「ある種の不器用さ」宝島 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
ある種の不器用さ
【ある種の不器用さ】
米軍、米国への怒り、
本土、やまとんちゅへの憤り、
個人の内面と社会的怒りの両軸から炙り出す。
その怒りは主人公たちの個人的な体験に根差しており、
観客の感情に訴えかける強度を持っている。
映像的なテンポや娯楽的な見やすさをあえて犠牲にし、
積もり積もった屈辱と悔しさを、
観客に〈溜め〉として感じさせることに重きを置いている。
そこに描かれる怒りは決して即時的な爆発ではなく、
抑圧されたまま内側で燃え続ける炎のようだ。
そのため、デモや米兵との衝突といった、
怒りの矛先が明確な場面では、
感情が一気に流れ出すような解放感があり、
涙を誘うほどの切実さがある。
一方、
怒りの対象が抽象化されているシークエンスは、
やや語りすぎる傾向を見せ始める。
具体的な敵が目の前には不在となったシーンでは、
セリフがやや過剰になり、
怒りのリアリティが薄れてしまう瞬間もあった。
言葉が感情を上回ってしまい、
拳を振り上げる相手が見えなくなると、
怒りは空砲のように響き、
共感が宙に浮いてしまったように感じる観客も少なくないだろう。
しかし、
それでもなお、
沖縄という土地に根ざした〈語られざる歴史〉と
〈消されかけた怒り〉を可視化しようとする強い意志を持った作品であり、
その姿勢には大きな価値がある。
怒りを真正面から描くことは、
エンターテインメント映画としては難しい選択だが、
ある種の〈不器用さ〉さえも作品の誠実さとして昇華させている。
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