宝島のレビュー・感想・評価
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宝島は見つかったのか
沖縄県民の不安と恐怖と屈辱に対する抵抗の歴史
日増しに深刻化する戦後米軍統治下の沖縄で、駐留米兵による犯罪に対し県側は捜査権も裁判権もなく県民の不満と怒りは激しくなり、その屈辱はもはや堪えられないところまできているという状況を丁寧に時間をかけて描いており、原作の面白さ、製作陣・役者陣の情熱、当時を再現した豪華なセットなどからも混沌とした空気感や緊張感、また沖縄の緩い雰囲気みたいなものがしっかりと伝わり興味深く鑑賞することができた。
戦闘機小学校墜落や米軍車両死亡交通事故無罪判決、コザの暴動など史実の裏にフィクションとしてミステリーやバイオレンス要素を上手く絡めたストーリーは秀逸で、コザの英雄オンちゃんの行方探しを軸に、米軍内部調査官との連携による非公認の捜査や犯罪グループとの対立などのエピソードは一気に引き込まれる。
一方、冗長に感じた3時間を超す長尺や(あえて空気感を大事にしたのだろうが)会話の聴き取りづらさなど演出側の問題もあり集中力の維持が難しく、没頭して鑑賞するまでには至らなかった。
そう言った意味でも邦画では破格の25億円という予算を有効に使えるスキルがある監督だったのかは少しだけ疑問に思った。
特に年齢バランスが悪く技量面からもヤマコ役は広瀬すずだったのだろうかと思ったが、予算回収のプレッシャーかは分からないが、作品の忠実度より集客重視の安易な器用に思え残念に感じた。
グスクとアービンの立場を超えた友情の様な関係が他の人たちに広がっていればもっと状況は違ったのかなあとか思ったりした一方で、日本軍も占領国で大概のことをやっていたと言うことを我々は忘れてはいけないと改めて思った。
フィクションと現実の間
3時間超えの大作だが、なかなか良かった。
登場人物はフィクションとはいえ、沖縄の歴史背景としては史実をベースにしており、ほんの50年近く前でこんな時代だったんだと知る部分も多く、なかなか感慨深い。
いろんな撮影協力も含めてよく撮ったな〜というシーンも多かった。
本筋のストーリーも序盤から出てくるあの子が・・っていう展開も◎
実力俳優陣の安定感とアーヴィン役の外人さんがとても素敵だった。
妻夫木さんの役がニイニって呼ばれてて「涙そうそう」チラつく人は多かったのでは・・
何がヒトを人間たらしめているのか? いま劇場で観るべき作品
本当はコザで観れたら最高だったろうが、那覇で観賞。登場人物たちの心情に共鳴して呼吸をする観客たちの中で観られたことは幸せだった。(後で都内でもう一度見直そうと思う。)
占領下の1952年から1972年の本土復帰頃までの沖縄を舞台にした真藤順丈の直木賞受賞作『宝島』を映像化した作品。原作を読んだ瞬間に絶対映画化すべき作品だと思っていのが、ようやく実現した。さらに、映画化する際の Hero’s Island という英語タイトルの付け方のセンスにも感心した。
占領下で米軍基地から物資を奪って民衆に配っていた「戦果アギヤー」のリーダーで、コザの地元では英雄視されていたオンちゃんが嘉手納基地襲撃の夜に突然姿を消す。オンちゃんの恋人のヤマコ、実弟のレイ、そして幼馴染で親友のグスクはそれぞれの道を歩みながら20年に渡ってオンちゃんの背中を追い続けるが……。
とにかくスケールが大きな物語でどうやって3時間強(191分)に収めるのかと思っていたのだが、回想でまとめたりしながらかなり網羅的にまとめ上げた手腕に脱帽。(とは言え、カメジロー関連は丸ごとカットで、コザ派と那覇派の抗争の詳細も省略。)
長尺ではあるがテンポよく話が進み、要所要所でアクションなどが挟み込まれるため、その長さを忘れるほどの没入感を得られる。そのためにも、本作は、配信待ちなどせずに、大きなスクリーで観るべきであろう。
沖縄の戦後史に凝縮されている物語だが、少し引いてみると、現代社会にも当てはめられる普遍性を持った作品であることが分かり、「何がヒトを人間たらしめているのか」というテーマに行き着く。
そのスケール感も、端役に至るまでの俳優陣の演技も、そしてメッセージ性のどれをとっても、いま観ないでどうするという作品だと言えるだろう。
《追記》
何であれが戦果なんだ?的なコメントを幾つか目にしたので追記することにした。
人の命の奪い合いの戦争(あの地ではあの段階でまだ戦争は終わっていないという解釈だろう)の中で、次世代へ命を繋ぐということ以上に大切なことはなかろうし、それ以上の戦果はないだろう。
沖縄だけ?
