劇場公開日 2025年9月19日

「100メートル走のお仕事映画」ひゃくえむ。 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 100メートル走のお仕事映画

2025年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

魚豊先生原作の漫画を映画化した作品でした。原作は未読で、事前に得た情報といえば映画館で何度か観た予告編くらいでしたが、松坂桃李と染谷将太という好きな俳優が主演の声を担当すると聞き、鑑賞してきました。

物語は題名の通り、100メートル走に人生を懸けるトガシ(松坂桃李)を中心とした男たちが、自分自身やライバルと向き合いながらひたすら走り続ける青春群像劇でした。主人公トガシの小学生時代から、中学・高校、そして社会人に至るまでの成長譚でもありましたが、徹頭徹尾「100メートル走」がテーマ。様々なタイプの選手たちの心理描写が、漫画的な誇張を交えつつも緻密に描かれており、意外にも強いリアリティを感じました。

高校時代のエピソードでは、入学当初こそ自信を失い陸上部に入部しなかったトガシが、先輩の女子部員に声をかけられる場面があります。そこで一瞬、恋愛要素も描かれるのかと思いましたが、すぐに彼の闘争心に火がつき陸上部へ入部。結局、恋愛要素はほとんどなく、またよくある家族ドラマや滑りがちなギャグも排され、本当に「走ること」だけに焦点を当てた作品でした。その意味で、100メートル走のお仕事映画とも言えるもので、題名に偽りのない潔さがあり、大いに評価したいと思います。

一方で、やや馴染めなかったのが表情の描き方です。衝撃を受けたシーンなどで見せる顔が、どこか楳図かずお先生を思わせるタッチで描かれており、作品全体の雰囲気と少し合わないように感じました。しかし、登場人物の心象を風景へと投影するような演出は非常に効果的で、印象に残りました。

そんな訳で、本作の評価は★4.0とします。

鶏
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