劇場公開日 2025年9月19日

「説得力が欲しい『宝島』」宝島 どーもさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 説得力が欲しい『宝島』

2025年9月26日
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鑑賞方法:映画館

そもそも原作が荒唐無稽で面白くない。よくこんなのに直木賞を与えたなとあきれましたよ。直木賞の権威で映画化に踏み切ったならとんだ誤算でしたね。それはともかく、小説では許されても、映像化作品ではリアリティの無さは致命的。流石にシナリオではかなり荒唐無稽さは薄れてはいるけど。とにかく、説明すべきところがきちんと説明されていないから、原作を読んでいない観客は置いてきぼりにされる。モノローグまで使っているのに、わからないことだらけ。悪石島のシーンなんてどこまで伝わっているのか。オンがヤクザの密貿易の基地となっている悪石島で働かされているときに襲撃されるけど、誰になんで襲撃されているかわかった観客はいないはず。もう、ヤクザの抗争など半端なシーンは思いきって捨て、必要なシーンを書き足すくらいしないと、説得力を持てない。一番足りていないのはオンは何故、英雄なのか、だ。実は小説でも描ききれていない。 原作でも映画でもちらっと、米軍から盗んだ資材で学校を作った話が出てくるが、例えばそういうところを膨らませて『米百俵』的なシーンをつくるべきだった。目の前の食料も大事だが、子供の教育、それが沖縄の未来を作る、それがいつか沖縄を宝の島にするんだ、くらいをオンに言わせて オンの人物造形をしないと、探しまわる三人の行動も共感できない。そこを上手く描けば、赤ん坊の命を守るために自らを犠牲にしたオンの行動にも少しは説得力がでるかも。少しは、ね。しかも最後の方で妻夫木と窪田に性善説と性悪説の言い合いみたいなことを延々とセリフでやりとりさせる始末。映像で描いて下さいよ。そうそう、米軍の被害者になる娼婦も、ひき殺された人も、飛行機が落ちて死んだ小学生もディテールが描かれること無く、被害者という記号でしかない。そんなこんなだから、映画は沖縄の悲劇の上っ面だけ描いていて、物語が不出来で残念な結果になってしまった。心に響くものが欲しい。役者は皆さん、熱演。残念です。

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どーも
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