沖縄の過酷な戦後、犯罪でも〇春でも「アメリカー」に寄生しなければ生きて行けなかった環境は、少しの違いで本土(ヤマト)でも起きても不思議ではなかった。今更ながら昭和天皇陛下の「命を掛けた」マッカーサーとの交渉と朝鮮戦争特需に感謝するしかない。沖縄にはどちらもなかったので「戦後復興」から取り残され、米軍統治も継続されたため命がけで米軍から「奪い取る」か、「寄生する」以外の生きるすべはなかった。
結果、本土に対して反発しながらも復帰を望み、米軍に対しても反発と寄生の入り混じった複雑な感情が煮詰まってクライマックスの「コザ暴動」に至った。
本作では、「米軍」相手にしたたかに生きてきた者たちの、ある者は公務員(刑事/教師)となり、あるものは「ヤクザ」となり、米軍(とその傘を借りた本土人)との決戦に挑む、合法的に、あるいは非合法に。
最後にオンの運命が明らかになるが、彼だけでない「ウチナンチュ」の生きざま(死にざま)が全編を通して示された。みんな前を向いて生きてきた。多分これからも・・・
コザ騒動
戦後沖縄の歴史の一端に触れられた!
ウチナンチュの痛みと怒り
大本営に捨て石にされ、アメリカ軍の欲望の捌け口にされた沖縄人の痛みと怒りが終始、スクリーンから伝わってくる。
米軍基地から物資をかっぱらって、周りに分け与える「戦果アギヤー」の命知らずの若者たち。彼らの生の感情から発せられる言葉は、短絡的なものもあるが、人間の尊厳を取り戻すことへの強い気持ちを感じる。
不良グループを卒業した刑事とヤクザがよくある物語として進んでいくかと思いきや、オンの行方をそれぞれが探しながら運命が絡み合う。
イデオロギーのフィルターがない生の沖縄人の言葉が充満していて、沖縄戦後史を今までにない視点で見たような気がする。
妻夫木聡の歯が白すぎるところに若干のひっかりはあるが、クライマックスは圧巻で、沖縄人の怒りに気圧される米兵に溜飲が下がる。
平和と服従
日本映画では久々?の3時間アップの作品。実話をものとした小説作品なので作品本体にはあまりコメントしませんが、
自分では映画館で3時間の邦画鑑賞は七人の侍とゲキシネくらいで、トイレを気にしての鑑賞だったが流さをかんじさせなかった。
ただただ黙々とストーリーが進み征服された島国民の不平等の葛藤の中を、三人の視点
で話は進み、力での行使が人間の本筋と言う考えとその行使を抑えられるのが人間だと言う考えが交差して話が進みます。
………子供の頃、(沖縄が帰ってきた)との記事が走って喜んでいるような少年の写真とともに一面に出ていたが、今も理不尽さはあるが大人になるまでこんなにもこのような理不尽があったのはしらなかった。
相手国はもちろん本土にたいしても理不尽を考えさせられる作品です。
………で、この作品を鑑賞していて、今の国会議員、閣僚、などの理不尽な態度(習慣というべきか、風潮というべきか、単に偉くなったからなのか)が日本国民に対しての待遇と何となく似ていると思ったのは自分だけでしょうか?
何かが足りない
惜しい
最近、妻夫木さんにかなり注目しているので鑑賞。
やっぱりこの方は演技が素晴らしい!終盤のレイに訴えかけるシーンで沖縄の過去や現状を痛感して泣けた。
ここからは批評。
①大友監督は地元出身の監督で応援したいんだけど、やっぱり作品が合わない。
バイオレンスシーンや暴動を派手にやりたいんでしょうけど、もっと心情やストーリーの繋がりを伝えてほしかった。
②オンちゃんに魅力を一切感じない。
蒸発前のストーリーがあっさりし過ぎていて、なぜ皆んなこんなにオンちゃんに執着するのかが、こちら側には伝わらなかった。俳優のせい?
③広瀬すずちゃん
立て続けに主役やりすぎなのかな?どれもこれも演技が同じに見えてきた。いったん助演に回って色々な役をした方がいいのかも。表情とかがつまらない。
まとめ
原作未読なのですが、せっかくいい題材で主演も素晴らしく、もっといい作品になりそうなのに勿体なかった。
誰もがマヤコをヤマコと呼ぶのはなぜ?
