「前作に人生の重みが加わった」ビフォア・サンセット Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
前作に人生の重みが加わった
総合65点 ( ストーリー:65点|キャスト:70点|演出:65点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
前作より9年後の二人の再開を、前作と同じように主演二人だけの会話と行動のみで描く。今回は映画の中の時間と二人が会っていた時間が同時進行という短い出会いを描写した小作品。
ジェシーが約束したとおりに半年後にウィーンに行ったけどセリーヌに会えなかったことの喪失感や、結婚して家族もいるのに妻を愛することが出来なくて心が満たされてないことや、何よりもセリーヌに会えるかもと考えながら自分の想いをこめて本を書いたことが話の中で徐々に明かされていく。彼がこの9年間をどのような想いで過ごしてきたかがわかりせつない。ジェシーの話の後で、セリーヌも思うようにならないウィーンの出会いの後の恋愛を語り、いつの間にか心が躍ることがなくなり感情を失い固くなってしまった自分の恋愛心に気が付き嘆く。
もしかしたら二人は相性が悪かったかもしれないし、たとえあの後で出会っていたからといってもうまくいったとは限らない。しかしもしあの後で会えていたら今頃二人はどうなっていただろうかという仮定はどうしてもしてしまうのだ。
前作は会ったばかりの二人がいかに距離を詰めていくかという過程がもどかしいしそれに対して退屈さもあったし二人の関係が軽いとも感じた。しかし今作は二人のその後の生き方と秘めた思いが語られて、9年の歳月を経た後でそれに重みもあったし二人の感情が滲み出たりして、内容としては前作と似たようなことをしているだけでも今回のほうがずっとのめり込めた。前作を観ていれば容易に想像がつくはずだが、結末はやはりこう来たかというような締め方で心憎い。
しかし街をぶらぶらと歩きながらひたすら途切れることのない機関銃のように喋るだけの二人を近距離から見守るという演出は、面白さもあるが映像から来る躍動感に欠けて単調になりやすく退屈さも感じる。
セリーヌ役のジュリー・デルピーは、劇中で語られたとの同様に本当にニューヨーク大学で学んでいたらしい。フランス人なのに英語がとてもうまくて感心させられる。