「目の前にあるのに手が届かない宝島」宝島 シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)
目の前にあるのに手が届かない宝島
日本映画で久しぶりに観た社会派ドラマの大作で、3時間の上映時間もあっと言う間でした。映画は、嘉手納の米軍基地から掠奪を繰り返すグループが米軍に追われる緊迫したシーンから始まります。消息不明のリーダーの行方を追い続ける男女三人のドラマを縦軸に、52年の嘉手納基地襲撃から70年のコザ暴動までの激動する沖縄現代史を横軸にした、エンタメと社会派ドラマのバランスが見事な、実に見応えのある大作です。沖縄らしい美しい海や風景のシーンはほとんどなく、猥雑で埃っぽいギラギラした風俗街や貧しい下町や基地の鉄条網のフェンスなど殺伐とした風景ばかりです。また、沖縄の底知れぬ闇を感じさせるような夜のシーンも、マイケル・マンの『ヒート』のようで魅力的です。さらに役者の皆さんの沖縄弁の台詞回しや現地のエキストラのおかげでとてもリアルな作品世界に引き込まれます。もっと主役三人のドロっとした情念があってもいいような気がするけど、その分、積もりに積もった民衆の怒りが、クライマックスのコザ暴動で大爆発するカタルシスは最高です。役者では、妻夫木聡が大熱演で、優しくももの悲しい沖縄弁の台詞回しが最高です。広瀬すずは、『遠い山なみの光』に続いて見事な作品選びで、これだけ違う役柄を演じ切っているのに感心します。窪田正孝は、立ち姿からしてギラついた感じがよかったです。
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ノーキッキングさんのコメント
2025年11月11日
共感ありがとうございました。
上映時間の長さから、国宝と比較されることが多いのですが、興収云々やら、観た?などというミーハー同調圧力と一緒にされたくないですね。映画ファンならずとも観るべきはコチラかと。
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