「とても良いが、とてもモヤる……」宝島 nakadakanさんの映画レビュー(感想・評価)
とても良いが、とてもモヤる……
あらすじが面白そうなので興味を持っていたものの、上映時間が3時間超えというのと低い評価を目にするのとで観ようか迷っていましたが、時間があったので観に行ったものです。
原作は未読です。
米軍統治下の沖縄の状況が描かれ、その理不尽さに対する怒りや悲しみの想いが強く伝わる作品でした。
俳優陣の演技も、妻夫木聡や窪田正孝の怒りを含んだやさぐれ感や、広瀬すずの怒りや悲しみを堪えている凛とした佇まいなど、素晴らしかったと思います。
墜落事件でのヤマコの慟哭や、悲しみを飲み込み強くあろうとする様子。
血まみれのレイとヤマコとの感情がぶつかり合う緊迫感あるやり取り。
暴動の混乱ぶりや、その中を行くグスク。
基地を襲撃するレイと止めようとするグスクとのやり取り。
演技の素晴らしさもあり、印象深い良い場面でした。
襲撃時のレイとグスクとのやり取りなどは、やや目頭が熱くなってしまいました。
理不尽な状況は続いている今現在に、その想いが叩きつけられているのだろうと。
……と、良いところもありましたが、モヤるところも結構ありました。
グスクの語りで状況説明がされるのは良かったですが、その心情説明はいらないだろと思う部分も。
回想シーンも、長いと感じる部分や、入れるタイミングがどうかと感じる部分もありました。
血まみれのレイがヤマコの元へ来た場面など、緊迫感が高まろうかというところで回想シーンになり一旦緊迫感がそがれてしまったような気がするので、別の構成の仕方が良かったのではと。
クライマックスも、レイとグスクとのやり取りまでは良かったのですが、急にヤマコやウタや諜報員が集結してゴタゴタしたご都合主義な展開という印象に。
諜報員とグスクにそれまでどれだけ信頼関係があったのかが分かりづらいので、トモダチという言葉だけで信頼関係があったとして見逃す流れは、うーん……と。
何より、少年ウタの扱いがモヤモヤしました。
思わせぶりな登場の仕方の割に、主要人物との交流度合いの描写があまりなく、ヤマコが気にかけているくらいしか。
襲撃の場面では、何でこの状況で父親のことを聞くのかとか、レイを身を挺して助けるとか、唐突な感じで。
もっとウタの父親に対する想いやレイとの交流の描写があれば良かったと思いますが。
最後も、撃たれたのに病院に連れて行かないのかというところがモヤモヤして、オンの回想シーンも全然入ってきませんでした。
吐血してもう助からないだろうから本人の希望を聞こう、ということだとしても、モヤモヤします。
3人がオンの死を知り衝撃を受け悲しみに暮れるのも分かりますが、その横でウタが死にそうになっているのをほったらかしているのはどうなのかと。
オンの葬式は厳かに行われたようですが、ウタは?、と。
個人的なイメージとしては、こういった社会的なテーマの話では、少年とか若者といったキャラクターはやはり次の世代、未来の象徴なので、死んでしまうのはどうなのかと。
大人が何とか守ろうとするべきだろうと。
死んでしまったとしても、それは大きな悲劇であるという認識が必要なのではと。
オンの死については重要で悲劇的な扱いで描かれましたが、ウタの死については特に描かれずオンの死にかき消されてしまったという印象です。
オンが守った命、未来を失ったというのが最も悲劇的だと思いますが、そこに触れなかったのはかなりモヤモヤしました。
あと、そこに触れなかったためか、オンの存在や予定外の戦果がマクガフィン的とも感じてしまいました。
戦後沖縄の理不尽が強く伝わるところなど、とても良かったと思います。
が、少年の扱いの雑さがとてもモヤりました。
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