「極上の人間ドラマに震える」宝島 アベちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
極上の人間ドラマに震える
戦後80年。世界は相変わらず過去の戦争の歴史を反省する事より抑止力の名目で軍備拡張にしのぎを削っている。そして、実際に本物の戦争を起こし自国の領土拡大と経済発展を進めている恐ろしい国家も存在する。
戦争を放棄している日本は確かに平和なのかも知れないが、1952年から20年間の沖縄を描いた映画「宝島」と今でも沖縄が負わされたものを考えると、日本の戦後の総括はやはり本当には終えてはいないと思ってしまう。
戦時中の沖縄戦はドキュメンタリーでもかなり見てるが、日本の軍事戦略の最大の犠牲者であるのは疑いがない。そして戦後、アメリカになった沖縄のその歴史上の物語を正面から映画にした作品はなかったのではないかと思う。それだけでもこの映画は邦画の歴史に名を残す価値がある。
日本に返還になる前の沖縄は見たことはないが、映画はその時代を克明に映し出すようロケ地、美術セット、大道具小道具、衣装メイク等など細かく気を配り作られているのがとにかく素晴らしい。小学校への墜落事故のリアリティ、大量のエキストラの皆さんと作り上げたデモ行進。そして住民の怒りが頂点に達したコザ暴動は映画の象徴的なシーンとして観客の脳裏に焼き付けてくれる。
1952年の米軍基地襲撃でコザの英雄ことオンちゃんは姿を消す。それから6年、オンちゃんを探す情報を得る為にグスクは刑事になりレイは刑務所に入りヤクザになる。ヤマコはオンちゃんとの約束を果たす為に教師になる。妻夫木聡、窪田正孝、広瀬すずはそれぞれ当時を生き抜いた沖縄人を見事に演じた。妻夫木聡は爆発しそうな感情を抑えアメリカ軍に協力しながら自分なりの正義を貫く。窪田正孝は兄であるオンちゃんの影を追いながら違法なやり方でアメリカ軍と対峙する。広瀬すずはウタを守りながら基地反対運動の最前線にたつ。それぞれの20年を恐ろしいほどの速さで駆け抜けていく。
ラスト、基地内でのグスクとレイがぶつかり合い米軍との一触即発の緊張感から遂に明らかになるオンちゃんの消息とその物語。オンちゃんが得た「宝物」は毒ガスでも財宝でもなく「小さな命」だった。永山瑛太が演じたオンちゃん。彼しかこの役は演じられないだろう。
大友啓史監督はNHK入局時の教え「声なき声を届ける」を実現させたかったとのことである。
充分にそれは観客に伝わったと思う。
アベちゃんさま
『国宝』で、背景を綿密に網羅した渾身のレビュー、とコメントしましたが、『宝島』のレビューも同様です🙂
舞台挨拶試写と劇場公開初日の2回観ましたが、1回目は熱量に圧倒される、2回目は放熱した後の心が伝わってくる、そんな作品でした。
レビューでの低評価が散見される長尺も熱量も沖縄の方言も、ウチナンチュとヤマトンチュ=沖縄と私達の間にある、いつまでも超えられない“フェンス”なのかな、と考えてしまいました。
日本本土にとっての沖縄の「空白の時代」と、その空白に確かに存在した沖縄の人達の心を、映画化した姿勢は大いに評価したいと思っています🫡
>大友啓史監督はNHK入局時の教え「声なき声を届ける」を実現させたかったとのことである。
充分にそれは観客に伝わったと思う。
ドキュメンタリー出身の大友啓史監督のジャーナリズム精神、伝わった思います🧐
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