劇場公開日 2025年9月19日

「沖縄の人こそ観て欲しい『宝島 HEROE'S ISLAND』☆“沖縄ことば対応字幕付き上映”◎良かった」宝島 むりぶしさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 沖縄の人こそ観て欲しい『宝島 HEROE'S ISLAND』☆“沖縄ことば対応字幕付き上映”◎良かった

2025年11月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

驚く

 全編に沖縄の息づかいを感じる素晴らしい映画です。大友監督率いる制作陣と、最高の演技で魅せてくれた妻夫木さんはじめキャストの皆さんには、ありがとうと言いたいです。

 戦後から復帰前までの米軍統治下にあった沖縄。アメリカーに理不尽な仕打ちを受けながらも、基地経済に頼らなければ生きていけないという現実…。そこで繰り広げられる若者の群像劇に惹き込まれ、濃厚な映画体験でした。(原作未読です)

 ストーリーの主軸となるコザの英雄オンちゃんのオチが弱いとのコメントが散見されるのは何故だろう?オンちゃんのように迷わず利他的に行動出来る人が今居たらSNSで賞賛されるだろうが、なぜこの物語の中ではモノ足りないと言われるのかとても不思議。伏線は最初から随所に散りばめられているので、何度か観て楽しむのも良しです。最初観た時はラストの伏線回収に舌を巻きました。
 5回観ましたがその都度発見があります。俳優の皆さんが役を生きていて感情移入から泣いてしまう時もあります。エキストラの皆さんの表情など観るのも楽しいです。セットや小道具も凝っています。珊瑚の島・沖縄の海を真上から走るように映す冒頭から嘉手納アギヤーのアクションシーンを経て、小舟がたたずむ凪の海にタイトルが浮かび上がってくるのとか最高じゃないですか。動と静、沖縄の海をよく捉えています。

 本土の方が沖縄に想いを馳せとても熱意のこもった映画を、それも商業ベースに乗せなければならないメジャー枠で6年掛けて完成し悲願の全国公開に至ったのに、沖縄県民が観ないでどうする?
 『宝島』は「興行収入見込めそうだし、その企画やってみようか」と軽々しく手を出せる原作で無いのは私でもわかる。そこに制作陣が果敢に挑んだのは何故か?本土の人間として沖縄を捨て石にした事への贖罪の気持ちからかもしれない。または世界で戦争がリアルタイムで起きている事への警笛かもしれない…それなら全国、いや全世界の人が観るべき映画だと思う。

 「戦争で悲惨な目に合うのは、負けた国の女と子供だ。最前線で戦う俺たちじゃないんだ。だから絶対に勝たなければいけないんだ」
 これは映画『木の上の軍隊』での山下少尉の言葉で、とても重くて悲しいセリフですが本作を観て思い出しました。

 「宝島」は沖縄では公開時こそ大入りでしたが、今は空席も多いし上映回数も減ってきています。まだ観ていない県民は必ず映画館で観て欲しい。特に沖縄市民はあの圧巻のコザ暴動のシーンを見なければいけない、そして考えなければいけないと思う。コザ暴動は中の町バス停附近からゴヤ十字路、第二ゲート、現在の中央パークアベニュー、そしてコザ十字路にまで及んだのです。
 日常的に見慣れた場所で1970年に自然発生的に起きたコザ暴動を、壮大に、生々しく映像化し、エンタメとして見事に昇華してくれました。自分自身もあのさなかに居合わせたような気になって、スクリーンで何度でも見たくなります。

 方言(ウチナーグチ)は本島内でも市町村によって全く雰囲気が変わります。コザが舞台の本作では、ちゃんとコザの人の話し方・イントネーションに寄せていて、妻夫木さんは立派なコザのにぃにぃです!チバナ役の瀧内公美さんの間の取り方とか抑揚の付け方がその辺にいるオバサンそのものでびっくりしました。あと、語尾の「〜やさ」は実際に使います。
 【沖縄ことば対応字幕付き上映】も最近始まったようなので、言葉をしっかり聞き取りたいという方はそちらも合わせてご覧下さい。私もまた観に行きます。

※追記※沖縄ことば対応字幕付き上映の感想

観てきたので書いておきます。
まず、全てのセリフに付かない、最小限の字幕が新鮮だった。それで良かったと思う。

10月にライカムで上映していた(たぶん2回だけ)“字幕付き”とは違うものだった。
今回の沖縄ことば字幕付き上映は、例えばヤッチー=兄ちゃん、たっぴらかすよー=叩くよー、というふうに置き換えられていた。
しかし前回のはヤッチー等の単語は訳さずそのままの表記で、全てのセリフに字幕が付いていたと思う。
その違いから、監督が方言(沖縄ことば)に拘って最後まで字幕を付けたくなかった気持ちがよく伝わってきた。
方言はウチナーンチュのアイデンティティだから。そのアイデンティティも奪われていたからだ。(劇中で教壇に立つヤマコの後ろ、黒板の隅にぶら下げられている方言札)

今回、ガマでグスクが頭をかかえて発狂したシーンで発見があった。集団自決のトラウマとは思っていたが、日本軍?のような声が字幕で現れ衝撃だった(怖くて書けない…いろんな意味で)。男性の声だけなので誰なのかはわからないが、私は聞き取れてなかった。※集団自決については考えるだけで具合が悪くなるが、きちんと調べ、学ばなければならない。
10月のライカムで見た字幕付きには、その声に字幕は付いていたかな?グスクのお母さんの字幕は覚えている。反対に今回の(沖縄ことば字幕付き)にはグスクのお母さんの声に字幕は無かった。
10月のライカム字幕付きの時に、持ち込みお菓子(グミかチョコ)の袋を開けて食べ始めた人がいて、カサカサ響く音が気になりその男性の字幕を見逃したかもしれない。

話がそれましたが、今回沖縄ことば字幕付き上映も観て良かったです。大友監督の並々ならぬ覚悟をさらに感じました。

最後に、映画「宝島」を観て熟考され作品を評価し、沖縄に気持ちを寄せている方が全国にも多くいらっしゃる事を映画.comのレビューで知り嬉しくなりました。ありがとうございます。

コメントする
むりぶし
PR U-NEXTなら
映画チケットがいつでも1,500円!

詳細は遷移先をご確認ください。