すずが出てるのでかなり前から期待大の作品。
妻夫木聡演じるグスクが主人公だったのね。第二次世界大戦が終わってから、7年くらい経ってる沖縄。まだアメリカに支配されていた時代。日本に帰ってくるのは自分が小学生の頃だったわ。親友のオンを探し続けるグスクと帰ってくるのを待っている元恋人の広瀬すず演じるヤマコ。2人のやり取り楽しかった。もしかして結婚しちゃうんじゃないかと思っちゃった。意外にもヤマコが小学校の先生になった。あら、窪田正孝演じるレイはヤクザになったの?グスクは刑事になってるから、仲間割れしちゃうんじゃないかと思ったが、対立はなかったね。それにしても何度も起きる暴力事件、まるで戦争してるみたいだった。あまり好きじゃない暴力だらけだったけど、みんなの表情やセリフがワクワクできて、楽しかったです。
戦後から返還前までの沖縄の歴史
47都道府県のなかで
沖縄の
95点/☆4.5
本作は、直木賞受賞作・真藤順丈の小説を原作に、終戦から80年という節目の年に公開された歴史大作。
総制作費25億円、延期も含め6年の歳月をかけて描かれるのは、米軍統治下の沖縄。
物語は、米軍基地に忍び込み義賊として貧しい人々を助けていたリーダー・オン(永山瑛太)の失踪から始まる。
民の希望であったオンの行方を追う刑事グスク(妻夫木聡)兄を探しながら自分なりの正義を模索する弟レイ(窪田正孝)そしてオンの語った夢を信じ教師として生きる恋人ヤマコ(広瀬すず)
彼ら三人の運命が交錯しながら、1970年のコザ暴動へと至る過程が描かれる。
決して気軽なエンタメ映画ではない。
だが、この作品は沖縄の歴史と現在を知り、平和や命の意味を考えるための契機となる。挑戦的な構成でありながら、誠実な姿勢と力強いメッセージが観る者の心に深く響く。
返還前の沖縄で懸命に生きた若者たちの魂を、不滅の物語として刻み込む。
率直に言えば『国宝』のような娯楽性や親しみやすさはない。
3時間を超える長尺と歴史書のような重厚さは観客を圧倒し、ときに疲弊させるだろう。
それでも、この作品が持つ意義は計り知れない。
本土に住む人々にとって、沖縄といえば青い海や観光地のイメージが先行する。
だが、その地には唯一の地上戦が行われ、県民の4分の1が命を落とした苛烈な歴史がある。
教科書で触れるだけの事実を、本作は生々しく、しかし敬意を持って描き出す。
沖縄に生まれなければ理解しにくい複雑な感情、日本のようでありながらどこか異なる距離感。そして今も続く基地問題。
私たちはそれをどれほど真剣に考えてきただろうか。
確かに、人物の掘り下げが十分でない場面や、物語の方向性が一瞬曖昧になる箇所もある。歴史の全貌を網羅するのは不可能だったかもしれない。
それでも、本作は伝えるべき核心を明確に示し、その道筋を誠実に描ききっている。
終盤の「一度も平和なんて見たことない!」という叫びは、全編を通じた内なる声の凝縮。
沖縄には今も米軍基地が残り、戦闘機の轟音が響き、米兵による事件は今も後を絶たない。
「何をされても黙るのか、武器を取って耳を傾けさせるんだ」と叫ぶレイ。
「諦めずに対話を続け、信じるしかない」と応えるグスク。
正しい答えは存在しない。ただ一つ確かなのは、誰もが平和を望み、無駄な血が流れないことを願っている。
抑圧され、奪われ、声を封じられた人々の怒りが、やがてコザ暴動となって爆発する。
壊された故郷の景色。たわいもない歌や踊りに溢れていた日常。戻らない哀しみと行き場のない怒りを、沖縄は背負い続けてきた。
本作は、悲しみや苦しみを描きつつも希望を見失わない。
沖縄の美しい海を背景に、目の前の命を守ろうとする英雄の姿がある。
民は、懸命に生き抜くことで未来をつなぐ。どんなに不条理な現実でも、命がなければ何も始まらない。
主人公たちの生き様は沖縄の魂そのもの。
移民政策や外国人との軋轢など、現代日本が抱える課題は、沖縄が長年背負ってきた不条理と重なり合う。
私たちはどうすれば平和に生きられるのか。
簡単な答えはない。
だが希望を捨てず、目の前の命を大切に今を生きることの尊さを、この作品は確かに伝えている。
武器を持つことだけが戦うということではない。
英雄たちの志は、未来へと受け継がれていく。
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