「3回は観たい」宝島 かめさんの映画レビュー(感想・評価)
3回は観たい
映画を観る前には評価を見ることが多いです。4以上の評価が付いているものは、たいてい面白いので鑑賞された方のレビューはいつも参考にさせていただいています。この作品は賛否両論で、上演時間も長いので少し躊躇したのですが、アメリカ占領下の沖縄...という設定が珍しくて(沖縄戦を題材にした映画はたくさんあるけど)、観ることにしました。
1度目の鑑賞では、人間関係(特にヤクザ関連)
とか、ストーリー展開に不明な部分がありながら
も、コザ騒動からのグスクとレイが対峙するシーン(ここがクライマックスと思いますが)では、泣き崩れてしまいました。ほろほろと涙が頬を伝う...と
か、そんなレベルじゃないです。慟哭です。人目もはばからず泣く叫びたい衝動にかられました... 。同
じ沖縄人同士で対立しなければならないという哀し
さ...。役者さんの演技も真に迫るものがありました。
このシーンだけで十分な価値がある映画なのですが、いくつか不明な点があったため、原作を読むことにしました。原作が本当に素晴らしくて! まるで歌っているような文体が沖縄という土地柄にマッチしていて、テーマは骨太。直木賞作品の中でも抜きんでた作品じゃないかと思いました。この映画を観なければ、手に取ることもなかった本だと思うので、それだけでもこの映画を創っていただいたことに感謝したいです。
本を読んで色んな疑問が氷解しました。オンちゃんはすごく清らかな英雄で、レイやヤマコとも特別な結びつきがあったんだなぁと、映画では省略されているエピソードを読んで理解しました。
本を読んだ上での2回目の鑑賞は、スムーズにストーリーが頭に入りました。嘉手納アギヤーがオンちゃん独自の計画じゃないことがこんな序盤に明かされてたんだなとか。セリフが方言等の事情で分かりにくいことに起因すると思います。2回観ても、辺土名の殺害シーンは分かりにくいと思いました。
戦争映画のような戦闘シーンがあるわけじゃないので、見やすい映画だと私は思いますが、公安の拷問シーンは長すぎると感じました。
1度目の鑑賞の時も、3時間超えという長さは感じなかったのですが、2回目の鑑賞は、もっとあっという間でした。やはりコザ騒動のシーンにカタルシスがありますねぇ。妻夫木さんの「なんくるならんぞ」にはしびれました。このシーンだけでももう一度は観たいと思うような、圧巻のシーンです。
1回目の鑑賞で号泣した、グスクとレイが対峙するシーンでは、やはり涙がこぼれました。原作を読んだせいか、レイに肩入れして観てしまいました。
この作品は、後説(ウタの出生の秘密とオンちゃんの真相を明かす)なので、クライマックス後のシーンが少し長いので、ここと、暴力シーンを少し省略してでも、オンちゃんとレイ、グスク、ヤマコとのエピソードを厚くしたら、もっと誰もが感情移入できる作品になったのではと感じましたが、こういうところが小説を映像化する時に難しいところなのでしょう。
残念ながらすでに上映スケジュールが1日1回になっているので、3度目を観るなら早いうちに行かないとと思ってます。戦争映画のように悲しくて惨めなだけの映画じゃないから、多くの人に観てほしいなと思います。圧巻のコザ騒動のシーンは映画館のスクリーンで観ないと!!
