から先に入って、映像が後から切り替わる編集の多さが印象的だった。途中から始まる構成に、野郎どものクラブに染まっていく女性に、終盤の残酷さなどスコセッシ映画っぽさもある。何かすごく新鮮な視点・着眼点が見られるわけではなく至極真っ当な作りで、期待値が高った分正直それを超えてくるということはなかったが、撮影に空気ともに監督らしい情緒たっぷりでドシッと腰を据えたようなアメリカらしい安心感みたいなものも感じられた。
最後は、バイクライダーというものは決してファッションではなく生き方そのものだと感じるようなラストだった。庭でビールを飲むベビーの頭の中ではバイクのような音が流れては。