劇場公開日 2025年9月19日

「『怒り』における泉(広瀬すず)の咆哮に繋がっている」宝島 グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 『怒り』における泉(広瀬すず)の咆哮に繋がっている

2025年9月21日
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鑑賞方法:映画館

世の中には知っておかなければいけないはずなのに、何も知らないままのことが山ほどあるが、沖縄における戦争や戦後史もそのひとつ。

昭和20年(1945年)6月6日付け電文で、沖縄方面特別根拠地隊(陸戦隊)司令官大田実少将は海軍次官あて電文で「県民は青壮年の全部を防衛召集に捧げ、残る老幼婦女子のみが相次ぐ砲爆撃に家屋と財産の全部を焼却せられ、一木一草焦土と化せん」と記し、沖縄戦においていかに県民が忍耐我慢の極限において軍に協力し、困難をものともせず沖縄防衛のために働いたかをきちんと報告し、最後に「沖縄県民斯く戦へり。県民に対し後世特別の御高配を賜らんことを」と結んでいます。大田少将は、自身も圧倒的な戦力比の絶望的な状況にありながら(この1週間後、自決)、沖縄の非戦闘員に対する美しい心遣いを示していたのです。
しかしながら、実際の日本軍(本土の人間)は沖縄を本土の盾とし、沖縄県民は軍の盾にされていたのです。『沖縄大観』によると、県民の1/4にあたる約15万人が死亡したことになっています。正確な数字については不明のようですが、(勝算などない)本土決戦の準備のためのあまりにも大きな犠牲だったのです。
(以上、半藤一利「戦争というもの」(PHP文庫)」から部分的に引用して構成)

この映画では戦後間もない頃から1972年の沖縄の本土返還までがグスク、レイ、ヤマコを中心としたクロニクルとして語られ、返還されれば「基地はなくなり、沖縄人(ウチナンチュ)の人権も回復するかも」という期待も描かれるが、大きな基地はなくならないし、辺野古移設問題も(沖縄県における基地の固定化)現在進行形。
自分はあまりにも不勉強で政治的見解を持てるほどの知見はないけれど、米兵による諸々の事件も含めて、戦果アギヤーとなる心情を少しでも理解したいと思います。

グレシャムの法則
ゆきさんのコメント
2025年9月23日

日本(軍)はあれだけ沖縄に酷い事をしておいて、今もなお全て沖縄に押し付けている現実にはやり場のない気持ちになります。
美しい沖縄の裏にある歴史や今の状況もしっかりと学ばないといけないと思いました。。

ゆき
ノーキッキングさんのコメント
2025年9月21日

共感ありがとうございました。
集団自決に軍令は無かった!
大江の沖縄ノートに噛みついた曾野綾子。膨大な現地証言と徹底検証により、生き残った人々は戦後の補償金につられて軍令だと口裏を合わせたという結論を得るも、教科書も改訂されず、ノーベル賞作家の名誉も守られている。という事実を最近知りました。

ノーキッキング
ひなさんのコメント
2025年9月21日

グレシャムの法則さま
共感ありがとうございます🙂

舞台挨拶試写と劇場公開初日の2回観ましたが、1回目は熱量に圧倒される、2回目は放熱した後の心が伝わってくる、そんな作品でした。

レビューでの低評価が散見される長尺も熱量も沖縄の方言も、ウチナンチュとヤマトンチュ=沖縄と私達の間にある、いつまでも超えられない“フェンス”なのかな、と考えてしまいました。

日本本土にとっての沖縄の「空白の時代」と、その空白に確かに存在した沖縄の人達の心を、映画化した姿勢は大いに評価したいと思っています🫡

ひな