「上映時間の割には、描き込み不足と感じられるところが多い」宝島 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
上映時間の割には、描き込み不足と感じられるところが多い
終戦後の沖縄を舞台にして、殺人事件が起きたり、米兵を襲撃するグループが出てきたり、日米の諜報員が暗躍したり、米軍機が学校に墜落したりといった出来事が描かれるものの、表層的で断片的なエピソードが続くばかりで、失踪した「英雄」の行方を捜すというミステリーが一向に進展しないことには戸惑いを覚える。
どうやら、米軍基地への侵入時に、「予想外の宝」を手に入れたことが失踪の原因らしいと分かるのだが、その後も、主人公達が、「英雄」が島内に潜伏しているという情報を聞いて喜んだり、「英雄」が身に付けていたネックレスを発見して、彼は死んだのだと絶望したりと、一体どうなっているのかと混乱されられる。
米国の統治下における沖縄の社会情勢といったことも、本作の大きなテーマになっていて、刑事の台詞等から、米兵による犯罪がMPによって揉み消されている状況が理解できるのだが、その一方で、ラストのコザでの暴動へと繋がっていく沖縄の人々の怒りや憤りが、今一つ実感できなかったのは残念だった。
例えば、米兵の飲酒運転による被害者や、米軍機の墜落に巻き込まれた犠牲者が、「名前の無い誰か」ではなく、主要な登場人物であったならば、沖縄の人々が味わった苦難や屈辱とか、彼らが溜め込んでいた不満や鬱憤といったものが、もっと自分のことのように感じられたのではないかと思えてならない。
最後に明らかになる「予想外の宝」の正体や、「英雄」の失踪にまつわる真相にしても、軍事機密とか、政治的な陰謀とかとは無関係で、何だか拍子抜けしてしまった。
米国による統治や、米軍基地の存在に異を唱えるのであれば、むしろ、「毒ガスの存在を隠蔽するために、「英雄」は抹殺されたのだ」といった話にした方が、良かったのではないかとさえ思ってしまう。
百歩譲って、「予想外の宝」が米兵の隠し子だったとしても、皆が「英雄」を探していることを知りながら、どうして、彼が「英雄」のことを隠し続けていたのかという大きな疑問が残るし、「英雄」が、命を懸けて守り抜いたにも関わらず、その子が死んでしまうという救いのないエンディングにも納得することができなかった。
その他にも、人々にガスマスクを配ったのは誰だったのかとか、誘拐された米軍の化学者はどうなったのかとか、密輸の現場を取り締まるのに、わざわざ爆撃までする必要はあったのかとか、色々と釈然としないところも多かった。
ただし、「10年、20年後には、きっと今より良い状況になっている」という主人公の台詞は、「実際は、そうなっていない」という逆説的なメッセージとして強く胸に突き刺さったし、「今から10年後、20年後は、どうなっているのだろう?」と、沖縄が抱える問題とその将来に思いを馳せざるを得なかった。
なるほど。
自分を助けてくれた人が、グスク達が探している人と、同一人物だと知らなかった可能性はありますね。
ただ、それにしても、どうしてあの白骨死体のことを隠し続けていたのかについては、もっと説明があってもよかったのではないかと思います。
ウタは育ての親がオンだと知らなかった、ってのはないですかね。
犠牲者が主要な登場人物であれば、というのは同感です。
なんだかそのへんの痛切さに迫るものがなくて、俯瞰的に感じました。


