「静かで、熱い。」ひゃくえむ。 TSさんの映画レビュー(感想・評価)
静かで、熱い。
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100mに取り憑かれた男達の話。
何故走るのか?という問いに対する答えは、人それぞれ。
このシンプルで根源的な問いに対する答えがそれぞれシンプルで、深い。
天賦の才があっても、目標を見失うと、速く走れなくなる。
偉大な親の血を受け継ぎ、英才教育を受けても、世間が作り上げたイメージと自己との葛藤で、速く走れなくなる。
努力を積み重ねても、小学校での怪我の記憶が邪魔して、速く走れなくなる。
そんな挫折と葛藤を乗り越えて、登場人物達は、走る。
「現実を受け入れた上で、逃避する」という海棠の言葉が心に残った。矛盾するような不思議な言葉だが、「現実逃避」するのではなくて、「自分の追い求める理想とのギャップ」を冷静に測りつつ、その「ギャップを埋められると信じる」という意味だろう。
そして、彼らはトラックの上で、「今」、「この10秒」に集中していた。
100m走という1つの陸上競技にフォーカスした物語だが、そこには人生を考えさせられる奥深さがあった。今まで観たことがない、スポーツアニメ。
ロトスコープという手法で作られた映像の場面は、立ち姿でも微妙な身体の揺れがあるなど、人間らしい自然な動きが違和感なく表現されていて、新鮮だった。
キャスティングもよく、俳優と本職の声優ともに映像とマッチしていた。
ラストの2人の笑顔は、走る喜びが身体の底から湧き上がってきたかのように思えた。
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