傷のレビュー・感想・評価
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不器用な優しさに涙
舞台で幅広く活躍中の実力派俳優橋本全一さんの初主演映画という事で関西から足を運んで観に行きました。
橋本さん演じる寡黙な主人公仁の要所要所に垣間見える不器用な優しさと家族愛に心が震えました。倉本琉平さん演じる弟の文也とのすれ違いやぶつかり合いに、こんなにも大切に想っているのに、戻れない過去と過酷な現実に心が苦しかったです。
反社会組織メンバーの井口役の佐田正樹さんや北野役の川瀬陽太さんの迫力が凄くて、暗く重苦しいバイオレンスなシーンでは手に冷や汗をかく緊張感が走り、仁が身を置く世界の怖さを感じました。
アクションシーンでは舞台でも殺陣に高い定評がある橋本さんの動きや蹴りが圧巻でした。
183cmという高身長に長い手足、抜群のスタイルと存在感に目を惹かれます。
最後の兄弟の抱擁シーンでは、今まで表にあまり出さなかった仁の感情が一気に溢れ出ていてその表情に胸が締め付けられ涙しました。
心も身体も傷だらけでボロボロで、最後まで何もかも全部1人で背負ってしまう、そんな仁の信念の強さと根底にあるあたたかさがとても魅力的でした。
傷は消えないかもしれないけど癒えていく。
困難な状況に立ち向かう勇気、人は何度でも変われるという希望、仁の生き様に心が奮い立ち胸が熱くなります。
地方の映画館でも是非上映して欲しいと思いました。
何度でも観たい作品。
もう一度見たくなる!
不器用な兄弟愛、そして人生の再生を描いた作品。
大切なものを守るため悪事に手を染め、周囲と一線を引き、陽の感情など封印してしまったかのような主人公:仁(兄)の孤独で無骨な人物像が印象的で序盤から興味を引かれます。
コンプライアンス重視の風潮に慣れつつある身としてはドキッとする台詞まわしや過激とも思える薬物描写、暴力シーンに緊張感を煽られつつも、同時にリスクも恐れぬその挑戦的な覚悟に清々しさをも覚えました。暴力団のボス北野の容赦ない狂気は背筋が凍ります。
36分の短編の中に言葉の応酬ではない目で語り表情から伝わってくる兄弟の悲しみ苦しみ怒り希望が詰まっています。彼らが生きてきたバックボーンと待ち受ける未来がどんなものなのか深掘りしたくて妄想力をフルに働かせたくなるのもこの映画が与える余韻の魅力であり短編ならでは!でないかと思いました。
今までの生き方に終止符を打ち再生を決意して一歩また一歩と歩き出す兄と強い眼差しでその後ろ姿を見つめる弟の一連のラストシーンは必見です!
短編なのに厚い映画
観ながら体に力が入ってしまうような作品でした。
手加減のない暴力描写は生々しく、残酷な人間とはそれが残酷なことだと意識せずに飄々とやれてしまう人間のことを言うんだなと実感させられます。
ただそれが不快でなく強いスパイスになっているところがこの作品の癖になるところだと思います。
主演の橋本さんのアクションが本格的で素晴らしいせいもあり、対になる川瀬さんの残酷さのおかげで、よりリアルな関係性を感じられました。
橋本さん演じる仁は劇中と同じように彼に踏みつけられ、弟との板挟みの間で長年苦しんでいたのかと思うと切ないです。
常に機嫌の悪い彼から自分への嫌悪感がひしひしと伝わってきました。
それを思うと、ラストの弟を庇って警察に歩み寄るシーンは彼が解放される光への道だったのかなと思います。
悪い仲間や楓にイラつきを露わにして、弟には黙して何も話さなかった仁が、弟を助けに乗り込み兄としての顔を見せた時、最後抱擁で別れる時は感極まらずにはいられませんでした。
とても苦しい作品だけど、観終わった後は泣き笑いのように微笑める映画だと思います。
土井プロデューサーと寺本監督、そして橋本全一さんの自作にも期待します!
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