「原作は満点だけど、緻密な大作の映画化は至難の業。」宝島 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
原作は満点だけど、緻密な大作の映画化は至難の業。
真藤順丈さんによる原作は、文庫では上下巻700頁。
上巻が第1部・第2部、下巻が第3部。
第1部は、1952:サンフランシスコ平和条約が発効し、沖縄が日本から切り離された年~54年、
第2部は、1958~63年、
第3部は、1965~72年:沖縄返還の年。
沖縄がなめてきた苛酷な歴史を
力強くかつ詳細に描いた渾身の力作
――原作は。
映画はというと、
大作を1本に収めようとすると(「国宝」もそうだったが)
原作を改変しないといけない。
だが、緻密にできてる作品は、
うまく削って接がないと不自然になる。
* * *
原作の第1部を読み終え、第2部に入ったあたりで映画を観た。
映画では、第1部の内容は30分足らずの駆け足。
その後2時間40分、
どうも不自然なところが目立ち。
ああ、これは「国宝」と同じパターンだわ。
と予感したんだけど案の定、
観終わってから原作の残りを読んだら、
原作から削ったところ、順序を変えたところ、
ピースが上手くはまらず不自然きわまりない。
グスクが受けた拷問は、
高等弁務官キャラウェイを映画ではまるごと削除しちゃったから、
なんのことだか分からなくなっちゃってるし、
米民政府官僚アーヴィンとの交流(毎週のように一緒に飲み食いしてた)もほとんど描かれないので、
「トモダチ」とか言われても説得力全然ないし。
他方、いろいろカットしておきながら、
ワンカットが無駄に長くて冗長な箇所が数多あり。
もったいない。
* * *
ほかにもいろいろ、
原作はすごいけど、
映画は、残念ながら、
すごくなかった。
レビュー、全くその通りだと思います。
原作でも、ウタの出生がどうしてそこまで機密情報になるのかは曖昧になっていても、ストーリー展開で説得力を保っているのに対し、今作では、色々端折った分、そこにグッとフォーカスされてしまったために、拍子抜けのような印象を与えるものになっていて、残念でした。
島田庵さま
共感ありがとうございます🙂
先に原作を読むと、脳内イメージと映像の違和感を超えられないので、原作は後から読む派です。
映像と小説は別の作品と考えるようにしても、「国宝」と「宝島」の原作を読むと、これをよく映画化しようと考えたなあ、と思います。
大友啓史監督はNHK時代に「ハゲタカ」で、原作の改変ではなく原案にした自らのオリジナル脚本で、逆に原作が最も伝えたいことを観客に伝えることに成功して、このドラマは海外でも高い評価を受けています。
製作費25億円をかけた、スポンサーありきの大作では、監督のそんなチャレンジは許されないとは思いますが🤔
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